2025年7月号Vol.139
【特集】先進団体に聞く成功の秘訣効果の出る「窓口DX」の進め方
いまや市区町村の3割以上にまで広がった「書かない窓口」。〈住民の利便性向上〉や〈業務の効率化〉など成果を上げる団体がある一方、部署や手続きの利用拡大に悩むところも少なくない。そこで、「フロントヤード改革」を見据え、着々と窓口DXを進める2団体に成功のコツを聞く。
『自治体フロントヤード改革推進手順書第1・0版』(2025年5月30日/総務省)によれば、市区町村の30・2%が「書かない窓口」を採用したそうだ。
数字上は順調に普及しているが、全体的に小規模団体では取り組みが遅れている傾向が見られる。また、すでに書かない窓口のサービスを開始した団体でも、対象が一部窓口にとどまっていたり、業務フローの見直しなどが不十分なケースもある。
国は、いま「自治体フロントヤード改革」を推進している。その意義は、デジタル化による〈住民との接点の多様化・充実化〉と〈窓口業務の効率化〉だ。そのため総務省が「自治体フロントヤード改革支援事業」を立ち上げ、先進モデルの創出と全国の自治体への横展開に取り組む。一例が鹿児島県瀬戸内町だ(詳細は、小誌10月号で紹介予定)。書かない窓口は、フロントヤード改革に向けた〝最初の一歩〟といえる。
さて本号では、さまざまな工夫で円滑に窓口DXを進める2団体を取り上げた。
神奈川県葉山町は、引越しワンストップサービスを機に導入した「書かない窓口」を全庁利用へと拡大した例だ。東京都狛江市は、当初から利用拡大を見据えた計画をたて市民課からスモールスタートした。推進スタイルは、それぞれとてもユニークだ。
いずれにも共通するのは、①トップの強いコミットメントがある、②DXの担い手である原課主体で取り組むことで、利用者視点(住民・職員)のアプローチをとる、③システムデモやロールプレイングなどを通じ、全庁的に従来の価値観や慣習を見直す意識改革を促進している──ことだ。これらがDXを停滞させない礎となっている。
ここで特筆すべきは、いずれも次のステップとして、自治体フロントヤード改革が掲げる〈手続きを原則オンライン化して、窓口での手続きを最小限とする〉〈フロント/バックヤード連携による人手を介さない業務フローの実現〉を志向していることだ。
また、外部機関やシステム提供会社を〝パートナー〟として有効活用し、DX推進の最大の課題である人材不足を補っている点も注目される。TKCでは、これまでもシステムを導入するだけでなくその後の円滑な運用支援に努めてきたが、今後はより強い関わりが求められることだろう。
『自治体DX推進計画』は今年度末に期限を迎えるが、これはゴールではない。
少子高齢・人口減少により行政資源の制約が進む一方で、住民の生活スタイルやニーズはますます多様化・複雑化していく。そうした中では、書かない窓口を一過性のブームで終わらせず、フロントヤード改革へと進化させ、「住民ニーズに沿った窓口の実現」と「職員の時間を生み出す業務改革」を果たすことが欠かせない。その挑戦は、これからもまだまだ続くのである。
掲載:『新風』2025年7月号