注目の判例

刑法

2014.01.28
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律による処遇事件
LEX/DB25446101/最高裁判所第二小法廷 平成25年12月18日 決定 (上告審)/平成25年(医へ)第34号
心神喪失等の状態で重大な他害行為を行った者の医療及び観察等に関する法律42条1項3号の同法による医療を行わない旨の決定に対しては、対象行為の認定を争うものであっても同法64条2項の抗告をすることは許されないとした原決定は正当であるとして、本件抗告と棄却した事例。
2014.01.28
覚せい剤取締法違反被告事件
LEX/DB25446109/最高裁判所第三小法廷 平成25年11月19日 判決 (上告審)/平成25年(あ)第508号
控訴審が被告人の控訴に基づいて第1審判決を破棄する場合には、控訴申立後の未決勾留日数は、刑事訴訟法495条2項2号により、判決が確定して執行される際当然に全部本刑に通算されるべきものであって、控訴裁判所には、上記日数を本刑に通算するか否かの裁量権が委ねられておらず、刑法21条により判決においてその全部又は一部を本刑に算入する旨の言渡しをすべきでないとした事例。
2014.01.28
器物損壊,傷害,窃盗事件
LEX/DB25446129/横浜地方裁判所 平成25年11月8日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第350号
被告人が、親密な関係にあったCの男性関係に怒り、Cがアルバイトをするコンビニ店の駐車場でCとトラブルとなり、Cを迎えに来ていたBが間に入るなどしたことにも腹を立て、Bの自動車に傷をつけ、同人を殴ってけがを負わせたほか、Cの金品在中の本件バックを窃取したという公訴事実につき、本件認定事実によれば、被告人が本件バッグを持ち去ることについてCの承諾があったとして、窃盗の公訴事実については被告人を無罪とした上で、器物損壊及び傷害の点については被告人を有罪とし、被告人を罰金50万円に処した事例。
2014.01.28
収賄、地方公務員法違反、犯人隠避被告事件並びに贈賄被告事件
LEX/DB25502351/福岡地方裁判所 平成25年11月8日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第1069号等
警察官である被告人Aは、Bに係る覚せい剤取締法違反被疑事件の捜査主任官に指名された者であるが、被告人Aが指定暴力団の会長に電話し、事務所に対する捜索の実施が予定されている旨を告げ、もってその職務上知り得た秘密を漏らし、前記事件に関し、Cを取り調べた際、CがBとの共犯関係を認める供述をしたのに、Cの処罰を免れさせるため、Cを覚せい剤取締法違反事件の被疑者として取り調べるなど必要な捜査を行わず、「Bは知らない」旨を記載したCを供述人とする供述調書1通を作成し、同供述調書を上司に提出するなどし、覚せい剤取締法違反の罪の犯人であるCを隠避させ、被告人Dは、恐喝等被疑事件への関与が疑われていたもの、被告人Eは、被告人Dの兄貴分に当たるものであるが、被告人Aは、被告人D及び被告人Eから、捜査方針や捜査状況に関する情報を漏洩するなど有利かつ便宜な取り計らいを受けたことに対する謝礼の趣旨の下に供与されるものであることを知りながら、現金約10万円の供与を受け、自己の職務に関し賄賂を収受し、被告人D及び被告人Eは、共謀の上、被告人Aに対し、現金約10万円を供与し、被告人Aの前記職務に関し賄賂を供与した事案において、被告人Aの地方公務員法違反、犯人隠避については懲役1年、執行猶予3年を言い渡し、被告人Aの収賄、被告人D及び同Eの贈賄については無罪を言い渡した事例。
2014.01.28
傷害被告事件
LEX/DB25446095/横浜地方裁判所 平成25年10月31日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第1049号
飲食店の店長である被告人が、客であるAの顔面を殴打するなどして傷害を負わせたとして、起訴された事案において、被告による殴打の事実を認定した上で、被告人は、客同士のトラブルを避けるため、Aらを退店させようとしたところ、店内でCから暴行を受け、さらに路上でもCから殴られそうになったため、Cの顔面を殴り、その後にBに押し倒されて起き上がったところ、Aから暴行を受けそうになったため、本件暴行に及んだものであり、被告人の暴行には正当防衛が成立するとして、被告人に対し無罪を言い渡した事例。
2014.01.28
傷害致死、監禁、傷害、逮捕監禁、死体遺棄被告事件
LEX/DB25502421/神戸地方裁判所 平成25年10月31日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第125号等
大手私鉄に勤務していた被告人Aが、電車のドアにベビーカーが挟まれたと執拗に苦情を申し立てたGに対応したことに端を発し、Aの元妻である被告人C及びCの姉である被告人BらとともにGの指示に盲従して共同生活を営むようになり、被告人3名が、Gらと共謀の上、被告人B及び被告人Cの実母である被害者を居室に監禁し、虐待を継続的に加えて死亡させ、同人の死体をドラム缶に詰めて遺棄するなどした事案において、被告人3名いずれについても、本件各犯行当時、責任能力を有していたと認められ、また、警察に保護を求めるなどの行動に出て本件各犯行に及ばないことが物理的に十分に可能であったことなどに照らすと、期待可能性もあったと認められるとして、被告人Aを懲役3年6月、被告人Bを懲役3年(執行猶予4年)、被告人Cを懲役2年(執行猶予3年)を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2014.01.28
傷害致死被告事件
LEX/DB25502416/横浜地方裁判所小田原支部 平成25年10月11日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第188号
被告人が、近隣住民に異物を飲まされたとか、自分はがんであると思いこむなどの妄想性障害を発症し、これによるイライラ感からくる暴力的衝動に駆られ、実母である被害者に対して暴行を加えて死亡させた傷害致死の事案において、本件犯行は、妄想性障害の中身とは関係のない母親に向けられたものであって、上記妄想に支配されて行われたものとは認められず、単に妄想によって生じたイライラを母親に対する八つ当たりという形で発散させたに過ぎないと評価すべきであることなどから、被告人の完全責任能力を認め、被告人を懲役6年(求刑5年)に処した事例(裁判員裁判)。
2014.01.28
公正証書原本不実記載、同行使、詐欺被告事件
LEX/DB25502356/京都地方裁判所 平成25年9月26日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第699号等
被告人が、Aに本邦における長期の在留資格を取得させるため、同人と婚姻したように偽装しようと企て、役所の出張所において、前記両名が婚姻する旨の内容虚偽の婚姻届を提出して虚偽の申立てをし、同婚姻届を受理させ、被告人の戸籍簿原本にその旨不実の記載をさせた上、これを備え付けさせて行使し、自衛官である被告人は、Aに本邦における長期の在留資格を取得させるため、Aを扶養親族とする扶養手当名下に金員を詐取しようと企て、Aとの婚姻は有効で、Aを扶養しているかのように装い、扶養手当の支給を申請し、その旨誤信させて扶養手当を支給する旨認定させ、19回にわたり、扶養手当及び同手当の支給により増額となる地域手当及び期末手当の増額分を交付させた事案において、懲役2年、執行猶予3年を言い渡した事例。
2014.01.14
覚せい剤取締法違反被告事件
LEX/DB25502392/静岡地方裁判所 平成25年11月22日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第506号
被告人は、実質的に違法な身柄拘束(逮捕)の中で、尿を提出したものであり、その尿及びこれに関連する証拠は違法な捜査によって収集された証拠というべきであり、そしてその違法は令状主義を没却する重大なもので到底看過できるものではなく、将来の違法捜査抑制の観点からも、司法の廉潔性保持の観点からもそれらの証拠の証拠能力を認めることは相当でないから、既に取り調べたこれらの証拠については証拠排除するとした上で、被告人は公判廷で覚せい剤の使用について認めているものの、この自白を補強すべき証拠がないから、被告人を有罪とすることはできず(刑事訴訟法319条2項)、結局、犯罪の証明がないことに帰するとして、被告人に対し無罪の言渡しをした事例。
2014.01.14
殺人未遂、銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件、証拠隠滅被告事件
LEX/DB25502347/福岡地方裁判所小倉支部 平成25年11月15日 決定 (第一審)/平成24年(わ)第949号等
被告人甲及び乙の両名は、氏名不詳者らと共謀の上、午前5時31分ころ、路上において、被害者(当時52歳)に向けて、けん銃で弾丸2発を発射して命中させたが、同人に全治約86日間を要する傷害を負わせたにとどまったとして、殺人未遂及び銃刀法違反被告事件において起訴された事案において、被告人甲が実行犯であると認めるには、合理的疑いが残り、被告人乙についても共謀の成立を認めることができないとして、被告人両名に無罪を言い渡した事例。
2014.01.14
中国人妻による替え玉殺人事件
LEX/DB25502395/最高裁判所第三小法廷 平成25年11月11日 決定 (上告審)/平成23年(あ)第881号
中華人民共和国の国籍を有する被告人が、不詳の方法によって自己の夫に傷害を負わせて死亡させ(傷害致死)、糖尿病患者である別の男性を亡夫の身代わりとして病死を装って殺害し、亡夫の資産を相続の名目で不正に入手しようと考え、共犯者と共謀の上、上記男性の身体に麻袋様のものを巻き付け、同人を真冬の納屋に数日間監禁するなどし、インスリンの投与を受けさせないことにより糖尿病を悪化させて同人を殺害し、亡夫とその前妻との間の娘らの作成名義の住民異動届等を偽造、行使して、同女らに無断で住民票を異動し、印鑑を登録した上で印鑑登録証明書を入手し、これを用いて、亡夫の遺族の知らぬ間に、不正に亡夫名義の土地の所有権移転登記を受け、相続届等を偽造、行使するなどして亡夫名義の預貯金等合計約2900万円をだまし取り(殺人、有印私文書偽造、同行使、電磁的公正証書原本不実記録、同供用、公正証書原本不実記載、同行使、詐欺)、その他、詐欺、出入国管理及び難民認定法違反、公用文書毀棄を行ったという事案の上告審において、被告人を無期懲役に処した第一審判決を維持した原判決について、その刑の量定がこれを破棄しなければ著しく正義に反するということはできないとして、検察官及び被告人の各上告を棄却した事例。
2014.01.14
保護責任者遺棄致死被告事件
LEX/DB25502335/大津地方裁判所 平成25年11月6日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第494号
被告人は、日頃から十分な食事を与えないなど、子(当時1歳7か月)の育児を疎かにしていたものであるところ、同児が高熱を出し、その後も容体が回復しないのを認めていたのであるから、適切な医療措置を受けさせて保護を加える責任があったにもかかわらず、面倒くさいなどという思いから、適切な医療措置を受けさせず、自宅において、同児を気管支肺炎により死亡させたとして保護責任者遺棄致死により起訴された事案において、結果が悲惨であり、被告人が強い非難を受けることは避けられないなどとして、被告人に懲役5年を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2014.01.14
自動車運転過失傷害被告事件
LEX/DB25446015/千葉地方裁判所 平成25年10月8日 判決 (第一審)/平成23年(わ)第1722号
被告人が、普通乗用自動車を運転中、対面信号機が赤色信号表示であったのに交差点に進入し、右方道路から青色信号表示に従って進行してきた普通乗用自動車と衝突し、6名に傷害を負わせたとして、自動車運転過失致死傷罪で起訴された事案において、被告人が本件事故当時、睡眠時無呼吸症候群を原因として予兆なく急激に睡眠状態に陥り、対面信号機の信号表示に留意する義務を履行することができない状態に陥っていたとの合理的疑いを払拭することができないから、被告人に前記義務違反の過失を認めることはできないとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2014.01.14
危険運転致死、道路交通法違反被告事件
LEX/DB25502279/名古屋地方裁判所 平成25年6月10日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第2207号
被告人が、強い薬効を持つ脱法ハーブを使用していながら、あえてハンドルを握って本件事故を起こしたばかりか、被害者の救護義務等を怠ってひき逃げもしたという危険運転致死、道路交通法違反被告事件の事案において、被告人は、本件当時、使用した本件脱法ハーブの影響により、事故が道路交通の状況等に応じた運転操作を行うことが困難な心身の状態であること、すなわち、薬物の影響により正常な運転が困難な状態であることを認識していたものと認められるなどとし、また、本件当時の被告人の責任能力も認めた上で、量刑に当たって、脱法ハーブの影響による危険運転致死事案の判決例が見当たらないため、アルコールの影響による危険運転致死事案の量刑傾向を参照し、本件はそれよりも悪質と認められるとして、被告人に懲役11年を宣告した事例(裁判員裁判)。
2014.01.14
詐欺被告事件
LEX/DB25502343/大津地方裁判所 平成25年3月14日 判決 (控訴審)/平成24年(わ)第251号
宗教団体アレフの信者である被告人両名は、アレフへの入会をヨガ教室への入会と偽って勧誘し、共謀の上、勧誘していた被害者(当時29歳)に対し、アレフへの入会及びそれに伴って必要な入会金等であるのに、単なるヨガ教室への入会金等が必要であるかのように装い、同人から現金2万円の交付を受けたとして詐欺により起訴された事案において、被害者がアレフへの入会金等であることを錯誤して2万円を交付したとの証明がなされていないとして、被告人両名に無罪を言い渡した事例。
2014.01.06
住居侵入、強盗強姦未遂、強盗致傷、強盗強姦、監禁、窃盗、窃盗未遂、強盗殺人、建造物侵入、現住建造物等放火、死体損壊被告事件
LEX/DB25502257/東京高等裁判所 平成25年10月8日 判決 (控訴審)/平成23年(う)第1947号
被告人が、約2か月の間に、強盗殺人や現住建造物等放火の各犯行に加え、強盗致傷や強盗強姦、同未遂等の各犯行を次々と敢行したという事案の控訴審において、本件においては、死刑を選択することが真にやむを得ないものとはいえないとし、原判断は、裁判員と裁判官が評議において議論を尽くした結果であるが、無期懲役刑と死刑という質的に異なる刑の選択に誤りがあると判断できる以上、破棄は免れないとして、原判決(死刑判決)を破棄し、被告人を無期懲役に処した事例。
2014.01.06
殺人、死体遺棄被告事件
LEX/DB25502259/大阪地方裁判所 平成25年10月8日 判決 (第一審)/平成23年(わ)第2828号
被告人は、共犯者らと共謀の上、保険金を取得する目的で、被害者(当時36歳)を殺害し、その死体を遺棄したとして、殺人、死体遺棄により起訴された事案において、被告人に対し、被告人は、殺人及び死体遺棄の共謀の成立を否定するが、共謀に関する共犯者の供述は信用できるなどとして共謀の成立を認めた上、犯行態様は計画的で悪質であること、被告人は首謀者に準じる立場にあったこと、遺族が厳しい処罰感情を述べていること、被告人に反省の態度は見られないことなどを考慮し、被告人に対し、懲役23年を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2013.12.24
強盗殺人被告事件
LEX/DB25502296/京都地方裁判所 平成25年10月28日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第90号
被告人は、貴金属買取業者の営業員として働いていたが、以前に指輪の買取りをしたことがある被害者から、脅して無理矢理にでも指輪を取る目的で、被害者方を訪問し、玄関先で被害者(当時68歳)に「貴金属くれ。」と言ったところ、被害者が外に逃げ出す素振りを見せたことから、訪問の目的を達成するため、とっさに左手で被害者の首を強く押さえて、その場に押しとどめ、中に入って右手で玄関扉を閉めた後、被告人が首から左手を離すと被害者はその場に仰向けに倒れたが、それを見た被告人は、さらに、殺意をもって、被害者の首を手や肌着で絞め付け、被害者を窒息により死亡させて殺害した上、被害者の所有する指輪5点を強奪したとして、被告人を無期懲役に処した事例(裁判員裁判)。
2013.12.24
 
LEX/DB25502305/大阪地方裁判所 平成25年10月28日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第3561号
現職の警察官であった被告人が、捜査中の事件に係る証拠品を偽造したという事案において、被告人は、知人の警察官に情を秘して真正な本件証拠品と同種の注射器を指定して調達させたり、注射器の指紋を拭き取って封筒に収納するなど、容易に露見することのないよう巧妙に本件犯行を行っており、その態様は悪質であるとする一方、本件証拠品を紛失したのは被告人ではない上、被告人も、当初は本件証拠品が見当たらないことを管理責任者らに報告して適切な処理を求めていたのであり、このような経緯に鑑みると、本件犯行は、管理責任者らによる無責任な対応に象徴されるような、組織全体としての証拠品のずさんな管理体制に誘発された側面もあるとして、被告人を懲役4月(執行猶予2年)に処した事例。
2013.12.24
住居侵入、強盗致傷、銃砲刀剣類所持等取締法違反、わいせつ略取、強制わいせつ、強制わいせつ未遂被告事件
LEX/DB25502298/宇都宮地方裁判所 平成25年8月30日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第661号等
判示第3の各犯行は、刃物を購入し、犯行現場を数回下見して事前に帰宅時間等を確認するなど周到な準備をした上で、被害者に刃物を突き付けるなどして連れ回し、判示のとおりのわいせつ行為に及び、さらに、自宅には成人男性がいないことを同女に確認して同女宅に押し入り、判示のとおり同女に刃物を突き付け、その母親に暴行、脅迫を加えて強盗に及んだものであり、計画的で危険かつ卑劣な態様であるとし、また、判示第1ないし第3の1は、約1か月の間に3度にわたり、自分より体格や腕力が劣る女児を標的として、「殺す」などといった強烈な文言で脅迫した上で行った強制わいせつ、同未遂の事案であり、少年時にも女児に対する同様のわいせつ行為を繰り返していたという経緯に照らせば、被告人にはこの種の犯行の常習性が認められ、態様は悪質であるとして、被告人を懲役9年に処した事例。