注目の判例

刑法

2014.05.07
詐欺被告事件
LEX/DB25446349/最高裁判所第二小法廷 平成26年4月7日 決定 (上告審)/平成24年(あ)第1595号
総合口座の開設並びにこれに伴う総合口座通帳及びキャッシュカードの交付を申し込む者が暴力団員を含む反社会的勢力であるかどうかは、本件郵便局員らにおいてその交付の判断の基礎となる重要な事項であるというべきであるから、暴力団員である者が、自己が暴力団員でないことを表明、確約して上記申込みを行う行為は、詐欺罪にいう人を欺く行為に当たり、これにより総合口座通帳及びキャッシュカードの交付を受けた行為が刑法246条1項の詐欺罪を構成することは明らかであるとし、被告人の本件行為が詐欺罪に当たるとした第一審判決を是認した原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例。
2014.05.07
京都府迷惑行為防止条例(平成13年京都府条例第17号)違反被告事件
LEX/DB25503273/京都地方裁判所 平成26年3月18日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第489号
「被告人は、常習として、みだりに、路上を歩行中の被害者(当時13歳)に対し、後方から自転車に乗って接近し、追越しざまに、その臀部付近を着衣の上から右手で触り、もって公共の場所において、他人を著しくしゅう恥させ、かつ、他人に不安及び嫌悪を覚えさせるような方法で卑わいな行為をした」という公訴事実について、被告人が犯人であることにつき合理的な疑いが残るとして、被告人に無罪の言渡しをした事例。
2014.05.07
殺人未遂被告事件
LEX/DB25503177/長崎地方裁判所 平成26年2月12日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第102号
被告人が、実弟から暴行を受けるなどしたため、防衛の程度を超え、弟の右胸部付近を筋引包丁で1回突き刺して傷害を負わせ、弟が強く首を絞めてきたため、自己の生命を防衛するとともに怒りも相まって、弟が死亡する危険性が高い行為と認識しながら、あえて、弟の腹部を筋引包丁で突き刺したものの、傷害を負わせたにとどまり、死亡させるに至らなかった事案において、被告人の生命の危険が高まっていたとはいえ、弟の攻撃は素手によるものであり、本件包丁を所持する被告人が弟の侵害を排除するには、なお、より危険性の低い、有効な反撃が容易に可能であったといえるから、一撃で弟の生命を奪いかねない本件行為は、自己の生命を守るために妥当で許される範囲を超えているとし、懲役3年、執行猶予5年、その猶予の期間中被告人を保護観察に付するとした事例(裁判員裁判)。
2014.04.30
死体遺棄、逮捕監禁致死被告事件
LEX/DB25503142/福岡高等裁判所宮崎支部 平成26年3月4日 判決 (控訴審)/平成24年(う)第24号
原判決のうち、共犯者供述の信用性を認めて、被告人が逮捕監禁に関与したと認め、被告人に逮捕監禁致死罪の共犯が成立するとした点については、論理則、経験則等に照らし不合理な点はなく、事実誤認はないとする一方、共犯者供述の信用性を認めて、被告人が死体遺棄に関与したと認め、被告人に死体遺棄罪の共犯が成立するとした点については、被告人以外の第三者が共犯者であった可能性を否定することができず、被告人が共犯であるとするには合理的な疑いが残り、被告人は無罪であるから、事実誤認があるとして、原判決を破棄し、被告人を懲役3年6月に処した事例。
2014.04.30
道路交通法違反(変更後の訴因危険運転致死)被告事件
LEX/DB25503144/福岡高等裁判所宮崎支部 平成26年2月27日 判決 (控訴審)/平成24年(う)第99号
被告人が、アルコールの影響により自動車の正常な運転が困難な状態で、自車を走行させ、対向車に自車を衝突させて被害者を死亡させたという危険運転致死の事案の控訴審において、被告人は、本件当時、精神的、身体的能力がアルコールによって影響を受け、道路の状況や交通の状況に応じ、障害を発見する注意能力、これを危険と認識し、回避方法を判断する能力が低下し、危険に的確に対処できない状態にあったものと認められ、アルコールの影響により正常な運転が困難な状態にあったといえるとし、原判決には判決に影響を及ぼすことが明らかな事実誤認も法令適用の誤りもないとして、被告人の控訴を棄却した事例。
2014.04.30
傷害、傷害致死被告事件
LEX/DB25503193/さいたま地方裁判所 平成26年2月25日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第1432号等
被告人が、小学校時代から付き合いがあった被害者(当時33歳)に対し、金を要求し、深夜、買い物を指示して振り回し、罰ゲームを強いるなどして、被害者を金銭的にも精神的にも追い込み、支配服従関係を強めていくなか、暴行を加えて傷害を負わせ、死亡させたとして、傷害罪及び傷害致死罪で起訴された事案において、傷害致死罪については被告人を有罪とした上で、被告人を懲役13年に処し、2件の傷害事件については被告人を犯人と認めるには合理的疑いが残るとして、無罪とした事例(裁判員裁判)。
2014.04.30
自動車運転過失致死傷被告事件
LEX/DB25503139/名古屋高等裁判所 平成26年2月20日 判決 (控訴審)/平成25年(う)第346号
被告人が、総重量約2万3390キログラムのコンテナを積載するトレーラを牽引した大型貨物自動車を運転する際の注意義務に違反して、ロックピンでコンテナがトレーラに緊締されていない状態のまま、上り勾配となっていた右カーブと左カーブの逆S字カーブを経てうかいした架設橋を通行し、今度は下り勾配となっていた左カーブと右カーブが連続したS字カーブの道路に差し掛かり、その右カーブの道路を漫然時速約48キロメートルで進行した結果、折から隣の車線を走行中の普通乗用自動車上にコンテナを横転させて同車を押し潰し、乗車していた3名のうち2名を死亡させ、1名に加療約533日間を要する傷害を負わせたという事案の控訴審において、原判決の事実認定に論理則、経験則等に照らして不合理な点は見当たらないので、事実誤認の論旨は理由がないとし、また、原判決の量刑は、刑の執行を猶予しなかった点及び刑期の点のいずれにおいても、被告人の刑事責任に照らし、これが重過ぎて不当であるとはいえないとして、被告人の控訴を棄却した事例。
2014.04.30
傷害致死被告事件
LEX/DB25503146/札幌地方裁判所 平成26年2月18日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第1003号
被告人は、左上下肢麻痺のためいわゆる寝たきりの状態であった妻に対し、献身的な介護を行っていたものであるが、準備した食事を同人が嫌がったことやおむつ交換に同人が協力しなかったことに立腹し、当時の被告人方において、鉄製のサイドレールが取り付けられた介護用ベッドで仰向けに寝ていた上記妻(当時72歳)に対し、同人の左肩付近を両手でつかみ、その顔面及び頭部を同ベッドのサイドレールに数回打ち付けるなどの暴行を加え、同人に硬膜下出血及び硬膜下血腫の傷害を負わせ、よって、同人を同傷害による脳機能障害により死亡させたとして、被告人を懲役3年(執行猶予4年)に処した事例(裁判員裁判)。
2014.04.30
建造物侵入、現住建造物等放火、殺人未遂、公務執行妨害被告事件
LEX/DB25503140/神戸地方裁判所 平成26年2月7日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第627号等
固定資産税等を滞納したことにより、市から被告人名義の預金債権の差押えを受けたことに不満を持ち、大量のガソリンを使用し不特定多数の市民らも出入りする市役所の業務時間内に放火に及んだ被告人の行為は、多数の職員や一般来庁者の生命や身体に重大な危害を加える危険性が高く、建造物侵入及び3名の職員に対する殺人未遂とも評価されるものであって、その犯行態様は極めて衝撃的で悪質であるとし、高く大きく燃え広がった炎や大量の黒煙等により、市役所の建物や備品などに合計2億5700万円余りの甚大な財産的被害が発生したほか、課の一時移転や書類の焼失など、市役所や市民に有形無形の損害が生じており、本件は同種の放火事案の中でも特に重い部類に属するというべきであるが、他方、本件で重篤な傷害を負った被害者がいなかったことを考慮すると、公務執行妨害罪の刑をあわせても、現住建造物等放火罪の有期懲役刑の上限である20年をやや下回る程度の刑をもって臨むのが相当であるとして、被告人を懲役18年に処した事例(裁判員裁判)。
2014.04.22
犯人蔵匿、犯人隠避、有印私文書偽造、同行使、詐欺被告事件
LEX/DB25503119/大阪地方裁判所 平成26年3月4日 判決 (第一審)/平成23年(わ)第5806号等
被告人が、Aが居住する予定の物件の賃借権及びB社から前記賃借権に基づき発生する家賃等債務の保証を受ける地位を不正に取得しようと企て、共犯者らと共謀の上、共犯者Aの名義で前記物件の入居及び家賃等の保証委託を申し込むにあたり、虚偽の勤務先及び年収額を記載した申込書、共犯者Bが代表取締役を務める会社から共犯者Aに内容虚偽の源泉徴収票を前記物件の業務管理者で入居審査決定権を有する者に提出するなどして、前記物件に関する賃貸借契約及び家賃等債務の保証委託を申込み、真実と異なる勤務先及び年収額があるものと誤信させ、賃貸借保証委託契約及び賃貸借契約を締結させて、共犯者Aが家賃等債務の保証を受ける地位及び前記物件の賃借権を不正に取得した行為により財産上不法の利益を得た事案において、詐欺の成立は認め、懲役1年6月、執行猶予3年を言い渡し、その余の犯人蔵匿、犯人隠避、有印私文書偽造、同行使及び一部の詐欺を無罪とした事例。
2014.04.22
非現住建造物等放火、詐欺未遂、強盗殺人被告事件
LEX/DB25503130/宇都宮地方裁判所 平成26年3月3日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第652号等
被告人が、共犯者と共謀の上、非現住建造物等放火、詐欺未遂、強盗殺人を犯したとして起訴された事案において、量刑上最も重視すべき強盗殺人については、極めて危険で残忍な態様であり、犯行において不可欠で重要な役割を果たし、経緯や動機は身勝手で悪質であって、結果は重大であることなどを考慮し、また、その余の各犯行についても、計画的で悪質な犯行であり、被告人は積極的、主体的に関与していることなどを考慮して、被告人を無期懲役に処した事例(裁判員裁判)。
2014.04.22
 
LEX/DB25503016/最高裁判所第二小法廷 平成26年1月27日 決定 (上告審)/平成25年(あ)第1649号
被告人が、被害者の浮気や心変わりを疑い、その携帯電話を見て真偽を確かめようと考え、旅行先で、被害者に睡眠薬を飲ませて眠らせ、携帯電話を確認し、その内容から、被害者が自分を裏切る行為をしているなどと考えて激高し、殺害に及んだという事案の上告審において、弁護人の上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、被告人の上告を棄却した事例。
2014.04.15
詐欺被告事件
LEX/DB25446340/最高裁判所第二小法廷 平成26年3月28日 決定 (上告審)/平成25年(あ)第725号
暴力団員である被告人が、本件ゴルフ倶楽部の会員であるAと共謀の上、長野県内のゴルフ倶楽部において、同倶楽部はそのゴルフ場利用約款等により暴力団員の入場及び施設利用を禁止しているにもかかわらず、真実は被告人が暴力団員であるのにそれを秘し、Aにおいて、被告人の署名簿への代署を依頼するなどして、被告人によるゴルフ場の施設利用を申し込み、同倶楽部従業員をして、被告人が暴力団員ではないと誤信させ、被告人と同倶楽部との間でゴルフ場利用契約を成立させた上、被告人において同倶楽部の施設を利用し、人を欺いて財産上不法の利益を得たという事案において、同伴者が暴力団関係者であるのにこれを申告せずに施設利用を申し込む行為は、その同伴者が暴力団関係者でないことを従業員に誤信させようとするものであり、詐欺罪にいう人を欺く行為にほかならず、これによって施設利用契約を成立させ、Aと意を通じた被告人において施設利用をした行為が刑法246条2項の詐欺罪を構成することは明らかであるとし、被告人に詐欺罪の共謀共同正犯が成立するとした原判断は正当であるとして、本件上告を棄却した事例(意見あり)。
2014.04.15
強盗殺人、営利・生命身体加害略取、逮捕・監禁、死体損壊・遺棄、窃盗、住居侵入、窃盗未遂被告事件
LEX/DB25503175/大阪地方裁判所堺支部 平成26年3月10日 判決 (第一審)/平成23年(わ)第1321号等
被告人が、被害者Aを車内に押し込んで拉致、監禁し、車ごと山中に連れ去って金品を強取得した上殺害し、その遺体を隠匿した後焼却し、その間Aのキャッシュカードを使って預金を引き出すなどした事案につき、いずれの事件についても、被告人が、それ相応の準備をした上で、被害者の言動や周囲の状況等に応じ臨機に対応しながらも、大筋として自己の考えていたとおりの段取りで犯行を進めたと見られるのであって、本件がおよそ成り行き任せの偶然が重なった犯行であるとは到底いえないことは明らかであり、本件は相当に強固な犯意のもので遂行された計画的な犯行であって、その点においても極めて悪質といわざるを得ないとし、死刑を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2014.04.15
強盗殺人、営利誘拐、逮捕監禁被告事件
LEX/DB25503181/仙台高等裁判所 平成26年2月27日 判決 (第二次控訴審)/平成25年(う)第31号
被告人が、A及びBと共謀の上、事前の計画のとおり、けん銃の取引を装って被害者をおびき出して誘拐し、同人を逮捕監禁するとともに暴行を加えて現金の在りかを聞き出し、長時間拘束した末、Aが、被害者の頸部をロープで絞め付け、頭部をバールで殴って殺害し、Bが、被害者所有の現金等を強取した事案の第二次控訴審において、被告人は、被害弁償に努めるなど被告人なりに反省を深めていることが認められ、これらに、被告人が被害者殺害の実行行為をしておらず、被告人の果たした役割の重要度は首謀者であるAよりははるかに劣ることを含め、酌むべき事情を総合勘案すると、被告人を、Aと同じ無期懲役に処するのはいささか躊躇を覚えざるを得ないとし、無期懲役を言い渡した原判決を破棄し、懲役15年を言い渡した事例。
2014.04.15
道路交通法違反、自動車運転過失致死傷被告事件
LEX/DB25503173/福岡高等裁判所 平成26年2月14日 判決 (控訴審)/平成25年(う)第62号
被告人が、パチンコ店の駐車場内道路部分で、酒気を帯び、前方注視を欠いたまま自車を進行させて前方車両に衝突し、同車を飲食店建物内に突入させ、同車の運転者に傷害を負わせるとともに、同建物内での飲食客を死亡させた事実につき、原判決が、自動車運転過失致死傷罪の成立のみを認めて、被告人に懲役3年、5年間の執行猶予、道路交通法違反について無罪を言い渡したため、検察官が控訴した事案において、被告人にアルコール保有の認識があったことは優に認定できるというべきであり、これを否定した原判決は、論理則経験則に照らして不合理な判断を重ねて、その認識を否定する被告人の原審公判での弁解を排斥できないとしたものであって、これを是認することはできないとし、原判決を破棄し、懲役3年を言い渡した事例。
2014.04.15
所得税法違反被告事件
LEX/DB25503053/東京高等裁判所 平成26年1月31日 判決 (控訴審)/平成25年(う)第842号
平成18年分及び同19年分の過少申告のほ脱の故意について、原判決は、これを認定すべき積極方向の事実が存するとしつつ、その推認力は高いものではないことを示す事情があるとし、また、ほ脱の故意を認定するには消極方向の事実も少なからずあって、検察官の指摘する各事実を総合しても、株式報酬も源泉徴収されていたと思い込んでいた旨の被告人の弁解を排斥することはできず、さらに申告時にその年に受領した給与収入額と自己の申告額との差額を具体的に認識していたとも断定できないとして、結局、被告人に、ほ脱の故意があったと認めるには合理的疑いが残るとした(被告人に対して無罪を言い渡した)が、原判決の認定に論理則、経験則等に照らして不合理な点はなく、事実誤認があるとはいえないとして、検察官の控訴を棄却した事例。
2014.04.15
特定商品等の預託等取引契約に関する法律違反被告事件
LEX/DB25503063/東京地方裁判所 平成26年1月9日 判決 (第一審)/平成25年(特わ)第902号等
本件のオーナー契約(黒毛和種牛売買・飼養委託契約)は、黒毛和種牛の繁殖牛を顧客に販売するとともに、当該繁殖牛を一定期間飼養委託させ、顧客に対し、一定額の利益金(子牛予定売却利益金)を支払った上、同期間満了時に、顧客から当該繁殖牛を前記販売時と同額で買い取ることを内容とするものであるから、そのような契約を勧誘するに当たり、当該耳番号の繁殖牛は存在しないのに、存在するかのように同番号を付した本件契約書を送付したり、顧客の牛は実在する旨記載した本件パンフレットを送付した本件不実の告知は、顧客の適正な判断・意思決定の前提となる情報をゆがめる程度が非常に大きく、本件罰則(特定商品等の預託等取引契約に関する法律17条、14条1号、4条1項)の趣旨に照らして反規範性の高い行為であるといえるとして、被告人A(安愚楽牧場の代表取締役)を懲役2年10月に、被告人B(被告人Aの重要な補佐役)を懲役2年4月に処した事例。
2014.04.15
各詐欺、金融商品取引法違反被告事件
LEX/DB25503061/東京地方裁判所 平成25年12月18日 判決 (第一審)/平成24年(刑わ)第1559号等
AIJ投資顧問の代表取締役であった被告人A、同社の取締役であった被告人B及びアイティーエム証券の代表取締役であった被告人Cが共謀の上、27回にわたり、17の年金基金の担当者らに対し、AIMグローバル・ファンドの虚偽の運用実績を示すなどして合計約248億円をだまし取るなどした詐欺、金融商品取引法違反の事案において、被告人らがだまし取った金員は、各被害基金の母体企業及び加入員が老後の生活のために積み立ててきた掛金を原資とするものであり、他の要因もあったにせよ、11の被害基金が解散を検討せざるを得ない状況に陥っていることに照らしても、本件被害の影響は広汎かつ大きいといわなければならないとして、被告人Aを懲役15年、被告人Bを懲役7年、被告人Cを懲役7年に処した事例。
2014.04.08
詐欺被告事件
LEX/DB25446329/最高裁判所第二小法廷 平成26年3月28日 判決 (上告審)/平成25年(あ)第3号
暴力団員である被告人が、所属する暴力団組織の幹部構成員と共謀の上、宮崎市内にあるゴルフ施設の従業員に対し、暴力団員という両名の属性を偽り、両名において同施設の利用という財産上の利益の提供を受け、被告人両名が共謀の上、同市内にある別のゴルフ施設の従業員に対し、暴力団員という被告人の属性を偽り、同被告人において同施設の利用という財産上の利益の提供を受けた、いわゆる2項詐欺の各事件で、第一審判決は、暴力団員であることを秘してした施設利用申込み行為自体が、挙動による欺罔行為として、申込者が暴力団関係者でないとの積極的な意思表示を伴うものと評価でき、各ゴルフ場の利便提供の許否判断の基礎となる重要な事項を偽るものであって、詐欺罪にいう人を欺く行為に当たるとし、各公訴事実と同旨の犯罪事実を認定して、被告人を懲役1年6月、執行猶予3年に処し、被告人からの控訴に対し、原判決も、第一審判決の認定を是認し、控訴を棄却したため、被告人が上告した事案において、被告人及びDによる本件各ゴルフ場の各施設利用申込み行為が挙動による欺罔行為に当たるとして詐欺罪の成立を認めた第一審判決及びこれを是認した原判決には、判決に影響を及ぼすべき重大な事実の誤認があり、これを破棄しなければ著しく正義に反すると認められるとし、既に第一審及び原審において検察官による立証は尽くされているので、当審において自判するのが相当であるところ、本件各公訴事実については犯罪の証明が十分でないとして、被告人に対し無罪の言渡しをした事例(反対意見あり)。