本社オフィス内で
石川県金沢市を拠点に建設現場の作業を幅広く請け負う太陽興産。2008年に就任した3代目の髙成年社長は、リーマンショックで落ち込んだ業績を右肩上がりに引き上げてきた。“みんなでハッピー”を標榜する同社の経営戦略と計数管理のあり方ついて、髙(たか)社長と税務顧問である山本兼三税理士事務所の吉田健一副所長に話を聞いた。
高い技術力と機動性で現場作業に幅広く対応
──創業は1984年だとか。
髙成年社長
──家業を継がれたきっかけは?
髙 私は国土交通省につとめる公務員でしたが、2004年の中越地震が大きな転機となりました。災害復旧に全力で取り組んだ結果、地元の人に感謝され、とてもやりがいを感じていたのですが、一方で「もうこれ以上はできない」という、燃え尽きたような感覚もありました。次に何をしようかと、ふと振り返ってみると、父の興した会社の業績があまりよくない。力になりたくて、後を継ぐことにしました。08年7月のことです。
──その後は?
髙 就任まではよかったのですがすぐにリーマンショックです(笑)。必死の営業活動でなんとか切り抜けると、スタッフたちの頑張りで、ほどなくV字回復へと転じ、数年前には過去最高の3億円の売り上げを計上しました。
──会社としての強みは?
髙 建設現場のあらゆる仕事を幅広く手掛けることができる技術力と機動性でしょうか。得意先は大手や地場のゼネコンなどで、主に民間工事のプロジェクトに入り込んでスーパーサブ的な役割を果たしています。そのため幅広い知識とノウハウが必要で、われわれは、建築・土木はもちろん、電気工事、設備工事関連、解体工事もこなす技術者集団だと自負しています。社員の資格取得も積極的に進めていて、1級・2級建築施工管理技士や1級・2級土木施工管理技士、2級建築士、第2種電気工事士といった有資格者が在籍しています。玉掛けや足場、高所作業車などでの仕事に必要な資格も、取得費用を会社が補助しながらその都度とらせています。
──人材確保対策は?
髙 社会貢献活動と人手不足対策の両面の効果を見込んで、法務省の「協力雇用主」に登録して、過去、罪を犯してしまった人に職場を提供しています。刑期を終えて出てきた人が、定職につけずに結局再犯をしてしまうケースは後を絶ちません。この悪循環を防ぐためには、働く場を提供して安定した生活を営んでもらう必要がある。法務省金沢保護監察所や更生保護施設と連携しながら、人材のあっせんを受けています。当社には寮もあるので、働く場所と住む場所が提供できます。現在、雇用形態はさまざまですが、20名ほどが在籍しており、微力ながら社会のお役に立てているのではと感じています。法務省から3度、感謝状をいただきました。
──新型コロナ感染症の影響はいかがですか。
髙 各現場で中止や延期になるケースが増えてきました。少し前までは「人手不足」でしたが、今は「仕事不足」の状況です。昨年の緊急事態宣言の時はそうでもなかったのですが、じわじわと影響が出はじめています。ここを乗り切るためにも、より緻密な計数管理が必要になってきていると考えています。
金沢大学改修・清掃作業(左)、マンションのコンクリート打設作業(中)、本社社屋(右)
TKCシステムフル活用で管理会計を忠実に実践
──計数管理のツールとして、戦略財務情報システム『FX2』を活用されておられるとか。
髙 父親の時代から、佐賀会計事務所(現在は山本兼三税理士事務所)にお世話になり、自計化システムである『FX2』を中心とした財務管理体制を整えてきました。月次巡回監査では、吉田(健一税理士)先生に来社いただき、さまざまな会計的なアドバイスをいただいています。
今回、このところの受注の減少から念のため、例の実質無利子・無担保のコロナ対策融資(ゼロゼロ融資)を受ける予定なのですが、吉田先生には親身に相談に乗っていただき、当面の資金繰りの心配がなくなりました。また、2年前に税務調査を受けた際には、山本会計事務所の山本兼三先生と吉田先生が常時立ち会いをしてくださって、とても心強かったです。
吉田健一税理士
吉田 太陽興産さんは、『FX2』だけでなく、戦略給与情報システム『PX2』、戦略販売・購買情報システム『SX2』など、TKCシステムをフル活用されています。『継続MASシステム』を利用した単年度計画(予算)の策定も実践されていますし、昨年10月には、インターネットを利用して金融機関の取引データを自動受信し、学習機能で仕訳を簡単に計上できる「銀行信販データ受信機能」、さらに翌11月にはスマホやタブレット端末で最新業績を確認できる「スマート業績管理機能」も導入されました。
──経営データをどのように生かされていますか。
髙 予算と実績の対比で売り上げや利益が減少していたり、経費が増加していたりすると、原因を追求して修正します。タイムリーで正確な数字を把握できるのからこそ、それが可能なのだと思います。
吉田 正確な原価管理はとくに重要です。太陽興産さんの「コスト」は業種がら、人件費の割合が高いので、外注費はもちろんですが現場スタッフやアルバイトなどの賃金も変動費(原価)として計上し、「変動損益計算書」による管理会計を忠実に実践しています。
髙 このようなご時世だからこそ、日々の緻密な業績管理は大事だと考えています。TKCの場合、日々の業績管理、予算の作成、給与計算、請求書発行、そして税理士先生のコンサルティングと会計サービスをワンストップで享受できるのがありがたいですね。
──「スマート業績管理機能」の使い勝手はいかがですか。
髙 とても便利だと思います。いつでもどこにいても売り上げ、利益はもちろん、予算実績対比の数値、決算の着地点あるいは、最新の預金残高や口座ごとの取引明細も確認できますから。
吉田 髙社長は計数管理能力の優れた方で、これまでは無借金経営を貫かれてきました。しかし、前述の通り、このほどコロナ対応融資を受けることになり、借入金やキャッシュフローの把握を今まで以上に徹底する必要があると考えておられます。その意味でも、スマート業績管理機能は髙社長のお役に立てる機能だし、さらに金融機関に電子決算データをオンラインで送信する「TKCモニタリング情報サービス」(『戦略経営者』2021年4月号P69参照)も、いずれ導入をお勧めしたいと思っています。
──今後はいかがでしょう。
髙 まずは安定した経営を維持したいですね。積極的に仕事を開拓しながら売り上げをつくっていきます。当社のモットーは「みんなでハッピー!」ですから。得意先、従業員とその家族、会社をハッピーにし、さらに社会的な貢献も行っていきたいと考えています。
吉田 太陽興産さんは、協力雇用主としての活動などを通して重要な社会貢献をされていますし、長く続く会社であってほしいと思っていますので、今後もできる限りのサポートをしていきたいです。
髙 現在は石川県だけでビジネスを行っていますが、富山県や福井県に拠点をつくって、商圏を広げていきたいとの思いもあります。コロナ以前に、この話は進みかけていたのですが、パンデミックによってで頓挫してしまいました。頑張って現状を切り抜けて、なんとかこれを実現したいですね。
(本誌・高根文隆)
名称 | 太陽興産株式会社 |
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創業 | 1984年2月 |
所在地 | 石川県金沢市駅西本町3-16-17 |
売上高 | 2億5,000万円 |
社員数 | 15名 |
URL | https://taiyo1984.co.jp/ |
顧問税理士 |
山本兼三税理士事務所
副所長 吉田健一 石川県金沢市諸江町中丁240 |