スピードと正確性が至上命題 目指すは申告業務の標準化!
愛知県豊橋市に本拠を置くサーラグループ。同グループで住宅事業を手がけているのがサーラ住宅だ。法人電子申告システム『ASP1000R』導入の経緯とその効果について、同社経営企画室の各務祐司マネージャーと管理部経理担当の浦野和隆マネージャー、同経理担当の竹内角栄氏、村上ゆみ氏に話を聞いた。

住み心地と健康守る家づくりを外断熱・二重通気工法で実現
――まず、事業の概要を教えてください。
各務 当社は木造軸組工法(在来の木造工法)による戸建専用住宅の請負・販売を行っています。ご家族の住まいへのこだわりを100%反映する請負事業(注文住宅)と建売住宅や土地を販売する分譲事業を手がけ、愛知・静岡・岐阜・三重の4県で年間500棟ほどの住宅を供給しています。両者の割合は請負が55%、分譲が45%です。
賃貸住宅や鉄骨、店舗、倉庫建設、マンション販売なども行っていますが、とにかく戸建専用住宅にこだわっています。理由は評価がリアルに跳ね返ってくるからです。お客さまに満足いただければ最高の喜びだし、お叱りをいただけば改善して、会社成長の糧になりますからね。
――サーラ住宅の「SALA」とは?
各務 「Space Art Living Amenity(生活空間をより美しく快適に)」という意味が込められています。もともとは中部ガスという豊橋や浜松で都市ガスを供給している会社が母体となって生活全般に関わる事業を展開するようになり「サーラグループ」を形成してきました。現在では42社、4500人が働く企業集団に成長していますが、そんななか1969年に住宅建設を担う企業として誕生したのが当社です。
――最近の経営環境はどうですか。
各務 厳しいですね。住宅着工数が年間80万戸を割る今の情勢は、多少の揺り戻しはあれ今後も続くと思います。そのためとにかく今は品質を落とさないまま原価を落とすべく、ビジネスパートナーと協力してコスト削減に取り組むとともに、より一層の地域密着営業を展開しているところです。
――事業の強みはどんなところにありますか。
各務 技術面ですね。外断熱・二重通気工法という独自の技術を強みに事業展開しています。簡単にいうと構造材の外側に断熱材を貼って断熱性と気密性を高める外断熱工法と、断熱材の外側だけでなく内側も空気が流れる二重通気工法をあわせた工法で、自然の空気の流れを利用した快適な住み心地を実現します。
この数年、外断熱工法を採用する企業は増えていますが、二重通気までやっているところは少ないと思います。他社が手がけない理由の一つにコストがあります。当社は20年以上にわたってこの地方に最も適した工法を模索し、質を落とさないコストダウンに取り組んできました。
――経営理念に「お客さま主義」「住み心地主義」「調和主義」の3つを掲げていますね。
各務 ええ。住み心地主義というのは1年を通じた住み心地と健康を守る家づくりにこだわり続けることで、それを実現するのが独自の外断熱・二重通気工法であるわけです。お客さま主義は、住宅完成後のアフターメンテナンスも含めお客さまのニーズにきめ細かく対応すること。調和主義は、街並みや自然と調和する理想の住まいを実現していくことです。
――宿泊体感型モデルハウスを導入しているそうですが、効果は?
各務 住み心地を実感していただくには実際に宿泊してもらうことが一番有効と考え現在3棟の宿泊体感ハウスを運営していますが、効果は大きいですね。ご満足いただいたお客さまの声がびんびん聞こえてきます。悩みは予約が多くて、すぐには宿泊してもらえないことです。
申告書の作成のみならず“教育ツール”でもOK
――さて、現在、経理部門は何人体制で運営しておられるのでしょう。
浦野 今は3人です。3人で日常の会計処理はもちろん、決算開示、有価証券報告書、決算短信作成まですべて手がけているので、業務はハードですね。
――サーラ住宅さんは2009年1月に『ASP1000R』を導入していますが、それ以前はどんなやり方で申告業務を行っていたのですか。
浦野 市販の申告ソフトを使っていました。申告書に直接入力していくイメージのソフトで、申告書の作り方を理解していないとなかなかうまく使えませんでした。結局、自己流に頼らざるを得なくなるので、業務の引き継ぎはもちろん、ジョブローテーションをするのも困難でした。
――つまり業務の標準化が難しいソフトであったと。
浦野 そうです。目指すところは標準化です。少ない人数でやっているので、業務のスピードと正確性は至上命題でした。それには業務の標準化が欠かせないのですが、それができないのが辛かったですね。
それに、以前のソフトは電子申告に対応していなかった。実は名古屋国税局から電子申告導入を促す案内が来て、国税局の方が当社に出向いてきたこともありました。当社の顧問税理士の岡本勉先生からも電子申告実施は社会的責務といわれ、これはやらざるを得ないと思っていました。ところが入口のソフトウェアが未対応であったため、その手段がなかったわけです。
――何がきっかけで『ASP1000R』の存在を知ったのでしょう。
浦野 たまたまグループの中核会社である中部ガスが『ASP1000R』を導入していて、ずいぶん便利になったという話を聞いていました。それにTKCのシステムは専門家の税理士、公認会計士に長年利用されてきた実績があると聞いて、それなら安心できると思いました。
――システムデモの印象はどうでしたか?
浦野 申告書作成業務の印象ががらっと変わりました。それまで使っていたソフトは別表の4、5など実際の申告書をイメージして入力しなければならなかったのに、とにかく業務プロセス通りに入力していけば申告書が完成してしまうわけですからね。カルチャーショックでした。
――申告業務は竹内さんと村上さんのお2人で担当しておられるそうですが、ワーキングシート方式の入力にはすぐ慣れましたか?
村上 私は従来のソフトを使ったことがなく『ASP1000R』が最初だったこともあり、慣れるのは早かったですね。手順にそってデータを入力すれば別表に自動的に連動する仕組みは、あとで検算するとこういうつながりだったのかというのがわかって、逆に勉強になりました。
竹内 申告書別表の作成はとにかく分かりにくいし難解です。職人の世界と同じで、長年その業務を担当してきたベテラン社員の技能に頼らざるを得ないわけですが、そうしたスキルはなかなか他者には伝わりません。その点、『ASP1000R』のようにシステムの入口が分かりやすく業務プロセスが明確であれば、教わる側が分かりやすいし、業務のスピードと正確性も増します。
――まったくのビギナーが申告業務を担当する場合でも、引き継ぎはスムーズにできそうですか。
竹内 その自信はあります。『ASP1000R』は単なる申告書作成ツールではなく、スタッフの“教育ツール”としても使えるのではないかと思っています。システムを通していろいろ学べますからね。
浦野 実際、システムを操作している間は関連する税法なども解説ボタンを押せばすぐに見ることができるので、以前のように横に専門書を置かなくても情報が入手できます。税法を知らない人の教育ツールとして最適です。私自身『ASP1000R』を利用して、初めて別表の正しい書き方を知りました。
作業時間を大幅に短縮した地方税申告書作成機能
――実際に利用されて、その効果のほどはいかがですか。
竹内 紙ベースの頃に比べると、作業時間が大幅に短縮されました。
浦野 なかでも便利になったのが地方税です。当社は各地に展示場などがあってカバーする市町村の数がけっこう多いのですが、従来は市町村ごとの税率を確認するだけでかなりの時間がかかっていたし、間違えて古い税率や別表のまま申告してしまったこともあります。それが今や必要事項を入力するだけで地方税はすべて自動計算されます。
村上 全国の都道府県だけでなく市町村にいたるまで地方税率が税率マスターとして搭載されていますからね。ほんとうに便利です。しかも自動で税率や均等割額を判定するし、法人税の計算結果とも連動しているので、ほとんど入力する必要がない。申告書が知らないうちにできてしまうというイメージです。
竹内 それとデータ入力時に数値や税法上の要件チェック、関連数値との整合性チェックなどを自動的に行う税法エキスパートチェック機能。正確な申告書をスピーディに作成するうえでこの機能も重宝しています。また入力データと計算結果をTKCのデータセンター(TISC)に保存できるのも大きいですね。お陰でデータが壊れたときの心配から解放されました。
浦野 電子申告も期待通りでした。一度の処理で国税と地方税の申告ができますからね。その意味、市町村には一刻も早く電子申告に対応してほしいですね。
――最後に、今後の税務業務の課題をお聞かせください。
浦野 グループ法人税制の創設など、世の中は連結により重きを置く方向に進んでいます。今後は会計制度の大きな変化とともに税務業務の中身も変わっていくはずです。当社としてそのときにどう対応するのか、連結納税への対応も含めて取り組んでいかねばならないと考えています。
名称 | サーラ住宅株式会社 |
---|---|
業種 | 住宅施工販売・土地販売等 |
代表者 | 水谷九郎 |
所在地 | 愛知県豊橋市白河町100 |
売上高 | 約151億円(09年10月期) |
社員数 | 244名(同) |
URL | http://www.sala-house.co.jp/ |
『戦略経営者』2010年12月号より転載
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