2025年7月号Vol.139
【ユーザー事例3】行政評価と財務会計の相互連携で、持続可能な行政経営を目指す
行政評価 > 静岡県菊川市
企画財政部 企画政策課 企画係 係長 石川公朗 氏 / 主任主査 赤堀文洋 氏
- 住所
- 静岡県菊川市堀之内61番地
- 電話
- 0537-35-0900(企画政策課)
- 面積
- 94.19平方キロメートル
- 人口
- 46,961人(2025年3月末現在)

──行政評価への取り組み状況について教えてください。
赤堀 行政評価の体系としては、基本目標の下に「政策」「施策」「事務事業」の3段階があり、政策については部長級職員、施策については課長級職員、事務事業については係長級職員──が主体となって評価を行っています。まず事務事業評価を実施し、その結果に基づいて施策の評価を実施。さらに施策の評価結果に基づき政策の評価を実施するという流れになっています。
システムの導入については、2018年に実施した財務会計システムのプロポーザル時に合わせて、行政評価システムの導入も要件化しました。そして選定の結果、TKCシステムを採用しました。「TASKクラウド公会計システム」については19年度から、また「行政評価システム」は翌20年度から運用を開始しています。
──システム導入の目的は。
赤堀 大きく3点あります。
一つ目は、総合計画の実現に向け、進捗管理を図ることです。
二つ目は、職員の意識改革も含めて「計画重視」から「成果重視」への転換を図ることです。私たち行政の視点では、どちらかというと「何をしたか」というところに重きを置きがちです。しかしながら、ヒト(人口、職員)、モノ(使える施設)、カネ(使える予算)といった資源が減少していく中で、これら資源を効率的に活用して事業を展開し、住民の生活の質の向上を図っていく必要があります。そのためにも、「何をしたか」ではなく、「どのような成果を得たのか」という視点が重要になると考えています。
三つ目が、市民に対する説明責任の向上です。当市では政策、施策、事務事業の評価結果を全てホームページ上で公開しており、これにより行政事務の透明化とともに市民への説明責任の向上を図っています。
──システム導入の効果は。
石川 システム導入以前は、エクセルを駆使して評価シート等を作成していました。特に事務事業評価シートに記載する定量的な情報については、各課で個別に集計し、シートに転記していましたが、今では「公会計システム」と「行政評価システム」が連携し、自動的に予算額や決算額が転記されるため、事務負担の軽減が図れています。
赤堀 システム活用については、事務事業評価を例に挙げると、年度末から5月にかけて評価をしてもらい、システムに評価結果を入力してもらっています。並行して、5~6月に実行計画の入力も各課で実施しています。
実行計画の入力にあたっては、前年度の評価結果を基にシステムに入力し、7~8月にかけてヒアリングを実施。実行計画の査定結果を「公会計システム」の予算編成に連携しています。そして、年度末から事務事業評価を実施するという流れでPDCAを回しているイメージです(図表参照)。
石川 事務事業評価については、より精緻なコスト分析を実現するため、各事業に携わった時間を基に人件費を算出しています。具体的には、毎日退庁時に各職員が各事業に要した時間を記録し、最終的に1年間積み上げた結果を集計して、事業ごとの人件費を算出するといった形です。
この取り組みは、21年度に試行し、改善を加えた上で翌年度から本格実施していますが、ようやく浸透してきたかなという感覚です。
行政評価の意義、目的を再確認するため研修会を開催
──市の取り組みを進めていく上での課題は何でしょうか。
石川 各評価の実施にあたっては、記載要領を一斉配付し、それを基に前述のスケジュール感で実施してもらっています。
そのため、評価シートに記載される内容や粒度が作成者によって異なり統一感がないこと、また、一概には言いきれませんが、評価シートを作成すること自体が目的となってしまっている──など、「なぜ、行政評価を実施するのか」というそもそもの意義・目的が希薄になりつつあることが課題と捉えています。
赤堀 そこで、今年4月に事務事業評価をメインで担当する係長級職員110名を対象に「行政評価に関する研修会」を開催し、作成者の理解度の向上と行政評価の意義目的の再確認を実施しました。いずれは範囲を拡げ、施策評価や政策評価を実施する課長級、部長級職員を対象とした研修についても実施したいと考えています。

──今後の計画を教えてください。
石川 今年は『第2次菊川市総合計画』の最終年にあたり、26年度からはいよいよ『第3次菊川市総合計画』がスタートします。今まさに、9月議会へ基本構想の議案を提出していくスケジュール感で進めているところです。なお、新たな総合計画では、ウェルビーイングの視点での評価も実施していく考えです。より高い〝経営の視点〟を持ち、持続可能な行政運営の実現に向け、今後も取り組みを続けていきます。

左から、石川係長、赤堀主任主査
掲載:『新風』2025年7月号