注目の判例

刑法

2013.12.10
各建造物侵入、傷害致死、凶器準備集合被告事件
LEX/DB25502125/東京地方裁判所 平成25年10月17日 判決 (第一審)/平成25年(合わ)第31号等
被告人両名は、ほか14名の者と共に、予め準備していた上下黒色ジャージ等を着用した上、金属バット4本等を準備して繁華街の路上に集合し、うち7名の者と共に、目出し帽で顔を隠した上で被害者が飲食していたクラブに侵入し、1分にも満たないごく短時間の間に、金属バット等を用いて、集団でよってたかって、無抵抗の被害者に対し、顔面や頭部といった人体の重要な部分に集中して、粉砕骨折を含む多数の骨折や脳への多大な損傷を与えるほどの強度の暴行を加えたもので、しかも、被害者は被告人らのグループとは無関係の一人の客にすぎず、全く落ち度がないにもかかわらず、突然、何が起きているのか、犯人が誰であるのかもわからないまま激しい暴行を受け、理不尽にも命を失ったとして、被告人両名をそれぞれ懲役13年に処した事例(裁判員裁判)。
2013.12.10
犯人隠避被告事件
LEX/DB25502133/名古屋地方裁判所 平成25年10月15日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第1171号
弁護士である被告人が、刑事弁護を受任した勾留中の依頼者らと共謀の上、予想される別事件の捜査が依頼者に波及するのを回避するため、その実行犯を隠避させたという事案において、犯人に他人名義のシムカードや多額の逃走資金を供与したことにより、長期間広範囲の逃走が可能になっており、態様は悪質で、刑事司法作用が害された程度も大きいとし、また、地域や社会から大きな信頼を寄せられていた、実務経験も豊かな弁護士が、受任案件に関連して敢行した犯罪として耳目を集めているなど、社会的な影響も軽視できないとして、被告人を懲役1年6月(執行猶予3年)に処した事例。
2013.12.10
殺人、詐欺被告事件
LEX/DB25502139/大阪地方裁判所 平成25年10月4日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第871号等
被告人は、夫であるXが父親ではない子を妊娠したことをXに気付かれ、既に中絶できない時期であるのにXと母親に対して中絶すると約束したところ、被告人は、病院でYを出産し、Yと共に退院したが、夫らに中絶すると約束していたためにYを自宅に連れて帰ることができず、大阪市A区内の便所内において、Yを殺害しようと考え、Y(当時生後約8日)を鞄に入れて、その外側からYの頸部付近を手で締め付け、その場で、Yを窒息させて殺害したとし、児童手当等の詐欺については、我が子の殺害を隠すために犯したものであり、積極的に金銭を得る意欲まではなかったとして、被告人を懲役5年に処した事例(裁判員裁判)。
2013.12.10
強盗殺人被告事件
LEX/DB25502132/名古屋高等裁判所 平成25年10月1日 判決 (控訴審)/平成25年(う)第155号
被告人が、知り合いである被害者を殺害して現金を強奪しようと考え、堤防道路に駐車中の被害者車両内及びその周辺において、殺意をもって、その頚部及び胸部を出刃包丁で複数回突き刺すなどし、被害者を左総頚動脈及び左内頚静脈切断による失血により死亡させて殺害した上、被害者が所有する現金数十万円を奪ったという強盗殺人の事案の控訴審において、当初から強盗目的で本件犯行に及んだと認定した原判決に事実誤認はないとし、また、酌量減軽すべき理由はおよそ見出せないとして、被告人を無期懲役に処したことはやむを得ないものとして是認することができ、重過ぎて不当であるということはできないとして、被告人の控訴を棄却した事例。
2013.12.10
 
LEX/DB25502137/最高裁判所第一小法廷 平成25年9月30日 決定 (上告審)/平成25年(あ)第971号
被害者3名に対する強盗殺人幇助と、被告人が、共犯者3名と共謀の上、強盗殺人の犯跡隠蔽のため、被害者3名の遺体を遺棄したという事案の上告審において、弁護人の上告趣意は、憲法違反をいう点を含め、実質は単なる法令違反、事実誤認、量刑不当の主張であって、刑事訴訟法405条の上告理由に当たらないとして、被告人の上告を棄却した事例。
2013.12.10
覚せい剤取締法違反、関税法違反被告事件
LEX/DB25502126/大阪地方裁判所 平成25年9月27日 判決 (第一審)/平成24年(わ)第4480号等
被告人両名は、氏名不詳者らと共謀の上、営利の目的で、みだりに、関西国際空港において、同空港関係作業員らをして、覚せい剤(フェニルメチルアミノプロパン塩酸塩)約1851.33グラム在中の機内手荷物であるスーツケースを、カタール国ドーハ国際空港発カタール航空第802便から搬出させ、前記覚せい剤を本邦に輸入し、大阪税関関西空港税関支署旅具検査場において、輸入してはならない貨物である前記覚せい剤を前記スーツケース内に隠匿して同支署税関職員の検査を受けたが、同職員に発見されたため、これを輸入するに至らなかったという、被告人A及び被告人Bに対する各公訴事実について、被告人Aにおいて、ウガンダ出国時までに検察官主張認識1を有していたと認めるに足りないとし、また、被告人Bにおいて、(募集メールが送信された)8月10日までに検察官主張認識2を有していたと認めるに足りないとして、被告人両名は、いずれも無罪とした事例(裁判員裁判)。
2013.12.10
 
LEX/DB25502136/神戸地方裁判所 平成25年9月27日 判決 (第一審)/平成22年(わ)第473号等
兵庫県尼崎市で平成17年4月、乗客106人が死亡したJR福知山線の脱線事故について、神戸地方検察庁が不起訴とした後、神戸第一検察審査会による2度の「起訴相当」判決を受けて業務上過失致死傷罪で強制起訴された、JR西日本の歴代社長3人に対する裁判において、被告人3名とも、本件曲線において速度超過による列車脱線転覆事故が発生するとの具体的な予見可能性はなかったと認められるから、被告人3名には、本件曲線へのATS整備を指示するべき注意義務があったとは認められないとして、被告人らは、いずれも無罪とした事例。
2013.12.10
暴行、傷害被告事件
LEX/DB25502140/大阪地方裁判所 平成25年9月26日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第3059号
大阪市立桜宮高校のバスケットボール部のキャプテンだった男子生徒(当時17歳)が体罰を苦にして自殺した事件で、男子生徒への傷害と暴行の罪で起訴された当時の顧問教諭に対する裁判において、被害者は、肉体的な苦痛に加え、相当な精神的な苦痛を被っており、これは被害者の自殺及び被害者作成の書面からも明らかであるとし、被害者は、罰を受けるようなことは何らしておらず、要するに被告人が満足するプレーをしなかったという理由で暴行を加えられたのであって、このような暴行は、被害者が書き残したように理不尽というほかないとして、被告人を懲役1年(執行猶予3年)に処した事例。
2013.12.10
非現住建造物等放火、器物損壊、住居侵入被告事件
LEX/DB25502135/名古屋地方裁判所岡崎支部 平成25年9月25日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第230号等
短期間に狭い地域で次々と敢行された連続放火事件において、いずれも夜間に、住宅等が密集する地域や県営住宅の玄関前において、あらかじめライターオイルやライター等を準備して行われた犯行であり、その態様は計画的で、かつ、非常に危険なものであるとし、被告人は、火をつけた瞬間の興奮や快感を味わいたいという身勝手な動機により本件各犯行を繰り返したのみならず、被告人の供述によれば、全部で十数件の放火を敢行したというのであり、その常習性も顕著であるとして、被告人を懲役4年6月に処した事例(裁判員裁判)。
2013.12.10
死体遺棄、詐欺被告事件
LEX/DB25502156/横浜地方裁判所 平成25年9月19日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第748号等
被告人が、死亡した実母の葬祭義務を果たさなかった上、遺体を遺棄し、生前に実母が受けていた恩給扶助料をだまし取り続けたという事案において、被告人を懲役2年4月の実刑に処した事例。
2013.12.10
有印私文書偽造、同行使、公正証書原本不実記載、同行使、業務上横領被告事件
LEX/DB25502129/名古屋地方裁判所 平成25年9月6日 判決 (第一審)/平成25年(わ)第119号
被告人は、かねて被害者の成年後見人を務めていたことなどから、被害者の財産が多額に上ること、認知症等により被害者の意思を確認できないことを知っており、養子になれば被害者の財産を相続によりもらうことができるなどと考えて第1の犯行(養子縁組届の偽造)に及び、自ら居住するための不動産を購入する費用や海外等で自己啓発セミナーを受講する費用のほか種々の支払に当てようと考えて第2、第3の各犯行(業務上横領)に及んだものであって、第1の犯行は身分関係を公証する戸籍制度に対する公共の信用を損なわせるものである上、余罪等に関する被告人の供述にも照らすと第2、第3の各犯行は常習的かつ成年後見人の職務にもとる犯行といえるとして、被告人を懲役1年8月に処した事例。
2013.12.10
強盗殺人、死体遺棄被告事件
LEX/DB25502138/東京高等裁判所 平成25年5月28日 判決 (控訴審)/平成24年(う)第946号
被告人には、強盗殺人罪の故意を肯定できるのみならず、その関与の程度は、単なる幇助犯にとどまらず、自己の犯罪として主体的に関与する共謀共同正犯の域に達していると評価すべきであるとした原判決に対する、被告人の控訴につき、本件各強盗殺人について共謀共同正犯の成立を認めた原判決には、判決に影響を及ぼすことが明らかな事実の誤認があり、被告人には、被害者3名に対する各強盗殺人についてそれぞれ幇助罪が成立するとして、懲役28年とした原判決を破棄し、被告人を懲役18年に処した事例。
2013.12.03
傷害致死被告事件
LEX/DB25502103 / 東京地方裁判所 平成25年10月3日 判決 (第一審)/ 平成24年(合わ)第238号
被告人は、5歳の息子の手足をビニールひもで縛り、目や口等に粘着テープを貼り付けた上、ごみ収集袋に閉じ込め、眠り込んでしまったことから、同児を呼吸不全状態に陥らせ、低酸素脳症により死亡させたとして傷害致死により起訴された事案において、結果は極めて重大であり、犯行態様は非常に悪質であるが、睡眠導入剤と飲酒の併用による意識障害があったことや、背景には被告人に同情しうる事情もあったこと、被告人が反省の態度を示していることなどから、被告人に懲役3年、保護観察付執行猶予5年間を言い渡した事例(裁判員裁判)。
2013.12.03
銃砲刀剣類所持等取締法違反被告事件
LEX/DB25502104 / 東京地方裁判所 平成25年9月19日 判決 (第一審)/ 平成25年(合わ)第99号
被告人が、自宅の倉庫内に、けん銃87丁、けん銃実包62発、けん銃部品3点を所持していたとして銃砲刀剣類所持等取締法違反により起訴された事案において、被告人が所持していたけん銃等の数の多さは強い非難に値するが、使用することを想定していない点で動機の悪質性は高くなく、反省の態度を示していることなどを考慮し、被告人に対し懲役3年、執行猶予5年間を言い渡した事例。
2013.11.26
現住建造物等放火、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反被告事件
LEX/DB25502074 / 福岡地方裁判所 平成25年10月4日 判決 (第一審) / 平成25年(わ)第655号
被告人は、介護を要する多数の入居者や施設職員のいる老人ホームの建物に火炎びんを投げ入れるなどして放火したとして、現住建造物等放火、火炎びんの使用等の処罰に関する法律違反により起訴された事案において、犯行態様は大変危険で悪質なものであること、入居者や施設職員が厳しい処罰感情を抱いていること、動機について被告人への非難を弱める事情は見出せないことなどから、刑の執行を猶予すべき事案ではないとして、被告人を懲役5年の実刑に処した事例(裁判員裁判)。
2013.11.26
道路交通法違反、自動車運転過失致死傷被告事件
LEX/DB25502069 / 大阪高等裁判所 平成25年9月30日 判決 (控訴審) / 平成25年(う)第486号
未成年者である被告人が、無免許で7回にわたり普通乗用自動車を運転するとともに、京都府亀岡市の国道を走行中、いわゆる居眠り運転により集団登校中の小学生の列に突っ込み、保護者1名を含む3名を死亡させるとともに、7名に傷害を負わせたという道路交通法違反及び自動車運転過失致死傷により起訴され、原判決が被告人を懲役5年以上8年以下に処したことに対し、検察官及び被告人が各控訴した事案において、原判決は、被告人のために酌むべき事情をやや過大に評価する一方、犯情の悪さをやや過小に評価したものとして、軽きに失するというべきであるとして、原判決を破棄し、被告人を懲役5年以上9年以下に処した事例。
2013.11.26
各犯人隠避被告事件
LEX/DB25502072 / 大阪高等裁判所 平成25年9月25日 判決 (控訴審) / 平成24年(う)第784号
大阪地検特捜部長と特捜部副部長の検事であった被告人両名は、当時地裁で係属中の各虚偽有印公文書作成等被告事件の証拠である本件フロッピーディスクに記録された文書データを変造したことを部下から告白を受け、犯人である部下による本件改ざんした事実を、共謀の上、証拠隠滅罪の犯人を隠避させたとして、原判決が犯人隠避罪の成立を認め有罪判決を言い渡し、これに対し、被告人両名が、無罪を主張して控訴をした事案において、原判決に事実誤認はなく、法令適用の誤りもないとして、各控訴をいずれも棄却した事例。
2013.11.26
公務執行妨害、傷害被告事件
LEX/DB25502070 / 大阪地方裁判所 平成25年8月26日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第5372号
被告人は、警戒警備活動に従事していた警察官らに対し暴行を行い傷害を負わせたとして公務執行妨害及び傷害の罪で起訴された事案において、被告人が、各警察官に対して故意に暴行を加えたと認定することには、なお合理的な疑問の余地があるといわざるを得ないため、いずれの公訴事実についても犯罪の証明がないとして、被告人に無罪を言い渡した事例。
2013.11.26
道路交通法違反、自動車運転過失致死傷被告事件
LEX/DB25502068 / 京都地方裁判所 平成25年2月19日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第747号
未成年者である被告人が、無免許で7回にわたり普通乗用自動車を運転するとともに、京都府亀岡市の国道を走行中、いわゆる居眠り運転により集団登校中の小学生の列に突っ込み、保護者1名を含む3名を死亡させるとともに、7名に傷害を負わせたという道路交通法違反及び自動車運転過失致死傷の事案において、何の落ち度もない被害者を死傷させた結果は重大であり、過失の内容・程度は悪く、遺族や被害者は峻烈な処罰感情を有しており、被告人の責任は重いが、他方で、被告人は、反省・後悔し、捜査に協力していることなどを考慮し、被告人を懲役5年以上8年以下に処した事例。
2013.11.19
傷害致死被告事件
LEX/DB25445977 / 札幌地方裁判所 平成25年10月7日 判決 (第一審) / 平成24年(わ)第966号
被告人が、被告人方において、うつ伏せに倒れていたAの後頸部を手で押さえる暴行を加えて、同人の胸腹部及び顔面を床面に圧迫させ、同人を窒息により死亡させたとして、起訴された事案において、被告人が、Aが抵抗しなくなった後、相当の時間Aを押さえつけていたとは認められないから、急迫不正の侵害が止んでからも、被告人がAの後頸部を押さえ続けたという事実は認められず、被告人には正当防衛が成立するとして、被告人に対し無罪を言い渡した事例(裁判員裁判)。