注目の判例

刑法

2013.11.19
収賄、詐欺被告事件
LEX/DB25501811 / 岐阜地方裁判所 平成25年10月4日 判決 (第一審) / 平成25年(わ)第178号等
市の水道技手である被告人と水道業を営む相被告人が、かねてより癒着した関係にあったところ、被告人が相被告人から賄賂を収受するに至り、その費用等の捻出のため、市に対する詐欺に及んだという事案において、法律上重い詐欺についてみると、公金を扱う公務員でありながら、自らの利益などのために主導的に詐欺を行っており悪質であり、その被害金額も、前後6回にわたって合計75万円余りに上り高額であるとし、収賄についても、本件各犯行は、被告人が主体的に行った常習的なものであって、収受した金額も低額ではないとして、被告人を懲役2年6月(執行猶予3年)に処した事例。
2013.11.19
国家公務員法違反被告事件
LEX/DB25501823 / 静岡地方裁判所 平成25年10月4日 判決 (第一審)
検察事務官である被告人Aが、交際相手である被告人Bを介して、暴力団幹部の被告人Cから、暴力団組員による詐欺事件の捜査の端緒及び求刑予定という重要な秘密の漏洩をそそのかされ、これを被告人Cに漏らしたという事案において、暴力団関係者の情報を暴力団幹部に漏らすなど、暴力団根絶に努力している捜査機関や一般市民に対する背信的な行為であって、到底容認できない悪質な事案というほかないとして、被告人Aを懲役1年(執行猶予4年)に、被告人Bを懲役1年(執行猶予3年)に、被告人Cを懲役7月に処した事例。
2013.11.19
傷害致死被告事件
LEX/DB25501820 / 福岡高等裁判所 平成25年10月2日 判決 (控訴審) / 平成25年(う)第156号
被告人が、異常な言動を示すようになっていた被害者の中にある不調の原因を取り去って被害者を元の状態に戻す目的で、共犯者と共謀の上、被害者の身体を木製土台付きのプラスチック製椅子に固定した上、共犯者が、上記土台上に上がり、被害者の背後からその頭部を両手で挟み込むなどして固定し、約5分間にわたり、被害者の上部前方から流れ落ちる水をその顔面等に打ち当てて、被害者を窒息死又は心臓性突然死させたという事案の控訴審において、被害者の死因について、溺水による窒息死又は本件滝行によるストレスから発症した急性心疾患による心臓性突然死と認定し、被告人の行為との因果関係も認め、被告人の行為が正当業務行為に当たらないことなどを判断した上、被告人に傷害致死罪の成立を認めた原判決は、論理則、経験則等に照らして不合理な点はなく、正当というべきであり、事実誤認をいう論旨は、理由がないとして、被告人の控訴を棄却した事例。
2013.11.19
窃盗被告事件
LEX/DB25501810 / 大津地方裁判所 平成25年9月13日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第592号
コンビニエンスストアにおける万引窃盗の事案において、被告人は、窃盗罪(タバコを窃取した車上狙い)で執行猶予の付いた懲役刑に処せられて、その猶予期間中であったにもかかわらず、焼酎が飲みたいと考えて安易に本件の万引を行ったものであるが、被告人には刑法上の完全責任能力が認められるものの、その知的能力の程度が犯行に影響を及ぼしたことがうかがえるとし、本件で実刑とすることは酷であり、情状に特に酌量すべきものがあると認めて再度刑の執行を猶予するとして、被告人を懲役1年(保護観察付執行猶予4年)に処した事例。
2013.11.19
自動車運転過失致死傷被告事件
LEX/DB25445986 / 名古屋地方裁判所 平成25年9月5日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第484号
被告人が、コンテナを積載したトレーラを牽引して大型貨物自動車を運転中、ロックピンによりトレーラに緊締されていない状態のコンテナを横転、落下させ、並走していた自動車を押し潰し、2名を死亡させ、1名に傷害を負わせた事案において、本件事故は、被告人が、本件車両の運転に当たりトレーラとコンテナとをロックピンを確実に緊締し、又は、本件現場道路の最後の右カーブを漫然と時速約48kmで走行するのではなく、ロックピンが緊締されていなくてもコンテナが横転しないような速度に調整して走行していれば回避できたものであることは明らかであるとして、自動車運転過失致死傷罪を適用し、被告人を禁固3年6月に処した事例。
2013.11.05
傷害被告事件
LEX/DB25501757 / 静岡地方裁判所沼津支部 平成25年9月20日 判決 (第一審) / 平成25年(わ)第137号
被告人が、同じ職場で勤務する被害者に対して好意を抱いていたところ、同人から冷たい態度を取られたと感じたことなどから、同人に対して憎しみの感情などを抱くようになり、同人の靴の内側にフッ化水素酸を付着させ、同人の足にフッ化水素酸を曝露させ、足部腐食等の傷害を負わせた事案において、被告人を懲役7年に処した事例。
2013.11.05
業務上過失傷害被告事件
LEX/DB25445945 / 横浜地方裁判所 平成25年9月17日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第576号
麻酔科医師である被告人が、手術室において患者に対して全身麻酔を施したが、患者に酸素を供給していた蛇管が脱落していたことに気付かず、患者に低酸素脳症による脳機能傷害等の傷害を負わせたとして、業務上過失傷害罪で起訴された事案において、手術室全体の調整や後期研修医の指導・補助等のために約27分間手術室を不在にした被告人の行動について、常時在室して患者の全身状態を絶え間なく看視すべき業務上の注意義務を認めることはできないとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2013.11.05
逮捕監禁,強姦致傷被告事件
LEX/DB25445946 / 神戸地方裁判所 平成25年7月25日 判決 (第一審) / 平成25年(わ)第155号
被告人が、以前から性的関係のあった被害者との関係修復を試みようとしたが、被害者から拒絶的な態度をとられたことから、被害者を自動車内に逮捕監禁し、強いて姦淫し、暴行を加えて傷害を負わせた事案において、被害者の負傷は、強姦行為によって生じたものとはいえないから被告人に強姦致傷罪は成立せず、被告人の暴行により被害者を負傷させた点は、別途、傷害罪を構成するにとどまるなどとして、被告人を懲役3年に処した事例(裁判員裁判)。
2013.11.05
詐欺被告事件
LEX/DB25445947 / 神戸地方裁判所 平成25年7月12日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第524号
被告人が、知人及び夫と共謀して、資格試験を受験中の息子を案じる被害者に対し、受験に関して有利に取り扱う口利きができると誤信させ、多額の金銭をだまし取った事案において、被告人には、第一の詐欺については詐欺の故意があったとは認定できないが、第二の詐欺については詐欺の未必的な故意があったと認められ、かつ共同正犯としての罪責を負うとして、被告人を懲役2年(執行猶予3年)に処した事例。
2013.11.05
殺人被告事件
LEX/DB25501758 / 福岡地方裁判所 平成25年7月12日 判決 (第一審) / 平成25年(わ)第223号
被告人が、被告人方において妊娠中の妻を殺害し、心中を装った事案において、被告人と妻との間に心中に関するやり取りはなかったと認められるとして、同意殺人罪の成立を否定し、殺人罪を適用して被告人を懲役16年に処した事例(裁判員裁判)。
2013.10.29
 
LEX/DB25501719 / 最高裁判所第三小法廷 平成25年 9月 3日 決定 (上告審) / 平成24年(あ)第417号
 千葉市長の職にあった被告人が、同市の発注する土木工事について入札を希望する建築業者から、入札参加資格の基準緩和等の有利かつ便宜な取り計らいを受けたい旨等の趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、2回にわたり現金を収受したという収賄の事案の上告審において、上告趣意は、憲法違反、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、いずれも刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、被告人の上告を棄却した事例。
2013.10.29
 
LEX/DB25501723 / 最高裁判所第三小法廷 平成25年 9月 3日 決定 (上告審) / 平成23年(あ)第2144号
 一審判決が有罪の根拠とした間接事実の一部に事実誤認があり、かつ、関係証拠から認められる間接事実によっては、被告人が放火犯人であると合理的な疑いを超えて立証されたとは認め難いことから、被告人を放火の犯人であると認定した一審判決の事実認定は、論理則、経験則等に照らして不合理であるとして、一審判決中有罪部分を破棄し、公訴事実中現住建造物等放火の点について、被告人に無罪の言渡しをした原判決に対する検察官上告につき、検察官の上告趣意は、判例違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、上告を棄却した事例。
2013.10.29
公文書変造・同行使(変更後の予備的訴因有印公文書偽造・同行使)、有印私文書偽造・同行使、業務上横領被告事件
LEX/DB25501697 / 岡山地方裁判所 平成25年 8月28日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第736号等
 岡山弁護士会所属の弁護士であった被告人が、受任した事件の依頼者やその相手方等から、当面の生活費の支払や本来は後に支払われるべき賠償金の内払いなどを求められ、安易にこれに応じて立替金の名目で金銭を支払ったことに端を発して、次第に経済的に逼迫し、その結果、犯したとされた、公文書変造・同行使、有印私文書偽造・同行使、業務上横領被告事件の事案において、本件における各犯行は、交通事故等によって、大きな痛手を負った被害者らの今後の生活を支えるために不可欠な賠償金や保険金等を、被害者等が置かれた状況を十分に承知しながら繰り返し横領し、被害者等をさらなる窮状に陥れたものであり、このような犯行は、依頼者の権利利益を実現すべき弁護士の職責に真っ向から反するものである等として、その態様は悪質であり、強い非難に値するなどとして、被告人を懲役14年に処した事例。
2013.10.29
愛知県青少年保護育成条例違反被告事件
LEX/DB25501722 / 名古屋高等裁判所 平成25年 7月 9日 判決 (控訴審) / 平成25年(う)第88号
 被告人が経営していた塾の冬期講習に通っていた少女Aが、進学した高校の授業についていけなかったことから、個人的に指導を依頼し、勉強を教えてもらい、1学期の期末テストの結果報告のため、塾を訪れた際、被告人が、Aの乳房をもんだり、乳首をなめたり、陰部に手の指を挿入するなどし、青少年に対して、わいせつ行為をしたという事案の控訴審において、原判決が、原判示の事実に沿うAの供述に信用性を認め、原判示の事実を認定したことは正当であり、(事実認定の補足説明)で認定説示するところも、論理則及び経験則に反した不合理な点はなく、概ね正当として是認することができるとして、被告人の控訴を棄却した事例。
2013.10.29
各爆発物取締罰則違反被告事件
LEX/DB25501728 / 東京高等裁判所 平成25年 6月27日 判決 (第二次控訴審) / 平成22年(う)第2280号
 中核派の構成員である被告人3名が、同派の構成員らと共謀の上、昭和61年4月15日及び同年5月4日、在日米軍横田基地と東京サミットの行事開催中の迎賓館に向けて、各5発の金属製砲弾を順次発射し、うち1個を同基地内に、5個を迎賓館周辺の道路等に着弾させて爆発させ、爆発物を使用したという爆発物取締罰則違反2件の事案の第二次控訴審において、事実誤認の論旨は理由がないとして、被告人らの各控訴を棄却した事例。
2013.10.29
住居侵入、強盗殺人被告事件
LEX/DB25501724 / 東京高等裁判所 平成25年 6月20日 判決 (控訴審) / 平成23年(う)第773号
 被告人が、金品を強奪する目的で、被害者方へ侵入し、室内で寝ていた被害者の首を包丁で突き刺して殺害した、という住居侵入、強盗殺人の事案の控訴審において、本件が重大かつ冷酷非情な犯行であり、被告人には二人の生命を奪った前科があることを十分に考慮しても、なお、死刑を選択することが真にやむを得ないものとはいえないとして、原判決(死刑)を破棄し、被告人を無期懲役に処した事例。
2013.10.29
愛知県青少年保護育成条例違反被告事件
LEX/DB25501721 / 名古屋地方裁判所 平成25年 2月18日 判決 (第一審) / 平成23年(わ)第2603号
 被告人は、A(当時15歳)が18歳に満たない青少年であることを知りながら、愛知県において、単に自己の性的欲望を満たすだけの目的で、Aの乳房をもんだり、乳首をなめたり、陰部に手の指を挿入するなどし、もって青少年に対して、わいせつな行為をしたとして、被告人を懲役6か月(執行猶予3年)に処した事例。
2013.10.22
 
LEX/DB25501693 / 最高裁判所第一小法廷 平成25年 7月22日 決定 (上告審) / 平成25年(あ)第495号
 被告人が、アスペルガー障害を有し、長期間引きこもりの生活をしていたところ、その精神障害の影響で姉である被害者の言動が自分に対する嫌がらせであるなどと受け止め、いわれない憎しみを募らせた末に殺害を決意し、あらかじめ包丁を準備して、被害者が自宅を訪れるのを待ち受けた上で、何ら落ち度のない被害者に対し、執ように包丁で切りつけて殺害したとされた事案の上告審において、弁護人の上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、量刑不当の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、本件上告を棄却した事例。
2013.10.22
殺人被告事件
LEX/DB25501736 / 横浜地方裁判所 平成25年 7月10日 判決 (第一審) / 平成25年(わ)第298号
 被告人が、77歳の妻の認知症の症状を悲観して、無理心中を企て、睡眠薬で入眠させた妻を両手で絞殺したという事案において、とりわけ本件犯行の経緯に関する酌むべき事情を考慮しても、罪質や結果の重大性、犯行態様の悪質性等を踏まえると、本件について刑の執行を猶予することは相当でないとして、被告人を懲役2年6か月に処した事例。
2013.10.22
業務上過失致死被告事件
LEX/DB25501614 / 東京地方裁判所 平成25年 3月 4日 判決 (第一審) / 平成23年(刑わ)第2213号
 歯科医師である被告人が、インプラント手術の際、業務上の注意義務に違反して、ドリルで被害者の口腔底内の血管を損傷し、被害者を死亡させたという事案において、被告人には、手術に当たり、オトガイ下動脈等の血管を損傷する危険性を認識した上で、これらの血管を損傷することのないよう、ドリルを挿入する角度及び深度を適切に調整して埋入窩を形成すべき業務上の注意義務があるのに、これを怠り、ドリルを挿入する角度及び深度を適切に調整せず、右下顎骨の舌側近心方向にドリルを挿入し、右下顎第1小臼歯根尖下方の舌側皮質骨を穿孔してドリルを口腔底の軟組織に突出させた過失があるというべきであるとして、業務上過失致死罪の成立を認めて、被告人を禁錮1年6月に処し、執行猶予3年を言い渡した事例。