2015.05.26
強盗致傷、詐欺、恐喝、監禁、強盗未遂、窃盗、恐喝未遂、強姦幇助、強盗、犯人隠避教唆被告事件(川崎容疑者逃走事件)
LEX/DB25506208/横浜地方裁判所 平成27年3月20日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第66号等
被告人が、共犯者と共謀の上で行った強盗致傷、詐欺、恐喝、監禁及び強盗未遂、恐喝未遂各1件並びに窃盗3件、共犯者と共謀の上行った監禁及び強盗、強姦幇助、犯人隠避教唆により起訴された各事案において、強盗致傷ないし恐喝未遂は、いずれもいわゆるオヤジ狩りに及ぼうとして起こした事件であり、態様は相当に悪質であること、各被害者が感じた精神的苦痛は無視できず、特に傷害を負った被害者は厳しい処罰感情を抱いていること、監禁及び強盗、強姦幇助の被害者の精神的苦痛が非常に大きいこと、犯行は悪らつであることなどを考慮し、被告人に、懲役11年を言い渡した事例。
2015.05.26
区分事件(監禁、強姦幇助、強盗、犯人隠避教唆被告事件)
(川崎容疑者逃走事件(部分判決))
LEX/DB25506207/横浜地方裁判所 平成27年 1月30日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第527号等-1
被告人は、共犯者と共謀の上、通行中の被害者を自動車の後部座席に無理やり乗せて走行したとの監禁、車内において共犯者が被害者を強姦し、これを知りながら同社の運転を継続したとの強姦幇助、被害者を脅迫して所持していた現金約2万4000円在中の財布1個(時価7000円相当)と、被害者にATMから引き出させた現金15万円を強取したとの強盗、検察庁川崎支部から逃走し、友人に自動車で運搬させるなどしたとの犯人隠避教唆の各公訴事実により起訴された各区分事件の事案において、被告人に対し、各公訴事実につきいずれも有罪とする部分判決を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2015.05.12
(山口組の元最高幹部けん銃所持 差し戻し確定へ)
LEX/DB25506118/最高裁判所第三小法廷 平成27年3月3日 決定 (第二次上告審)/平成25年(あ)第1377号
指定暴力団の元最高幹部の被告人Yが、組員2人と共謀しけん銃と実弾を所持していたとして起訴された銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件において、高等裁判所が、無罪を言い渡した第一審判決を破棄し、差し戻したため、被告人が上告した事案において、上告趣意のうち、憲法39条違反をいう点は、検察官の上訴は同一の犯罪について重ねて刑事上の責任を問うものではなく、また、憲法37条1項違反をいう点は、記録に照らし、本件の審理が著しく遅延したとは認められないから、いずれも前提を欠き、その余は、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとし、上告を棄却した事例。
2015.05.12
(北海道苫小牧市女性死亡 傷害致死罪が成立)
LEX/DB25506125/最高裁判所第二小法廷 平成27年1月21日 決定 (上告審)/平成25年(あ)第1190号
被告人が、被害者から自らの殺害行為を嘱託されたが、被告人は同嘱託を傷害の嘱託と理解して、被害者の頸部をバスローブの帯で締め付けた上、浴槽の水中に被害者の顔面を鎮める暴行を加えて、被害者を死亡させたとされた傷害致死被告事件の上告審において、被告人に適用される罰条を刑法202条後段のみであるとして懲役1年2月、執行猶予3年を言い渡した原々審の判決に対して、検察官及び被告人の双方が控訴して、被告人には傷害致死罪が成立するとして懲役2年執行猶予4年を言い渡した原審判決を妥当として、弁護人らの上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由には当たらないとして、上告を棄却した事例。
2015.05.07
有印私文書偽造・同行使、詐欺、業務上横領被告事件(元米子市職員 業務上横領 第一審破棄)
LEX/DB25506083/広島高等裁判所松江支部 平成27年3月6日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第30号
被告人は、米子市役所の職員として高齢者である被害者の財産を管理していた際、預かっていた現金のうち30万円余を着服したとの業務上横領、被害者の死亡後、同人名義の銀行口座に入金された年金について、銀行窓口の職員を欺罔して15万円余を詐取したとの有印私文書偽造・同行使、詐欺被告事件において、原判決は懲役2年の実刑を言い渡し、これに対し、被告人が控訴をした事案において、事実誤認の主張は排斥したが、原判決の言渡し後に被害弁償を行ったこと、被害者相続人が被告人に対して寛大な処分を望んでいること、保釈中に正社員として就職したこと等を考慮し、被告人に対し、懲役2年6月、執行猶予5年を言い渡した事例。
2015.05.07
業務上過失傷害(変更後の訴因は業務上過失致死傷)被告事件
(古本屋 本棚倒壊 経営者有罪(控訴審))
LEX/DB25506075/札幌高等裁判所 平成27年3月5日 判決 (控訴審)/ 平成26年(う)第202号
訴外会社の取締役として、同社が経営する古書店の業務全般を統括するとともに、同店内にいる客の安全のため、同店内に設置された書棚の転倒や倒壊を確実に防止する措置を講じるべき業務に従事していた被告人が、各陳列棚の転倒による書棚の倒壊を確実に防止すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、営業を続けた過失により、書棚に加わった軽度の外圧等によって、全ての陳列棚を転倒させて書棚を倒壊させ、客である甲(当時14歳)及び乙(当時10歳)に対し、その身体を書棚と書棚との間に挟ませて傷害を負わせ、乙を死亡するに至らせたとの業務上過失致死傷被告事件により、原審において有罪判決を受け、被告人が事実誤認を理由に控訴をした事案において、控訴を棄却した事例。
2015.04.28
公務執行妨害、傷害、大麻取締法違反、あへん法違反、覚せい剤取締法違反被告事件
(大阪府警 違法捜査 無罪)
LEX/DB25506069/大阪地方裁判所 平成27年3月5日 判決 (第一審)/ 平成26年(わ)第2715号等
被告人は、警察官から職務質問及び所持品検査を受けた際、同警察官に対し、右手で顔面をひっかき、その左上腕及び左母指付近にかみつくなどし、その職務の執行を妨害するとともに、加療約1週間を要する傷害を負わせ、大麻、覚せい剤、あへんを所持したとの事案において、被告人の行為は正当防衛であり、プライバシー侵害の程度の高い違法な所持品検査をした上、強度の有形力行使をしたもので、令状主義の精神を没却するような重大な違法があるから、このような違法行為に密接に関連する証拠を許容することは、将来の違法捜査抑制の見地から相当でないとして、証拠請求された品の証拠能力を否定し、被告人に無罪を言い渡した事例。
2015.04.21
受託収賄、事前収賄、公職にある者等のあっせん行為による利得等の処罰に関する法律違反被告事件(岐阜県美濃加茂市長 無罪)
LEX/DB25505958/名古屋地方裁判所 平成27年3月5日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第1494号
被告人が、αから、浄水プラントを市立の学校に設置する契約が締結できるように有利かつ便宜な取り計らいをしてほしい旨の請託を受け、これを承諾し、αから、報酬並びに今後も同様の取り計らいをすることの報酬として供与されるものであることを知りながら、現金の供与を受け、もって自己の職務に関し、請託を受けて賄賂を収受するなどしたとして起訴された事案において、当該各現金授受の事実を認めることはできないとして、無罪を言い渡した事例。
2015.04.21
逮捕監禁、爆発物取締罰則違反、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反被告事件
(オウム事件 控訴棄却)
LEX/DB25505965/東京高等裁判所 平成27年3月4日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第797号
教団の信者であった被告人が、教団信者の所在を聞き出すため、その兄である被害者Aを拉致することを企て、共犯者と共謀の上、Aを自動車の後部座席に押し込んで同車を発車させ、教団施設内において、同人に全身麻酔薬を投与して意識喪失状態を継続させるなどして同人を脱出不可能な状態において逮捕監禁し、また、教団が宗教弾圧や攻撃を受けているかのように装おうなどと考え、当時教団を擁護する立場であると考えていた人物が居住していたマンションの玄関に手製爆弾を設置し、爆発させるなどした事案の控訴審において、被告人を懲役9年に処した原判決の量刑が重すぎて不当であるとはいえないなどとして、本件控訴を棄却した事例。
2015.04.21
殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(散弾銃で父殺害)
LEX/DB25505952/横浜地方裁判所 平成27年3月4日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第333号等
幼少期から長年にわたり、実父の暴力さらされ、恐怖心により逆らうこともできす、人生の芽を摘まれたと何度も感じてきた生育歴のある被告人が、実父(当時55歳)に対し、殺意をもって、至近距離から散弾銃で散弾1発を発射して実父の腹部に命中させ、同人を失血により死亡させて殺害するなどした事案において、特筆すべきは、被告人が、確実に殺害を遂げることができるように、ブレーカーを落として暗くした室内で待ち伏せをした上、猟銃を使用して、実父を至近距離から射殺したという態様であり、危険性の高さが際立っており、しかも、被告人は、実父の殺害を考え始めてから、殺害後に遺体を速やかに火葬して犯行を隠ぺいするための棺桶を用意するなど、時間をかけて周到な準備をしており、いわゆる完全犯罪をも目論んだ、非常に計画性の高い、巧妙な犯行であるとし、懲役15年を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2015.04.21
殺人、非現住建造物等放火被告事件(埼玉 両親殺害・放火 無罪)
LEX/DB25505963/さいたま地方裁判所 平成27年3月3日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第832号
被告人が、被害者2名を殺害した上、同人らが居住していた建物に放火して全焼させたとして、殺人及び非現住建造物等放火の罪で起訴された事案において、認定できた事実を総合しても、被告人が殺人及び放火の犯人でないとしたならば説明が困難であるとはいえないというべきであり、被告人が各事件の犯人であると認定するにはなお合理的な疑いが残るとして、被告人に無罪を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2015.04.21
収賄被告事件(京都大学元教授 収賄罪 二審も有罪)
LEX/DB25505966/東京高等裁判所 平成27年2月26日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第527号
京都大学大学院教授である被告人が、研究機器等の納入業者の代表取締役であるA(原審相被告人)から、その職務に関し、賄賂の趣旨で、クレジットカードの利用の利益及びその使用分を含む合計943万円余相当の財産的利益の供与を受けたという事案の控訴審において、原判決後の被告人の反省状況等を考慮すると、被告人を懲役2年に処した原判決の量刑は、現時点においては、刑期の点で重すぎる結果になったというべきであるとして、原判決中被告人に関する部分を破棄し、被告人を懲役1年8月に処した事例。
2015.04.14
偽計業務妨害、航空機の強取等の処罰に関する法律違反、威力業務妨害、脅迫、不正指令電磁的記録供用被告事件(パソコン遠隔操作事件)
LEX/DB25505940/東京地方裁判所 平成27年2月4日 判決 (第一審)/平成25年(合わ)第48号等
被告人が、自ら作成した他人のパソコンを遠隔操作するためのコンピュータプログラムを用いるなどして、見ず知らずの第三者のパソコンに指令を送り、その第三者が知らない間にそのパソコンを遠隔操作するなどして、犯罪予告文を送信させるという方法により、約2か月半の間に合計9件にわたり行った偽計業務妨害、航空機の強取等の処罰に関する法律違反、威力業務妨害、脅迫、不正指令電磁的記録供用罪の事案において、一連の犯行の全体の犯情、個々の事件の犯情に照らせば、経緯・動機、態様、経過等の点において悪質であり、そのような事件を9件も繰り返した被告人については、相応に重い刑を科すのが相当であるとして、被告人を懲役8年に処した事例。
2015.04.07
傷害、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件(アイドルグループ握手会 切りつけ事件)
LEX/DB25505909/盛岡地方裁判所 平成27年2月10日 判決 (第一審)/平成26年(わ)第94号
女性人気アイドルグループのメンバーがCDを購入したファンと握手をするイベントにおいて、被告人がイベント参加者に紛れてメンバーに近づき、隠し持っていた凶器(折り畳み式のこぎり)で、突然同グループのメンバー二人に続けざまに切りつけて傷害を負わせ、それを見て止めに入った男性スタッフにも傷害を負わせたという事案において、被告人の責任は重大であり、複数被害者に対する凶器を用いた無差別的な傷害事案という類型の中でも、非常に重いものと位置づけられるとして、被告人を懲役6年に処した事例。
2015.03.31
住居侵入、殺人、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
(東京 三鷹ストーカー 女子高生殺害 (控訴審))
LEX/DB25505813/東京高等裁判所 平成27年2月6日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第1440号
東京都三鷹市で、女子高校生(当時18歳)を刃物で刺して殺害したとして、元交際相手の被告人が、殺人や銃砲刀剣類所持等取締法違反などの罪に問われた事案(リベンジポルノに関するストーカー殺人事件)の控訴審において、本件投稿行為(被告人が被害者の裸体の画像データをインターネット上に公開したこと)に関して、起訴された各罪の審理に必要な範囲を超えた主張・立証がされている上、原判決の説示内容を検討すると、本件各罪の犯情及び一般情状として考慮できる範囲を超え、実質的にはこれ(名誉棄損罪)をも併せて処罰するかのような考慮をして被告人に対する刑を量定した疑いがあり、原審の訴訟手続には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令違反があるとして、原判決を破棄し、事件を原審に差し戻した事例。
2015.03.31
不正競争防止法違反被告事件(ODA贈賄 コンサル前社長ら有罪)
LEX/DB25505904/東京地方裁判所 平成27年2月4日 判決 (第一審)/平成26年(特わ)第970号等
被告会社(内外鉄道の設計・施工の監督等に関する事項等を目的とする会社)が、ベトナム、インドネシア及びウズベキスタンの各国において、鉄道関連事業に関するコンサルタント契約の締結、履行等について、当該事務の管理するなどの権限を有していた外国公務員らに対し、被告会社に有利かつ便宜な取り計らいを受けたいとの趣旨の下、ベトナムにおいては約4年2か月間で合計6990万円を、インドネシアにおいては約3年3か月間で合計約2000万円相当を、ウズベキスタンにおいては約1年間で合計約5477万円相当の賄賂をそれぞれ供与した事案において、被告会社には、当該各犯行における責任は重く、特に国税調査後にも賄賂の供与を継続したことは、強く非難されるべきであるなどとして罰金9000万円を、被告人B(被告会社の代表取締役)には、国税局の税務調査を契機として海外における賄賂供与の実態を知った後も、賄賂供与を継続する旨の最終決定をし、推し進めたものでその責任は軽いものではないが、最終的に自首を決め、その後の捜査に全面的に協力していることなどから、懲役2年(執行猶予3年)を、被告人Cには、被告会社の海外事業の枢要な地位にあった者をして、相手方から賄賂要求を了承し、当該各犯行を全体にわたって指揮したものでその果たした役割は大きいなどとして、懲役3年(執行猶予4年)を、被告人Dには、被告会社の経理責任者の地位にあり、国際部が約束した外国公務員等への賄賂供与につき協力を求められるや、金銭を拠出したもので、その役割は小さいものではないなどとして、懲役2年6月(執行猶予3年)を言い渡した事例。
2015.03.17
営利誘拐幇助,逮捕監禁幇助,強盗殺人幇助,殺人被告事件
LEX/DB25447124/最高裁判所第三小法廷 平成27年 3月10日 判決 (上告審)/平成25年(あ)第755号
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律71条以下が定める区分審理制度は、区分事件審判及び併合事件審判の全体として公平な裁判所による法と証拠に基づく適正な裁判が行われることが制度的に十分保障されているとして、憲法37条1項に違反しないとし、上告を棄却した事例(補足意見がある)。
2015.03.03
風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律違反被告事件(クラブ「NOON(ヌーン)」事件)
★「新・判例解説Watch」H27.5月上旬頃 解説記事の掲載を予定しています★
LEX/DB25505605/大阪高等裁判所 平成27年 1月21日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第705号
被告人は、設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせるクラブを経営するものであるが、共犯者と共謀の上、大阪府公安委員会から風俗営業の許可を受けないで、不特定の来店客にダンスをさせ、かつ、酒類等を提供して飲食させ、もって許可を受けないで風俗営業を営んだとして、風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風営法)違反として起訴された第一審判決で、風営法2条1項3号に定める「ナイトクラブその他設備を設けて客にダンスをさせ、かつ、客に飲食をさせる営業」の意義について、形式的にその文言に該当するだけでなく、「その具体的な営業態様から、歓楽的、享楽的な雰囲気を過度に醸成し、わいせつな行為の発生を招くなどの性風俗秩序の乱れにつながるおそれが、単に抽象的なものにととまらず、現実的に起こり得るものとして実質的に認められる営業を指す」との限定的な解釈を行った上で、被告人の本件営業はこれに該当しないとして、無罪を言い渡したため、検察官が控訴した事案において、原判決は、3号営業に対する規制目的を性風俗秩序の維持と少年の健全育成に限定し、他の規制目的を考慮していないと解される点で相当でなく、また、3号営業の解釈自体においても、3号営業に対する事前許可性と両立し難い不適当な基準を定めた点で、法令の解釈適用を誤ったものではあるが、ダンスをさせる営業をその態様を問わず一律に規制対象とすることは合理性を欠くと解釈したことは相当であり、本件公訴事実について3号営業を営んだことに当たらないため犯罪の証明がないとして無罪を言い渡した原判決の結論は正当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2015.03.03
業務上過失致死被告事件(インプラント手術 患者死亡)
LEX/DB25505527/東京高等裁判所 平成26年12月26日 判決 (控訴審)/平成25年(う)第688号
歯科医師である被告人が、歯科インプラント手術を実施した際、下顎の舌側口腔底にはオトガイ下動脈等の血管が走行しており、その損傷の危険性を認識した上、これらの血管を損傷しないように、ドリルを挿入する角度と深度を適切に調整してインプラントの埋入窩を形成しなければならない業務上の義務があったのにこれを守らなかったために、出血により口腔底等に発生した血腫によって気道閉塞を生じさせて患者(当時70歳)を窒息させ、窒息に起因する低酸素脳症と多臓器不全により死亡させたとされた業務上過失致死被告事件の控訴審において、被告人が、オトガイ下動脈をドリルで挫滅させるなどし、出血により口腔底等に発生した血腫により気道閉塞を生じさせて患者を死亡させたこと、被告人にはインプラント手術における業務上の過失があり、その過失と患者の死亡との間には因果関係があることを認め、被告人を有罪とした原判決は相当であるとして、本件控訴を棄却した事例。
2015.02.24
準強姦被告事件 (無罪)
LEX/DB25505426/福岡高等裁判所宮崎支部 平成26年12月11日 判決 (控訴審)/平成26年(う)第20号
被告人が、自ら主催するゴルフ教室の生徒である被害者(当時18歳)を、ゴルフ指導の一環との口実でホテルの一室に連れ込み、恩師として信頼していた被告人の言動に強い衝撃を受けて極度に畏怖・困惑し、思考が混乱して抗拒不能の状態に陥っている被害者を、その旨を認識しながら姦淫したとする準強姦被告事件において、原審は、被害者が被告人との性交を拒否しなかった原因としては、信頼していた被告人から突然性交を持ちかけられたことによる精神的混乱により抗拒不能に陥っていた可能性がある一方で、そのような精神的混乱はあったものの、その程度は抗拒不能に陥るほどではなく、自分から主体的な行動を起こさなかった可能性も排斥できず、被害者が抗拒不能状態であったことの合理的な疑いを超える証明はできていないとして無罪を言い渡したため、検察官の職務を行う指定弁護士が控訴した事案において、被告人を無罪とした原判決は結論において正当であるとし、控訴を棄却した事例。