スマート行政DX推進を支援する

情報誌 「新風」(かぜ)

2025年7月号Vol.139

【CIOに聞く】変わることを恐れてはいけない

狛江市副市長 最高情報責任者 平林浩一 氏

ひらばやし・こういち 1959年生まれ、中央大法卒、82年狛江市役所に入庁。企画財政部政策室長、福祉保健部長、教育部長などを歴任後、19年4月から現職

ひらばやし・こういち
1959年生まれ、中央大法卒、82年狛江市役所に入庁。企画財政部政策室長、福祉保健部長、教育部長などを歴任後、19年4月から現職

 狛江市では、目的別に「庁内」「行政サービス」「地域社会」の三つの柱を掲げ、DXを推進している。中でも庁内のDXではデジタル技術を適切に活用し、業務改善・働き方改革を進める計画だ。
 業務改善には、前段として手続きの整理が欠かせない。これまでの〝当たり前〟をそのままデジタル化しても、無駄が生じるだけだ。まずは「残すべきものは何か」という視点で現状を見直そう。それ以外は全てなくしてもいい。
 市では、新型コロナの感染拡大への対応が一つの契機となった。この時、現金・現物の給付事業で「支給決定」の手続きを例規上全て外し、配布までの期間を短縮して迅速な市民の生活支援に取り組んだのだ。些細なことだが、マインドセットを変える上で価値のある出来事だったと感じている。
 DX推進は、あくまでも課題改善のための手段の一つにすぎない。重要なのは「これをやりたい」と目的を明確にすることだ。長々とした説明はいらない。市では誰もがイメージできるよう、ビジョンを 〝紙1枚〟でシンプルに示している。一例が、市民課のDX戦略目的「ブライダルサロン」だ。
 そのためには、さまざまなデジタル技術を活用して、これまでにないサービスの創出や新たな価値を創造することが求められる。
 デジタルデバイドなどDXとともに取り組むべき課題はあるが、一方でいまや多くの市民がSNSを日常的に利用している現状にも目を向けよう。YouTubeやnoteなど、情報の伝達手段はどんどん進化している。行政サービスでも、市民のニーズを先読みし、利用できるツールは積極的に活用していくべきだろう。
 例えば、LINEでコロナワクチン接種予約を受け付けた結果、現在、公式アカウントの登録者数は5万4000人超と全人口の7割近くに達している。この資産を生かし、粗大ゴミの予約や公園・道路の不具合の通報などを受けているが、今後はプッシュ型での情報提供にも活用していきたい。
 私自身、職員時代には目の前の困り事を解決するためにデジタル技術を大いに活用してきた。この経験から職員がやりたいことは積極的に応援する考えだ。そのため火曜日の午後は、「よろず相談」としてDXに関する職員の相談や悩みを聞く時間に充てている。職員と話すと、みんな真剣に考えていることが分かり、多くの気付きもある。上司が障壁となる例も見られるが、課題解決へ組織を挙げた取り組みとなるようリードしていただくことを望む。
 若い職員たちによく話すのは、「楽しよう」ということ。楽をするためには汗をかく努力も必要だ。その時には、他の職員やシステムベンダーを巻き込んで楽しく汗をかこう。動機は何でもいい。一人ひとりの力は微力でも、それをきっかけに必ず「業務改善・働き方改革」が進むと信じている。

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