2022年10月号Vol.128

【トレンドビュー1】国税庁が取り組む預貯金等照会のオンライン化

国税庁 デジタル化・業務改革室 大柳久幸

税務行政のDX

 昨今、官民問わず日頃の業務の在り方をゼロベースで見直し、新たなビジネスモデルへの変革を目指す「デジタル・トランスフォーメーション(DX)」の取り組みが加速しています。
 国税庁においても、2021年6月に『税務行政のデジタル・トランスフォーメーション── 税務行政の将来像2・0』(*)を公表し、その中で、税務行政のDXによって〈デジタルを活用した、国税に関する手続や業務の在り方の抜本的な見直し〉を行うことを通じ、〈あらゆる税務手続が税務署に行かずにできる社会〉を目指すこと、〈データの活用により課税・徴収を効率化・高度化し、組織としてのパフォーマンスの最大化を目指す〉こととしています(図表1参照)。
 本稿では、課税・徴収の高度化・効率化および職員向けの職場環境改善に向けて国税庁が取り組んでいるデジタル活用施策の一つである、「預貯金等照会のオンライン化」の取り組みを紹介します。
 なお、この取り組みは、金融機関と行政機関の業務を効率化する観点からも、地方自治体をはじめとする多くの行政機関に参加いただくことが重要と考えています。今後より多くの機関が、オンライン照会サービスの導入に向け検討を進めていただけると幸いです。

図表1 ▶ 税務行政のデジタル・トランスフォーメーション

国税庁における
預貯金等照会のオンライン化

1.オンライン照会サービスの導入経緯

 税務調査や資産調査等を行う際、行政機関は、調査対象者の取引先である金融機関等に対し預貯金の残高等を照会する場合があります。18年度における内閣官房の調査(図2参照)によると、金融機関等に対する行政機関からの照会は年間約6000万件に達し、そのうち、国税庁からの照会が約1割と、単一の行政機関としては最大の照会件数となっていました。
 そして、こうした照会・回答は書面により行われており、行政機関および金融機関の双方に膨大なコスト負担や処理時間を要していたことが、預貯金等照会業務における最大の課題となっていました。
 このため、業務の効率化を図ることを目的に、従来の書面による方法よりも効果的・効率的なオンライン照会サービスの導入に向け、検討が開始されました。

図表2 ▶ 行政機関から金融機関に対する書面による預貯金等の年間照会・回答件数

2.国税当局における実証実験・全国展開

 オンライン照会サービスの導入による業務効率化の効果および事務フロー等の検証のため、20年10月~12月から、一部の国税局・税務署(30拠点)および4行の銀行を対象として、預貯金の照会・回答をオンラインで行う実証実験が行われました。
 その結果、金融機関における照会事績の管理簿の作成や回答書の郵送、データ入力作業等が大幅に削減されたほか、回答に要する平均日数が大幅に削減(11・3日→2・5日)されるなどの効果を確認することができました。
 この実証実験の結果を踏まえて、21年10月からは全国の国税局・税務署において、預貯金等の照会をオンラインで行うことができるオンライン照会サービス「pipitLINQ」(ピピットリンク/提供元:NTTデータ)の利用を開始したところです。
 なお、オンライン照会が可能な金融機関は、21年10月時点では27行でしたが、22年7月時点では48行と増えたほか、一部の銀行でオンラインでの照会可能期間が長くなるなど、各金融機関のご尽力により、さらに同サービスの利便性向上が進んでいるところです。

3.今後の予定

 オンライン照会サービスを拡大させる上で重要となってくるのが、未導入の行政機関および金融機関への利用勧奨です。これまでも機を捉えて利用拡大を図ってきましたが、今後は特に、行政機関全体の照会の7割程度を占める地方自治体への利用勧奨に注力していく予定としています。

*地方自治体をはじめとする多くの行政機関側でオンライン化が加速することにより、導入する金融機関側の数も比例して多くなることが見込まれます。

 将来的には、預貯金等だけではなく、行政機関が行う全ての照会業務をオンライン化することも検討されています。21年6月に閣議決定された『デジタル社会の実現に向けた重点計画』では、国税当局と地方自治体間における照会業務のオンライン化が掲げられており、双方の事務の効率化を図るため、26年度の実用化に向けて検討を進めています。

◇   ◇   ◇

 以上、国税庁における預貯金等照会のオンライン化の取り組みをご紹介しました。国税庁におきましては、引き続き税務行政のDXを強く推し進めていく予定としています。
 なお、本誌で紹介したほか、国税庁の取り組みについてさらに知りたい方は、国税庁企画課デジタル化・業務改革室までご連絡ください。

[連絡先]
国税庁
企画課 課長補佐 小林秀和
デジタル化・業務改革室 DX推進担当 知念利治
電話:03-3581-4161

*『税務行政のデジタル・トランスフォーメーション── 税務行政の将来像2.0』
  https://www.nta.go.jp/about/introduction/torikumi/digitaltransformation/index.htm

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