注目の判例

行政法

2025.04.15
仮の差止めの申立て一部認容決定に対する抗告審の一部取消決定に対する許可抗告事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574110/最高裁判所第三小法廷 令和 7年 2月26日 決定(許可抗告審)/ 令和6年(行フ)第1号
関東運輸局長が、国土交通大臣から委任された権限により、特定地域及び準特定地域における一般乗用旅客自動車運送事業の適正化及び活性化に関する特別措置法(特措法)16条1項に基づき、本件交通圏におけるタクシー事業に係る旅客の運賃の範囲(本件公定幅運賃)を定め、いずれも同法3条の2第1項により準特定地域に指定されている東京都特別区、三鷹市及び武蔵野市の区域に営業所を有する、一般乗用旅客自動車運送事業(タクシー事業)を営む者である相手方らは、それぞれ、本件公定幅運賃の下限を下回る運賃を定めて、同法16条の4第1項による届出をしたところ、相手方R社及び相手方J社が、それぞれ、本件各不利益処分等の差止めを求める訴訟(本案訴訟)に係る差止めの訴えを提起し、併せて、本件各不利益処分等の仮の差止めを求める各申立てをし、第一審が、本件各不利益処分等のうち、運賃変更命令及び事業許可取消処分について、仮の差止めを命じたことから、抗告人・国が即時抗告し、抗告審が、事業許可取消処分に係る部分については、原審と異なり、理由がないとして、原決定を一部取り消し、上記取消部分に係る相手方らの申立てをいずれも却下し、その余の本件抗告をいずれも棄却したところ、抗告人が許可抗告をした事案で、本件公定幅運賃の下限の設定につき、公定幅運賃の変更の程度及び当該変更によるタクシー事業者への影響の程度を考慮していないことを理由として、本件変更が裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用した違法なものであると一応認められるとした抗告審の判断には、公定幅運賃の変更に係る裁量権に関する法令の解釈適用を誤った違法があるとして、原決定中、運賃の変更を命ずる処分に関する部分を破棄し、同部分につき原々決定を取り消し、相手方らの申立てを却下した事例(反対意見あり)。
2025.04.15
行政文書不開示決定取消等請求控訴事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年5月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25622103/大阪高等裁判所 令和 7年 1月30日 判決(控訴審)/令和5年(行コ)第118号
控訴人(原告)が、行政機関の保有する情報の公開に関する法律3条に基づき、財務大臣及び近畿財務局長に対し、学校法人Fに対する国有地の売却に関連する被疑事件の捜査について、財務省及び近畿財務局が東京地方検察庁又は大阪地方検察庁に対して任意提出した一切の文書及び準文書の開示請求をしたところ、財務大臣及び近畿財務局長から、当該行政文書の存否を答えるだけで同法5条4号所定の不開示情報を開示することになるとして、同法8条及び9条2項に基づき当該行政文書の存否を明らかにしないで不開示とする各決定を受けたため、控訴人が、被控訴人(被告)・国に対し、上記各決定の取消しを求め、原審が控訴人の請求をいずれも棄却したことから、控訴人が控訴した事案で、本件各請求対象文書が存在しているか否かを答えるだけで、不開示情報を開示することになるとはいえないし、本件各被疑事件における任意提出の範囲が明らかになることにより、将来の同種事犯のみならず犯罪一般の捜査等に支障を及ぼすおそれがあるものとも認められないところ、財務省及び近畿財務局が控訴人に対してした本件各不開示決定は違法であって、これらはいずれも取り消されるべきであるから、これと異なる原判決は相当でないとして、原判決を取り消したうえ、本件各不開示決定を取り消した事例。
2025.04.08
裁決取消請求事件 
LEX/DB25622008/東京高等裁判所 令和 7年 2月19日 判決(差戻第一審)/令和6年(行ケ)第4号
門司地方海難審判所は、原告が船長として操船するa丸とCが船長として操船するb丸とが衝突した本件事故につき、原告にはb丸の動静監視を十分に行うべき注意義務があり、これを怠った職務上の過失がある旨判断して、原告の小型船舶操縦士の業務を1か月停止し、Cを懲戒しない旨の裁決をしたところ、原告が、被告・海難審判所長に対し、本件裁決の取消しを求め、差戻前第1審が、b丸の速力、航跡及びa丸との衝突地点について本件裁決とは異なる事実を認定したものの、原告にはb丸の動静監視を十分に行うべき注意義務に違反する職務上の過失があり、また本件事故と原告の無灯火航行との間には因果関係がある旨判断して、原告の請求を棄却する旨の判決を言い渡したことから、原告が上告受理を申し立て、上告審が、上告を受理したうえで、差戻前第1審には職務上の過失に関する法令の解釈適用を誤った違法がある旨判断して、差戻前第1審判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻した事案で、〔1〕衝突時におけるb丸の速力は少なく見積もっても15ノット以上であり、〔2〕その航跡も、Cが証言するような右小回りではなく、原告が主張・供述するように、それよりも北側を右大回りしていたものであって、〔3〕これにより、a丸との衝突地点についても、原告が主張・供述するように、本件裁決の認定位置よりも更に北側であったものと認めるのが相当であるとしたうえで、Cはb丸の速力を少なくとも15ノット以上に保ったまま、泊船だまりに入航しようとし、もってa丸に衝突したものでもあって、本件事故に係る海難につき、Cに過失は認められないとするのは、困難であるものといわざるを得ず、一方、本件事故の発生につき、原告に職務上の過失があったとみることはできず、原告に職務上の過失があるとして小型船舶操縦士の業務を1か月停止するとした本件裁決は、その前提を欠き、取消しを免れないとして、原告の請求を認容した事例。
2025.04.01
特別地方交付税の額の決定取消請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年5月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
「新・判例解説Watch」憲法分野 令和7年5月中旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574103/最高裁判所第一小法廷 令和 7年 2月27日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第297号
上告人・泉佐野市が、総務大臣がした特別交付税の額の決定(本件各決定)について、令和元年度における市町村に係る特別交付税の額の算定方法の特例を定めた特別交付税に関する省令附則5条21項(令和2年総務省令第111号による改正前)及び同附則7条15項(令和2年総務省令第12号による改正前)は、いわゆるふるさと納税に係る収入が多額であることをもって特別交付税の額を減額するものであって、地方交付税法の委任の範囲を逸脱した違法なものとして無効であるなどと主張して、被上告人・国に対し、本件各決定の取消しを求め、第一審が上告人の請求をいずれも認容したところ、被上告人が控訴し、控訴審が、本件訴えは、行政主体としての上告人が、法規の適用の適正をめぐる一般公益の保護を目的として提起したものであって、自己の財産上の権利利益の保護救済を目的として提起したものと見ることはできないから、裁判所法3条1項にいう「法律上の争訟」には当たらないとして、原判決を取り消し、上告人の訴えをいずれも却下したことから、上告人が上告した事案で、特別交付税は、地方交付税の一種であり、交付されるべき具体的な額は、総務大臣がする決定によって定められるものである(地方交付税法4条2号、6条の2第1項、15条1項、2項、16条1項)から、特別交付税の交付の原因となる国と地方団体との間の法律関係は、上記決定によって発生する金銭の給付に係る具体的な債権債務関係であるということができ、地方団体が特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは、国と当該地方団体との間の具体的な権利義務ないし法律関係の存否に関する紛争に当たるというべきであり、また、特別交付税の額の決定は、地方交付税法及び特別交付税に関する省令に従ってされるべきものであるから、上記訴えは、法令の適用により終局的に解決することができるものといえ、以上によれば、地方団体が特別交付税の額の決定の取消しを求める訴えは、裁判所法3条1項にいう法律上の争訟に当たると解するのが相当であるとして、原判決を破棄し、本件を大阪高等裁判所に差し戻した事例。
2025.03.18
オンライン資格確認義務不存在確認等請求事件(第1事件、第2事件、第3事件) 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年4月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25574026/東京地方裁判所 令和 6年11月28日 判決(第一審)/令和5年(行ウ)第81号 他
保険医療機関及び保険医療養担当規則(療担規則)には、令和5年4月1日に施行された令和4年厚生労働省令第124号による改正の結果、健康保険法63条3項1号の厚生労働大臣の指定を受けた病院又は診療所は、患者が同法3条13項に規定する電子資格確認(オンライン資格確認)によって療養の給付を受ける資格があることの確認を求めた場合には、原則として、同資格があることをオンライン資格確認によって確認しなければならず(3条2項)、また、その資格があることの確認ができるよう、あらかじめ必要な体制を整備しなければならない(同条4項)旨の規定が設けられたところ、医師又は歯科医師である原告らが、本件改正療担規則3条2項及び4項は、健康保険法70条1項の委任の範囲を逸脱する違法なものであって無効であるなどと主張して、被告に対し、本件各規定に基づく上記のような確認義務及び体制整備義務を原告らが負わないことの確認を求めるとともに、国家賠償法1条1項に基づき、精神的苦痛に対する損害賠償金及び遅延損害金の支払をそれぞれ求めた事案で、本件各規定の適法性について、本件各規定は、健康保険法70条1項の委任の範囲を逸脱した違法なものということはできないものというべきであり、また、原告らの平成25年最判の射程に関する主張について、両事案は前提となる事実関係や性質が異なり、平成25年最判の上記説示部分が必ずしも本件にそのまま妥当するものではなく、さらに、オンライン資格確認の義務化が目的達成の手段として実質的関連性を欠くとはいえないから、オンライン資格確認の義務化によって原告らの憲法上の権利が違法に侵害されたということはできないなどとして、原告らの請求をいずれも棄却した事例。
2025.01.28
不作為違法確認等、国家賠償等請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和7年3月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573946/最高裁判所第二小法廷 令和 6年12月16日 判決(上告審)/令和5年(行ヒ)第430号
上告人らが、被上告人・国に対し、上告人らがSACO見舞金受諾書を提出しないことを理由に沖縄防衛局長がSACO見舞金の支払手続をとらなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと主張して、同項に基づき、上記損害金元金と上記慰謝料の差額に相当する額の損害賠償等を求めたところ、第一審が請求を一部却下し、その余を棄却したため、上告人らが控訴し、控訴審が控訴をいずれも棄却したことから、上告人らが上告した事案で、事実関係等によれば、上告人らと被上告人との間において、SACO見舞金を支給する旨の合意は成立していないというのであるから、上告人らはSACO見舞金の支給を受ける権利を有するものということはできず、また、他に、SACO見舞金の支給に関し、上告人らの権利又は法律上保護される利益が侵害されたというべき事情も見当たらないから、被上告人は、沖縄防衛局長が上告人らに対しSACO見舞金の支払手続をとらなかったことにつき、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償責任を負わないとしたうえで、以上と同旨の原審の判断は、正当として是認することができ、なお、その余の請求に関する上告については、上告受理申立ての理由が上告受理の決定において排除されたので、棄却することとするとして、本件上告を棄却した事例(意見あり)。
2024.12.03
損害金請求事件 
LEX/DB25621110/水戸地方裁判所下妻支部 令和 6年10月23日 判決(第一審)/令和4年(ワ)第200号
被告市議会の議員である原告らが、被告市議会からそれぞれ出席停止の懲罰(地方自治法135条1項3号)を受けたことについて、同懲罰を原告らに科したのは被告市議会の裁量権を逸脱するものであって違法な公権力の行使であるとして、国家賠償法1条による損害賠償請求権に基づき、被告に対し、それぞれ、慰謝料等の支払を求めた事案で、本件配布行為はそもそも懲罰事由に当たらないものというべきであるから、本件配布行為を懲罰事由とした本件懲罰1は国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであるとし、また、本件懲罰2の相当性を判断するに際しては前件懲罰において出席停止1日という処分がされたことを前提とすることは相当ではなく、議会における議員の発言の自由の重要性にかんがみると、議会の自律性を踏まえても、本件懲罰2において発言機会を奪う結果となる出席停止3日という処分としたことは重きに過ぎ、議会の裁量権を著しく逸脱した又はこれを濫用したものというべきであるから、本件懲罰2は国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであるとして、原告らの請求を一部認容し、なお、事案の性質にかんがみ、前件懲罰、本件懲罰1及び本件懲罰2においてはいずれも、議長の指名により懲罰動議を発議した議員のみによって懲罰特別委員会が構成され、前記各懲罰を行うことを求める委員会報告がなされ、前記各懲罰に至ったことが認められるところ、このような委員会の構成方法は、委員会へ付託し慎重な審理を求めた古河市議会会議規則162条の趣旨に反するのではないかとの疑問を禁じ得ないところである、と付言した事例。
2024.10.08
退職共済年金及び老齢厚生年金減額処分無効確認乃至取り消し等請求事件 
LEX/DB25573746/最高裁判所第二小法廷 令和 6年9月13日 判決 (上告審)/令和4年(行ヒ)第352号
被上告人(一審原告、控訴審控訴人)が、上告人(一審被告、控訴審被控訴人)・国らを相手に、特老厚年金の一部を支給停止とする処分を除く3個の処分の取消しを求めるとともに、上記支給停止に係る特退共年金の支払を求めるなどし、第一審が訴えのうち処分の取消請求に係る部分を却下し、その余の請求を棄却したことから、被上告人が控訴し、控訴審が、複数の適用事業所を有する法人内での異動等により適用事業所が変更になったが、引き続き同一法人内において継続して就労しており、給与に関する雇用条件が異ならないような場合には、本件規定1に規定する者及び本件規定2に規定する者と同視して、本件配慮措置の適用があるものと解するのが相当であるところ、本件は上記の場合に当たるから、被上告人の平成28年5月分以降の特老厚年金及び特退共年金に本件配慮措置を適用すべきであり、本件各処分は違法であるとして、その取消請求を認容するとともに、特退共年金の支払請求の一部を認容したところ、上告人・国が上告した事案で、被上告人は、平成28年4月1日、一元化法施行日の前から有していたB高校を適用事業所とする厚生年金保険の被保険者資格を喪失したというのであるから、これにより、本件規定1に規定する者及び本件規定2に規定する者に該当しなくなったものというべきであり、被上告人の同年5月分以降の特老厚年金及び特退共年金には本件配慮措置は適用されず、以上によれば、控訴審の上記判断には判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、被上告人の本件各処分の取消請求は理由がなく、また、特退共年金の支払請求のうち原審が認容した部分も理由がなく、これらはいずれも棄却すべきであるとして、原判決を変更した事例。
2024.09.24
出席停止処分差止め請求控訴事件、同附帯控訴事件 
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LEX/DB25620823/大阪高等裁判所  令和6年 8月28日 判決 (控訴審)/令和6年(行コ)第24号 他
市議会は、市議会議員である被控訴人(附帯控訴人・原告)の香芝市教育福祉委員会における発言が懲罰事由に当たるとして、被控訴人に対して陳謝の懲罰を科したが、被控訴人は、陳謝文の朗読を拒否したため、市議会は、その朗読拒否を懲罰事由として新たに被控訴人に陳謝の懲罰を科し、これに対し被控訴人が陳謝文の朗読を拒否し、市議会が更に被控訴人に陳謝の懲罰を科すということが繰り返され、市議会は、合計5回の陳謝の懲罰を被控訴人に科した後、5回目の陳謝の懲罰に係る陳謝文の朗読拒否を懲罰事由として、被控訴人に対し、4日間の出席停止の懲罰の処分をしたところ、被控訴人が、本件処分が違法であると主張して、控訴人(附帯被控訴人・被告)香芝市に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料及び弁護士費用並びに遅延損害金の支払を求め、原審が被控訴人の請求を一部認容し、その余の請求を棄却したところ、控訴人が控訴し、被控訴人が附帯控訴した事案で、本件処分が裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用したといえるかの評価をするうえで、本件処分に至る経緯の中でされた陳謝処分についての適法性、相当性の検討は避けられないというべきであって、本件処分は違法との評価を避けられないとし、また、本件処分の内容、程度等に鑑み、被控訴人が指摘する事情を踏まえても、被控訴人が被った議員としての責務に対する侵害、名誉、信頼の棄損等による精神的苦痛の慰謝料は30万円をもって相当と認めるとして、本件控訴及び附帯控訴をいずれも棄却した事例。
2024.08.27
損害賠償請求事件(国家賠償請求) 
LEX/DB25620432/東京地方裁判所  令和 6年 7月18日 判決 (第一審)/令和4年(ワ)第5542号
弁護士であった原告が、犯人隠避教唆の被疑者として検察官から受けた取調べに違法があり、精神的苦痛を受けたと主張して、被告・国に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償金等の支払を求めた事案で、本件取調べにおけるP4検察官の言動は、事案の内容・性質、嫌疑の程度及び取調べの必要性を考慮しても、社会通念上相当と認められる範囲を超えて、原告の人格権を侵害するものといわざるを得ず、国家賠償法1条1項の適用上違法というべきであり、これにより原告は相当の精神的苦痛を被ったといえるところ、原告の請求は、被告に対し、違法な本件取調べと相当因果関係を有する損害賠償を求める限度で理由があるとして、請求を一部認容した事例。
2024.08.13
公有水面埋立撤回処分に対し国土交通大臣がなした裁決の取消請求控訴事件
LEX/DB25620049/福岡高等裁判所那覇支部 令和 6年 5月15日 判決 (控訴審)/令和4年(行コ)第7号
沖縄防衛局は、沖縄県宜野湾市所在の普天間飛行場の代替施設を同県名護市内に所在する辺野古崎地区及びこれに隣接する本件埋立海域に設置するための公有水面の埋立てにつき、同県知事から公有水面埋立法42条1項の承認を受けていたが、事後に判明した事情等を理由として本件埋立承認を取り消す旨の処分(本件撤回処分)がされたことから、これを不服として国土交通大臣に対し行政不服審査法に基づく審査請求をしたところ、国土交通大臣は、本件撤回処分を取り消す旨の裁決をしたことから、本件埋立海域の周辺に居住する住民であると主張する控訴人(原告)らが、国土交通大臣の所属する被控訴人・国を相手方として、本件裁決の取消しを求め、原審が控訴人らの訴えをいずれも却下したため、控訴人らが控訴した事案で、控訴人らの主張するその余の観点から原告適格の有無について検討するまでもなく、控訴人らは、本件裁決の取消訴訟における原告適格を有するものということができるとし、控訴人らの本件訴えはいずれも適法であり、これを不適法として却下した原判決は取消しを免れないところ、本件訴訟の経過とその内容等に照らすと、本件については、原告適格に係る上記判断内容を踏まえて原審において更に弁論をする必要があると認められるとして、原判決を取り消し、本件を那覇地方裁判所に差し戻した事例。
2024.08.06
療養補償給付支給処分(不支給決定の変更決定)の取消、休業補償給付支給処分の取消請求事件 
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LEX/DB25573630/最高裁判所第一小法廷 令和 6年 7月 4日 判決 (上告審)/令和5年(行ヒ)第108号
被上告人・法人の支局に勤務していた上告補助参加人が精神疾患を発症したことについて、札幌中央労働基準監督署長が、労働者災害補償保険法に基づき、療養補償給付及び休業補償給付の各支給処分をしたことにつき、被上告人が、メリット制の適用を受ける特定事業主は、自らの事業について業務災害保険給付等に係る支給処分(業務災害支給処分)がされた場合、同処分の法的効果により労働保険の保険料の納付義務の範囲が増大して直接具体的な不利益を被るおそれがあり、同処分の取消しを求めるにつき、法律上の利益を有する者(行政事件訴訟法9条1項)に当たると主張して、本件各処分の取消しを求めたところ、差戻し前第一審が、被上告人は本件各処分の取消訴訟の原告適格を有しないから、本件訴えは不適法であるとしてこれをいずれも却下したため、被上告人が控訴し、差戻し前控訴審が、被上告人はその特定事業についてされた本件各処分の取消しを求める原告適格を有するとして、第一審判決を取り消し、本件を第一審に差し戻したことから、上告人・国が上告した事案で、特定事業の事業主は、上記労災支給処分の取消訴訟の原告適格を有しないというべきであるとしたうえで、特定事業の事業主は、自己に対する保険料認定処分についての不服申立て又はその取消訴訟において、当該保険料認定処分自体の違法事由として、客観的に支給要件を満たさない労災保険給付の額が基礎とされたことにより労働保険料が増額されたことを主張することができるから、上記事業主の手続保障に欠けるところはなく、以上と異なる原審の判断には、判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり、第1審判決は結論において正当であるとして、原判決を破棄し、被上告人の控訴を棄却した事例。
2024.08.06
賃料減額等請求事件 
LEX/DB25573601/最高裁判所第一小法廷 令和 6年 6月24日 判決 (上告審)/令和4年(受)第1744号
地方住宅供給公社法にいう地方住宅供給公社であり、神奈川県内において、多数の住宅を賃貸している被上告人は、上告人らに、それぞれ、一棟の建物の一室を賃貸し、おおむね3年ごとに、上告人らに対し、各室の家賃を改定する旨を通知していたところ、上告人らが、被上告人に対し、本件各家賃改定による家賃の変更のうち適正賃料を超える部分は効力を生じないなどと主張して、家賃の額の確認を求めるとともに、変更後の家賃を支払ってきたことを理由に不当利得返還請求権に基づいて過払家賃の返還等を求め、原審が、地方公社は、公社法24条の委任を受けた地方住宅供給公社法施行規則16条2項に基づき、その賃貸する住宅の家賃を変更することができ、同項は、借地借家法32条1項に対する特別の定めに当たるから、公社住宅の使用関係について、同項の適用はないなどとして、上告人らの請求を棄却したところ、上告人らが上告した事案で、公社法24条の趣旨は、その内容を国土交通省令に委ねることにあると解され、当該省令において、公社住宅の使用関係について、私法上の権利義務関係の変動を規律する借地借家法32条1項の適用を排除し、地方公社に対し、同項所定の賃料増減請求権とは別の家賃の変更に係る形成権を付与する旨の定めをすることが、公社法24条の委任の範囲に含まれるとは解されず、同項は、地方公社が公社住宅の家賃を変更し得る場合において、他の法令による基準のほかに従うべき補完的、加重的な基準を示したものに過ぎず、公社住宅の家賃について借地借家法32条1項の適用を排除し、地方公社に対して上記形成権を付与した規定ではないというべきであるから、公社住宅の使用関係については、借地借家法32条1項の適用があると解するのが相当であるとして、原判決を破棄し、本件を東京高等裁判所に差し戻した事例。
2024.06.04
法人税青色申告承認取消処分取消請求事件
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「新・判例解説Watch」租税法分野 令和6年7月下旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25573500/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 5月 7日 判決 (上告審)/令和5年(行ツ)第334号
上告代理人の上告理由のうち憲法31条違反をいう部分について、税務署長が上告人に対してした、上告人の平成30年7月1日から令和元年6月30日までの事業年度以後の法人税に係る青色申告の承認の取消処分(本件処分)につき、事前に防御の機会が与えられなかったことをもって、本件処分が違憲であるとの論旨で、法人税法127条1項の規定による青色申告の承認の取消処分については、その処分により制限を受ける権利利益の内容、性質等に照らし、その相手方に事前に防御の機会が与えられなかったからといって、憲法31条の法意に反するものとはいえないなどとして、本件上告を棄却した事例(反対意見、補足意見がある)。
2024.03.12
生活保護基準引下げ処分取消等請求控訴事件 
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LEX/DB25597542/名古屋高等裁判所 令和 5年11月30日 判決 (控訴審)/令和2年(行コ)第31号 
〔1〕原審第1事件原告らが、原判決別紙処分一覧表1の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁から、「処分の名宛人」欄記載の各原審第1事件原告を名宛人とする各保護変更決定処分(本件各処分1)は、憲法25条の理念を受けた生活保護法3条、8条等に違反し、生活扶助を健康で文化的な最低限度の生活を維持するに足りない水準とするものであるから違法であるなどと主張して、本件各処分1の取消しを求め(原審第1事件・取消訴訟)、〔2〕原審第2事件原告らが、原判決別紙処分一覧表2の「処分行政庁」欄記載の各処分行政庁から、「処分の名宛人」欄記載の各原審第2事件原告を名宛人とする各保護変更決定処分(本件各処分2)には本件各処分1と同様の違法事由があるなどと主張して、本件各処分2の取消しを求め(原審第2事件・取消訴訟)、さらに、〔3〕原審原告らが、本件各処分の根拠となった生活扶助基準の改定は、国家賠償法1条1項の適用上違法であるなどと主張して、被控訴人国に対し、それぞれ損害賠償金の支払等を求め、原審は、原審原告らの請求をいずれも棄却したため、控訴人ら(原審原告らの一部)が、これを不服として控訴した事案(なお、なお、控訴人13(原審第2事件原告)は、控訴状によれば、当審において、被控訴人国に対する損害賠償請求についての附帯請求の起算日を、原審における平成26年4月1日から平成25年8月1日に変更しており、当審において附帯請求の拡張をしたものと解される。)で、控訴人らの原審における請求はいずれも理由があり、これらを棄却した原判決は相当でなく、本件各控訴はいずれも理由があるから、原判決を取消し、控訴人らの上記請求をいずれも認容し、また、控訴人13の当審における拡張請求は、理由がないとして棄却した事例。
2024.02.20
出席停止処分差止め請求事件 
LEX/DB25596863/奈良地方裁判所 令和 6年 1月16日 判決 (第一審)/令和4年(行ウ)第14号 
香芝市議会は、市議会議員である原告の香芝市教育福祉委員会における発言が懲罰事由に当たるとして、原告に対して陳謝の懲罰を科したが、原告は、陳謝文の朗読を拒否した。市議会は、その朗読拒否を懲罰事由として新たに原告に陳謝の懲罰を科したが、原告が陳謝文の朗読を拒否し、市議会が更に原告に陳謝の懲罰を科すということが繰り返された。市議会は、合計5回の陳謝の懲罰を原告に科した後の令和4年12月5日、5回目の陳謝の懲罰に係る陳謝文の朗読拒否を懲罰事由として、原告に対し、4日間の出席停止の懲罰の処分をした。本件は、原告が、本件出席停止処分が違法であると主張して、被告(香芝市)に対し、国家賠償法1条1項に基づき、慰謝料等の支払を求めた事案で、陳謝の拒否を理由にした出席停止処分について、市議会が裁量権の範囲を逸脱し、または濫用したもので違法であるとして、請求額を減額した内容で一部認容した事例。
2024.02.13
裁決取消請求事件 
LEX/DB25573296/最高裁判所第三小法廷 令和 6年 1月30日 判決 (上告審)/令和5年(行ヒ)第2号 
上告人(原審原告)が、職務上の過失によって海難を発生させたとして門司地方海難審判所から裁決をもって小型船舶操縦士の業務を停止する懲戒を受けたため、被上告人(原審被告。海難審判所長)を相手に、裁決の取消しを求めたところ、原判決は本件裁決の取消請求を棄却したため、上告人が上告した事案で、原審は、上告人が、甲船が海上衝突予防法所定の灯火を表示し、乙船の動静を監視していれば衝突を回避することができたことを認定説示していないものといわざるを得ず、上記灯火を表示せずに甲船を進行させ、乙船を視認した後にその動静を十分に監視することなく甲船を左転させるなどした行為をもって、本件事故に係る海難につき上告人に職務上の過失があるものということはできないとして、原判決を破棄し、本件事故に係る海難が上告人の職務上の過失によって発生したものであるか否か等について更に審理を尽くさせるため、本件を原審に差し戻した事例。
2024.02.06
国家賠償請求事件 
LEX/DB25596682/東京地方裁判所 令和 5年12月27日 判決 (第一審)/令和3年(ワ)第23302号 
原告会社の代表取締役であったP1ら3名は、共謀の上、原告会社の業務に関し、外国為替及び外国貿易法の規制物件である噴霧乾燥器を経済産業大臣の許可を得ずに中華人民共和国及び大韓民国に輸出したとの外為法違反の容疑で、警視庁公安部の警察官及び東京地方検察庁所属の検察官により逮捕・勾留請求及び公訴提起されたが、その後、検察官により公訴が取り消された。本件は、原告らが、被告都及び被告国に対し、警視庁公安部の警察官による逮捕及び取調べ、並びに検察官による勾留請求及び公訴提起に違法があったなどと主張して、国家賠償法1条1項に基づき、連帯して、〔1〕原告会社について名誉及び信用毀損に係る損害等総額2億8005万9104円の損害賠償等の支払を、〔2〕原告P1について慰謝料等総額5325万円の損害賠償の支払等を、〔3〕原告P2(原告会社の取締役であった者)について慰謝料等総額5596万5000円の損害賠償の支払等を、〔4〕亡P10(原告会社の顧問であった者)の相続人である原告P3について慰謝料等の損害賠償金の相続分等7700万円の支払等を、〔5〕亡P10の相続人である原告P4及び原告P5についてそれぞれ慰謝料等の損害賠償金の相続分等4950万円の支払等を、それぞれ求めた事案で、警視庁公安部の逮捕前の任意聴取で、機器の設計担当者ら複数の従業員が、機器には殺菌に必要な温度に達しない箇所があると具体的に説明しており、その確認は「犯罪の成否を見極める上で、当然に必要な捜査だった」と指摘し、実験をしていれば殺菌できないことは容易に明らかになったにもかかわらず、実験をせずに逮捕したことは違法であると認め、また、地検の検察官も、起訴前に同様の報告を受けており、確認していれば要件に該当しないことは、容易に把握できたと指摘し、勾留請求や起訴が違法と認め、被告国と被告都に約1億6000万円の賠償を命じた事例。
2024.02.06
地方自治法第245条の8第3項の規定に基づく埋立地用途変更・設計概要変更承認命令請求事件 
「新・判例解説Watch」行政法分野 令和6年4月上旬頃解説記事の掲載を予定しております
LEX/DB25596603/福岡高等裁判所那覇支部 令和 5年12月20日 判決 (第一審)/令和5年(行ケ)第5号 
沖縄防衛局が、普天間飛行場の代替施設を名護市辺野古沿岸域に設置するための公有水面の埋立てに関し、公有水面埋立法42条3項において準用する同法13条ノ2第1項に基づき、埋立地の用途及び設計の概要に係る変更の承認の申請をしたところ、被告(沖縄県知事)が変更を承認しない旨の処分をし、原告(国土交通大臣)からこれを取り消す旨の裁決や本件変更申請に係る変更の承認をするよう是正の指示を受けた後も本件変更承認をしないことから、原告が、被告に対し、地方自治法245条の8第3項に基づき、本件変更申請を承認すべきことを命ずる旨の裁判を求めた事案で、法定受託事務である本件変更申請に係る沖縄県の事務についての被告の管理等は法令の規定に違反するものであり、地方自治法245条の8所定の代執行以外の方法によってその是正を図ることが困難であり、それを放置することにより著しく公益を害することが明らかであるから、本件訴えに係る原告の請求は理由があるとして、沖縄防衛局がした令和2年4月21日付け沖防第2056号による普天間飛行場代替施設建設事業に係る埋立地用途変更・設計概要変更承認申請につき、被告がこの判決の正本の送達を受けた日の翌日から起算して3日以内に承認することを命じた事例。
2024.01.30
損害賠償請求権行使請求控訴事件 
LEX/DB25596605/名古屋高等裁判所 令和 5年12月20日 判決 (控訴審)/令和5年(行コ)第33号 
愛知県の住民である控訴人が、国際芸術祭「あいちトリエンナーレ2019」に関し、県が要綱に基づいてあいちトリエンナーレのあり方検証委員会及び同検討委員会を設置したことは、地方自治法138条の4第3項に規定するいわゆる附属機関条例主義に違反するとともに、被控訴人の組織編成権に係る裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用したものであり、本件各委員会の委員に対する本件報償費等及び検証作業等に要した費用に係る支出負担行為等は違法であると主張して、県の執行機関である被控訴人を相手に、地方自治法242条の2第1項4号に基づき、〔1〕本件各支出当時の県知事であるA知事に対し、不法行為に基づく損害賠償請求を、〔2〕本件各支出の専決権者である本件職員に対し、地方自治法243条の2の2に基づく賠償命令をすることを求める住民訴訟で、原審が、本件訴えのうち一部却下、、一部棄却したため、控訴人がこれを不服として控訴した事案で、本件訴えのうち、原判決別紙検証費目録記載の「流用費目」欄の費目に係る「金額」欄の金員の支出、並びに原判決別紙報償費等目録記載の「報償費」欄及び「旅費」欄の金員のうち令和元年9月25日から同年11月26日までにされた支出負担行為及び支出命令について、Aに対し損害賠償請求を、Zに対し賠償命令をそれぞれ行うことを求める部分についてはこれを却下し、控訴人のその余の請求についてはこれらをいずれも棄却するのが相当であり、これと同旨の原判決は結論において正当であるとして、本件控訴を棄却した事例。