ユーザー事例

燦ホールディングス株式会社 様

連結経営を研ぎ澄ませ高付加価値サービスを展開

規制がなく監督官庁もない葬儀業界に、いま参入企業が急増している。競争激化、価格破壊的状況のなか、年間1万件を超える葬儀を施行している燦ホールディングス(公益社ほか5社の持ち株会社)の業績が堅調だ。同社の掲げる理念・戦略、さらには連結経営への取り組みについて、古内耕太郎社長、大井信三取締役、山本丈経理部資金課長に聞いた。

燦ホールディングス

伝統的な葬儀本来の機能に付加価値をつける

――葬儀業界の現状と、燦ホールディングスの立ち位置を教えて下さい。

古内耕太郎社長 高齢化や人間関係の希薄化など社会的変化が業界にも大きな影響を及ぼしつつあります。伝統的な日本の葬儀は、村、町など地域のリーダー的な人が仕切りながら、お寺や地域の人々が一体となって実施するスタイルでした。葬儀業者は、この枠組みのなかで、祭壇などの道具を貸し出すレンタル業に過ぎなかったのです。しかし、大都市圏を中心に従来型コミュニティーが機能しなくなり、業者は、直接遺族とやりとりをするサービス業への転換を余儀なくされています。そのような外部環境の劇的な変化のなかで、われわれもソリューション的なビジネスへの進化を志し、レンタル業からサービス業に転換するだけでなく、そこにソリューション機能を付加させるスタイルを構築してきました。

――近年、業績も堅調に推移しているようです。要因は?

古内 葬儀には変えてはいけない2つの役割があります。1つは、亡くなった方を尊厳あるかたちでお送りすること。2つ目は、残された遺族や故人とゆかりのある方々への心のケアです。まず、この2つの役割を保ちながらそこに付加価値をつけていく。そしてその上で、時代の変化にともなって葬儀そのもののスタイルを進化させる必要があります。たとえば、白木の祭壇よりも生花の祭壇、霊柩車も宮型から洋型へと変わってきました。つまり、変えるべきでない伝統や文化を大切にしながら、変えるべきところは毅然として変革していく、そんな姿勢が、当社が支持をいただけている最大の要因だと思います。

――葬儀の役割に付加価値をつけていく手段とは?

古内 たとえば、故人のお元気だったころの面影を取り戻すエンバーミング(遺体衛生保全)がそうです。欧米では亡くなった方の90%以上に施されているエンバーミングですが、日本ではいまだ数%にすぎません。当社は、故人の尊厳と遺族の精神的なケア、あるいは感染症の予防など衛生面からもエンバーミングを重視、全体の6割で選択していただいています。ただエンバーミングには高い技術が必要で、2年間にわたり専門知識の習得と実地研修のカリキュラムを受けてはじめて「エンバーマー」となることができます。ちなみに当社では現在17名のエンバーマーが活躍しています。

――「グリーフケア」も公益社の「付加価値」を象徴しているのでは。

古内 日本の葬儀文化には、お通夜、葬儀式、告別式、初七日法要、一周忌、三周忌と、遺族が少しずつ心を癒していくすばらしいシステムがあります。当社では、遺族の悲しみ(グリーフ)のケアを事業の根幹に位置づけ、葬儀の現場、あるいは葬儀のアフターケアの場において、遺族の悲嘆に寄り添ってきました。地域社会が遺族を支えることが困難な時代になり、葬儀社が地域社会の一員として遺族をサポートするニーズがますます高まっています。
 そこで、2003年に始めた取り組みが、公益社の遺族サポートの組織「ひだまりの会」です。遺族の方々が集まる月例会では、小グループに分かれて死別体験を語り合う「分かち合い」、あるいは、分科会として「臨床アロマセラピー」「アートセラピー」など遺族支援につながるさまざまな活動が行われています。

――エンバーミングもグリーフケアも「人材力」がポイントですね。

古内 エンバーマーだけではありません。当社の葬儀施行スタッフは厚労省認定の「葬祭ディレクター技能審査」合格者です。また、交通誘導員も正規の研修を受けた上で業務についています。“安かろう悪かろう”のサービスでは大切な方との最期のお別れをお手伝いすることはできません。われわれは知識と経験のある人材の力で、壊されつつある日本の葬儀文化を守りながら、葬儀スタイルを時代のニーズに合わせて進化させていきたいと思っています。

心強い『eCA』『eTE』のコンサルティング体制

――持ち株会社である燦ホールディングスの役割は?

古内 3つあります。まず、(1)グループ全体の不動産の運用管理、それから(2)グループ各社のシナジーを高めるための経営指導機能、さらには総務や人事などスタッフ部門を統一化して請け負う(3)シェアードサービス機能。TKCさんの『eCA-DRIVER』(eCA)も、(2)、(3)の機能を充実させるために活用させていただいてます。

――『eCA』導入の経緯は?

山本丈経理部資金課長 一昨年、基幹システムを変更する際、どうせなら連結会計部分も見直そうと検討を始めました。TKCさんを含め5社のプレゼンを受けましたが、当社くらいの規模にはほどよい機能と分かりやすい操作性だったこと、そしてなにより、会計の専門家であるシステムコンサルタント(辻井泰弘公認会計士・税理士)のサポートを受けられることが決め手となって『eCA』を選択しました。実際、分からないことがあると辻井先生にメールを入れればすぐに回答がもらえるので、導入はとてもスムーズでした。
 システムと会計の両方を理解している会計士さんによるサポートは、本当に安心感がありました。運用に入ってから、グループ内で組織再編があったのですが、その際も辻井先生に訪問サポートをしていただいた結果、無事乗り切ることができました。また、会計やシステム導入だけではなく、税制改正の案内など税務に関する目配りもしていただき、とても感謝しています。

――税効果会計システム『eTaxEffect』(eTE)も同時に導入されました。狙いは?

山本 従来から税額や税効果計算のプロセスを改善できないかという課題があり、『eCA』を提案いただいた際に『eTE』もついでに見せてよと……。
 以前は、税額は他社システム、税効果はスプレッドシートのテンプレートで計算していたので、数字が合わないこともしばしばでした。これを『eTE』によって統一できれば、かなりの効率化が期待できる。それと、税額・税効果計算は専門性が高く、どうしても属人化しがちで、経営上のリスクにつながります。このリスクを解消するためにも、『eCA』と『eTE』の同時導入を決断しました。

――導入後の具体的変化は?

山本 連結決算業務がトータルで1日~1.5日短縮されました。プロセスとしては、個別財務諸表や債権債務・取引高、『eTE』のデータなどをデータ連携をフル活用して『eCA』へ取り込みます。あとは、ボタンを押せば個別勘定から連結勘定への組み替え、債権債務、取引高の相殺や連結仕訳の計上を自動でやってくれますから、作業工数は大幅に減少しました。さらに、従来は決算時にしか連結決算の仕組みを回していなかったのですが、いまでは月次で『eCA』を動かして連結決算の数字を出せるようになっています。

監査や内部統制への対応にも大きな変化が……

――監査への対応も簡素化・効率化されたとか。

山本 監査法人用のID/権限を設定し、ご自身で直接見たい資料を見ることができるようにしたことで、とても便利になりました。これまでは、分厚い資料を打ち出して監査法人に渡していましたからね。大変な効率化です。それと、閲覧のみのIDを設定し、社内のチェックに活用しており、内部統制という意味でも役立っています。

――『eTE』については?

山本 豊富なレポート作成機能が監査時に役立っています。また、何といってもメニューが分かりやすい。スプレッドシートと違い、システムのなかにエラーチェックが働いているし、第1四半期から確実に税制改正に対応したシステムを提供していただけることも安心感につながっています。

――最後に、連結会計についての今後の課題を教えて下さい。

大井信三取締役 グループ連結の実績管理という点ではまだ満足できるレベルに達していません。連結経営に有用な情報を提供したいとは思っていますが、今一歩という感じでしょうか。グループの企業再編や企業買収、さらに今後、100%子会社だけでなく持ち分法適用会社や海外法人なども含めた連結会計が求められるかもしれない。そんな環境の変化に対応するために、柔軟で連続性を担保できる管理の仕組みが必要になってきます。その意味でも、『eCA』の利用範囲を拡げ「マネジメントレポート設計ツール」などの分析ツールの活用を推進したいと思っています。

会社概要
名称 燦ホールディングス株式会社
業種 葬祭業
代表者 古内耕太郎
所在地 (東京本社)東京都港区南青山1-1-1
(大阪本社)大阪市中央区道修町3-6-1
TEL (東京本社)03-5770-3301
(大阪本社)06-6208-3331
売上高 174億円(2011年3月期)
社員数 1454名
URL http://www.san-hd.co.jp/

『戦略経営者』2012年5月号より転載

掲載の内容、および当社製品の機能、サービス内容などは、2012年5月現在のものです。
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