スマート行政DX推進を支援する

情報誌 「新風」(かぜ)

2026年7月号Vol.143

【ユーザー事例2】住民に便利で、職員が働きやすい市役所へ

かんたん窓口+スマート申請 > 愛知県西尾市

総合政策部 情報政策課 主査 片桐大輔 氏

住所
愛知県西尾市寄住町下田22番地
電話
0563-56-2111(代)
面積
161.22平方キロメートル
人口
168,705人(2026年5月1日現在)
愛知県西尾市

──窓口改革について、現在の取り組み状況を教えてください。

片桐 西尾市では、『西尾市DX基本方針』(2026年4月改定)に基づき、今後、人員や財源などのリソース不足が見込まれる中でも持続可能な行政運営を実現するため、〈変革を前提としたデジタル化〉を推進しています。ここでは単なる行政手続きのデジタル化にとどまらず、業務プロセスや仕組みを抜本的に見直し、申請から手続き完了まで〝デジタル完結〟への完全転換を図っていく計画です。
 並行して、フロントヤード改革も進めています。具体的には、デジタル窓口の強化やAIチャットボットの活用により、〈行かない・書かない・待たない〉窓口の実現を目指します。また、デジタルに不慣れな方への対話型支援や申請補助により、〝誰一人取り残さない〟行政サービスを実現したいと考えています。その一環として取り組んだのが、「らくっと窓口」(かんたん窓口システム)です。行政手続きにかかる市民の負担を軽減し、よりシームレスな申請の実現を狙って、24年2月よりサービスを開始しました。

シームレスな手続きを実現

片桐 らくっと窓口は現在、市民課や保険年金課など本庁舎1・2階の窓口業務担当課に設置し、職員が聞き取りを行いながら申請情報を入力しています。これにより、手続きに不慣れな市民にも丁寧な聞き取りと手厚いサポートが可能となりました。
 また、例えば住民異動手続きの場合、システムに入力した申請情報は、住民票の交付申請や印鑑登録申請など関連手続きにも活用できます。その結果、市民の負担軽減に加えて、手続きの案内漏れの防止にもつながっています。
 申請時には、マイナンバーカードや運転免許証などから基本4情報を読み取るほか、今年3月からはガバメントクラウド上のデータ連携基盤を活用して、基幹業務システムの宛名情報のほかに、資格情報の反映にも対応できることが確認できました。今後、データ入力にかかる職員負担の軽減や、申請内容の正確性向上へ有効に活用していきたいと考えています。加えて、RPAツールを活用して、事務処理時間の削減にも取り組んでいます。

──運用上の課題はありますか。

片桐 らくっと窓口の導入で、トータルでは行政手続きにかかる時間短縮にはつながっていると思います。しかし、職員側では窓口対応の時間が増え、市民側でも①職員の聞き取り・入力に時間がかかる、②システム操作待ちで窓口が混雑する──など新たな〝不満〟も生じています。これを解決するため、25年10月から「事前申請連携機能」(スマート申請システムの申請情報をかんたん窓口システムに連携する機能)と、「来庁予約機能」の利用を開始しました。
 これに伴い、らくっと窓口の運用フローも一部見直しました。具体的には、通常申請と事前申請で異なる運用フローの混在を避けるため、事前申請と同様に通常申請でも窓口に用意した二次元コードを使用して転入・転出・転居を受け付けるようにしました。
 なお、窓口対応に時間がかかる一因として、手続きの案内漏れがないよう設問数が多くなっていることがあります。これについても、実務に即して内容を見直すなど効果的な方法を確立し、滞在時間の短縮や業務の平準化につなげていきたいと考えています。

利用促進・連携強化でDXを加速

──今後の計画を教えてください。

片桐 らくっと窓口は、市民課の業務からスモールスタートして、対象窓口の拡大や事前申請・来庁予約など段階的にサービスを進化させてきました。今後は対象業務のさらなる拡大と、庁内での利用浸透がポイントだと考えています。そこで、定例会や操作研修を通じて庁内に使い方を周知し、システム活用の定着を図ります。併せて「スマホ用電子証明書」対応も進めます。
 また、行政手続きのデジタル完結化にも引き続き取り組みます。特に重視しているのが〈行かない窓口〉で、その延長線上にはオンライン上の〝バーチャル市役所〟の実現も視野に入れています。窓口に来なくてもできる手続きはまだあることから、まずは手続きの種類を拡大していきたいと考えています。
 さらに、西尾市ではオンライン申請の入口としてLINEアプリを活用し、成人式のチェックインや道路損傷の通報などを受けています。こうした仕組みをうまく活用して、行政手続きのデジタル完結につなげられないか検討する予定です。
 その他、AI技術の利用拡大も計画しています。すでに利用中の市民向けAIチャットボットに加えて、窓口対応や案内業務、イベント作成支援などでの生成AIの活用を想定しています。これにより、職員数が減少する中でも行政サービスの維持・向上が可能になることを期待しています。
 加えて、データ連携基盤の活用にも積極的に取り組みます。現在、国はマイナンバー制度を軸に庁内外システムのデータ連携を進めようとしており、その動きも踏まえながら市民の利便性を一層高めていきたいと考えています。
 西尾市DX基本方針では、2040年に目指す理想像として、「市民にとって便利な市役所」「職員にとって働きやすい市役所」の実現を掲げています。これに向けてバックキャスティングを行い、着実に進めていきます。
 そのためにも、TKCには市民ニーズに応じた継続的な改善と誰にでも分かりやすいシステムへの進化、職員の一層の負担軽減につながる機能強化を期待しています。

左から、片桐主査、山口峻矢 主事/撮影場所:市役所前の「バラ色ポスト」

左から、片桐主査、山口峻矢 主事/撮影場所:市役所前の「バラ色ポスト」

導入システム