クラウド型固定資産システムでグループ会計・税務の共通基盤に

1963年に燃料販売事業で創業以来、自動車リース・メンテナンス事業をコアとしながら、業容を広げ続けるイチネングループ。最近では、M&Aを頻繁かつ有効に活用し、そのポテンシャルをより高めている。連結経営を実践する中で連結納税システム『eConsoliTax』に続き、このほどTKCの固定資産管理システム(FAM)を導入。村中正執行役員と益田憲生経理課課長に話を聞いた。
──TKCの固定資産管理システム(FAManager:FAM)導入の背景は?

村中正執行役員
村中 もともと他社の会計システムに付随する固定資産管理システムを使用していたのですが、保守切れとなり、後継機にも税制改正への対応などの面で不満がありました。それに加え、当社は近年M&Aによる拡大戦略をとっており、固定資産の増大に柔軟に対応する必要があります。そのため、新システムの導入を決断し、当時、TKCさんを含め、お付き合いのあったベンダー4社に提案をしていただいたのです。
──ところが、当時、TKCにはご要望に対応するシステムがありませんでした。
村中 そうなんです。TKCさんの開発予定だった新固定資産管理システムが、当社の本稼働希望時期に間に合わない可能性があり、迷惑はかけられないとのことで、当初、提案を断られました。そのため、一時は他社のシステムに決まりかけていました。しかし、本稼働時には当社に絶対に必要な機能を搭載し、その後、順次レベルアップしていく計画の提案があり、再度検討ということになりました。加えて、当社の事情に合わせた機能の搭載を期待できた点にも心が動きました
益田 一例をあげると、固定資産明細の登録やデータ連携と同時に、将来10カ年の減価償却費の発生費が分かる帳表が作成できるよう設計していただいたりもしました。いまでは管理会計上の資料として大いに役立っています。
──それ以前にTKCとは連結納税システム『eConsoliTax』の導入に実績がありました。
村中 その信頼感がベースにありました。また、クラウドシステムでサーバーメンテナンスが不要となり、遠方からも入力できるのでグループ会社にもスムーズに導入が可能だということ。クラウド運用できる提案はTKCさんだけだったと思います。また、会計・税務まわりのシステムの全取り替えも検討していたので、TKCさんの統合型会計情報システム『FX5』や連結会計システム『eCA-DRIVER』の存在も魅力的でした。というのも、会計まわりを同一メーカーで統一することで、グループの経理のつながりを強め、効率化がはかれると考えたのです。さらにいえば、TKCさんの営業マンの方々の真摯さでしょうか。導入作業中はパワーが必要ですからね。フォローをいただく「人」の善し悪しは大きく影響してきます。すでに、グループ会社16社のうち10社に導入。旧個別会計システムへの仕訳連携も問題なく行えましたし、順次『FX5』に入れ替えていますので、今後ますます親和性が高まると思います。
──導入後、仕組みがシンプルになったとか。具体的には?
益田 当グループはリース業が主業務なので自動車などのリースするために保有する資産(以下、販売資産)を大量に保有しています。専門的になりますが、以前は、販売システムで販売資産の「会計上」の減価償却を行うとともに、既存の固定資産管理システムで「税務上」の減価償却を行い、それらを超過不足計算システムにデータ連携して別表16(減価償却資産の償却額の計算に関する明細書)を作成。さらに、超過不足計算システムから固定資産管理システムに連携して償却資産データと機器リース管理システムから償却資産申告書を作成していました。
──FAM導入後は?
村中 販売システムからの会計上の減価償却費と機器リース管理システムからの償却資産内容をFAMに連携すると、自動的に超過不足計算が行われ、別表16や償却資産申告書が作成できるようになりました。販売システムから販売資産を毎月1万5000件程度読み込んでいる会社があり、読込時間に30分程度を要しています。一方で、通常利用する機能においては、グループでの総資産は8万件超を登録してますが、スピードは問題なく動作しています。
約700の市町村にワンクリックで電子申告
──税額計算や法人税申告書の作成も楽になったようですね。

益田憲生経理課課長
益田 四半期ごとに『eConsoliTax』を利用して税額計算を行っているのですが、これも以前の手入力から、FAMとのデータ連携になったことで手間が半減しました。
──償却資産税の電子申告の実践による効果も大きかったとか。
益田 従来は人事総務部と情報システム部が膨大な量の申告書(約4000枚)を紙で印刷し2週間かけてチェックした上で封入・発送を行っていました。それが、ちょうど当社の申告対象先の市町村すべて電子申告に対応したタイミングだったこともあり、延べ約700団体すべてに電子申告を行うことができました。手間や時間の削減はもちろん、発送代の節約にもなりました。
──今後はいかがでしょう。
村中 『FX5』は5社が導入済み。現在はもう7社への導入作業を進めており、今期中にはグループ全社への導入が完了する予定です。会計まわりのシステムを1社にそろえることで、まとまりをよくし、決算スピードをより速くという社内のニーズに対応していく体制をつくっていきます。また、『マネジメントレポート(MR)設計ツール』という便利な機能が『FX5』と『eCA-DRIVER』にありますので、これを使用して管理会計のための帳表が即座に作成できてすぐに分析に入れるようになりました。この機能をより生かしていきながら、経営に役立つ経理を目指したいですね。
“前へ、もっと、前へ”を力強く実践

常にチャレンジングな経営で、「前へ、もっと、前へ」とのスローガン通り、右肩上がりの前進を続けるイチネングループ(13期連続増益)。2015年3月期の売上高は717億円で前年比6%増。自動車リース・メンテナンス事業を主力にパーキング事業、ケミカル事業、空調工具事業などに順次業容を広げていき、2020年(創業90年)の目標である「売上高1000億円、営業利益100億円、自動車以外の各セグメントでグループ全体の営業利益の10%以上」へ向けて着々と歩を進めている。近年はM&Aを有効に使いながら、拡大路線を走っている。ここ数年を見てもイチネン前田およびイチネンネット(機械工具)、イチネンTASCO(空調工具)、ジコー(合成樹脂)、ミツトモ製作所(機械工具)をグループ会社化し、そのいずれもがシナジー効果を発揮してグループを活性化している。これは重厚長大産業のM&Aとしてはレアケースといえよう。
テレビCMをスタート
同社の強みは、自動車リース事業では、小規模法人にも柔軟に対応できる丁寧で現場密着型の営業活動。成長著しいパーキング事業では、コインパーキング『One Park』のほかに病院や官公庁、商業施設などの大型施設の駐車場にも注力し、自動車リース事業に劣らない実績をあげつつある。
昨年10月からはテレビCMをスタート。これは、機械工具、空調工具などDIY市場への進出により、一般コンシューマー向けの知名度を上げていこうという戦略である。さらに、グループ一体経営の進捗も強力に進めており、たとえば子会社の多くに名称に「イチネン」という冠をかぶせ、より一体感を創出し、知名度を高めようとしているのもその試みのひとつ。あるいは、本文中にある通り、会計・税務システムの刷新・統一も、グループ各社の親和性を高める施策である。
1963年に燃料販売事業で操業したイチネン。自動車関連事業をベースにしながらも、多角化への翼を広げ、今後も前進は続く。
名称 | 株式会社イチネンホールディングス |
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---|---|---|
所在地 | 大阪府大阪市淀川区西中島4-10-6 | |
売上高 | 717億円(連結 2015年3月期) | |
URL | http://www.ichinenhd.co.jp/ |
『戦略経営者』2016年1月号より転載
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