前列右から髙井信幸社長、髙井敏弘会長、酒井雅幸税理士
後列右から藤木正人上席調査役、水上伸介支店長、泉彰監査担当

前列右から髙井信幸社長、髙井敏弘会長、酒井雅幸税理士
後列右から藤木正人上席調査役、水上伸介支店長、泉彰監査担当

福井県でフルーツの加工・販売を手がける高井屋では早くから『FX2』を導入し、会計データにもとづく意思決定や経営戦略の策定を実践してきた。同社の取り組みの勘どころを髙井敏弘会長、髙井信幸社長を中心に、酒井雅幸顧問税理士、泉彰監査担当、福井信用金庫の水上伸介氏(松本支店長)、藤木正人氏(経営サポート部上席調査役)を交えて語ってもらった。

「地産地消」を志向した色とりどりのスイーツが好評

──1929年創業と長い業歴をお持ちですね。

髙井信幸社長(以下社長) 創業者は祖父(髙井清氏)で、行商として野菜や果物、魚介類を売り歩いていたのが当社のルーツです。その後、食品小売業を経て74年に果物の販売・卸売りに業種転換し、現在は冠婚葬祭用の盛カゴや詰め合わせ販売を中心に、スイーツの生産と販売、カフェの運営などフルーツに特化した事業を展開しています。

──取り扱っている果物のこだわりは?

店頭には厳選された果物がずらり

店頭には厳選された果物がずらり

社長 品質や安全性はもちろん、生産者の考え方や果物づくりに懸ける思いも大切にしています。例えば、当社がお世話になっているイチゴ農家の方は「甘くておいしいイチゴを食べてもらいたい」という思いから、実が完熟するまで育てて、食べごろを迎えたタイミングで収穫されているそうです。また、あるブルーベリー農家の方は無農薬での栽培を実践するなど、お客さまの安心と安全を第一に考えておられます。

髙井敏弘会長(以下会長) 当社がお付き合いしているのは、安全でおいしい果物づくりに全身全霊を注いでいる農家ばかり。その分、スーパーで買うより値段が少し高めですが、「高井屋さんのフルーツはいつ食べてもみずみずしくておいしい」とお客さまの評判も良好です。

──スイーツの販売にも力を入れておられます。

社長 業種転換して以来、冠婚葬祭用のお供え物や引き出物が売り上げの多くを占めていましたが、収益力の強化や販路を拡大するために、2007年にスイーツに特化したカフェ「スローベリィ」を鯖江市内にオープンしました。福井県産の新鮮な果物を使ったケーキやパフェ、ジュースなどバラエティーに富んだスイーツを堪能できるとあって、近隣住民はもちろん県外の観光客も多く訪れる地域の人気スポットです。

──看板商品は?

社長 イチゴやユズ、ブルーベリー、イチジクなど地元でとれた果物をふわふわの生地ではさんだ「ふわとろブッセ」は当店一押しの売れ筋商品です。新鮮なフルーツを甘さ控えめのクリームで包んでいるところが売りで、素材の風味を存分に味わえる一品に仕上がっています。

──20年12月にはJR福井駅の構内に「スローベリィプリズム福井店」をオープンされました。反響はいかがでしょう。

「スローベリィプリズム福井店」では季節の果物を使ったフルーツケーキサンドが売れ筋

「スローベリィプリズム福井店」では
季節の果物を使ったフルーツケーキサンドが売れ筋

社長 開店直後から県内のメディアやSNSなどで取り上げていただき、昨年の6月ごろまでは行列が絶えない状態が続きました。今は客足が落ち着きつつありますが、店頭の商品はいまだに即日完売になることが多く、なかでも季節の旬の果物を使ったフルーツケーキサンドは老若男女問わず多くのお客さまがお求めになります。

──ECショップでの売れ行きも好調でリピーターも増えているとか。

会長 われわれが日ごろから大切にしているのは“正直な商い”を通してお客さまの信頼に応えること。どれだけアイテムが充実していても、お客さまとの関係が円満でなければ売り上げにつながりませんからね。より多くのお客さまに新鮮な果物や洋菓子を味わってもらうためにも、顧客満足度の向上には余念がありません。なかでも、発送前の状態を写真に撮り、メールとともにお客さまに送る取り組みは「どんな状態で届くのかを前もって分かるのでありがたい」と好評です。また、午前中に注文いただいた商品は当日中に、正午以降に注文されたものでも翌日までに必ず発送するなど、迅速な配送も意識しています。

早くから『FX2』を導入しTKC方式の自計化を実践

──『FX2』を導入したきっかけを教えてください。

会長 税理士法人アイ・タックスさんとは先代である片岡道雄先生のころからのお付き合いで、『FX2』を導入したのも片岡先生の勧めです。法人成りした直後だったので90年代の初めごろでしょうか。ある日、先生から「折り入って話がある」と呼び出されたのです。到着するなりパソコンの画面を見せられ、「手書きの伝票は古い。これからはパソコンで経理をやる時代が来るぞ」と言われて……。当時は、会計ソフトはおろかパソコンすら普及していませんでしたが、信頼できる片岡先生からの提案だったので迷うことなく導入を決めました。

酒井税理士 高井屋さんは県内、特に嶺北地域では知らない人がいないほど確固たるブランドを確立しています。会長、社長ともに誠実で経営にも真摯(しんし)に取り組まれており、毎月の社員会議では《365日変動損益計算書》を参加者に配布し、会社の目標や戦略を議論されるなど会計を経営にしっかり生かしておられる印象です。

──部門別管理機能を活用されているとか。

会長 はい。当社では「本社工場」「松本本店」「スローベリィ」「スローベリィプリズム福井店」「製菓工房」の5つの部門を設けて、それぞれ損益管理を行っています。部門ごとの予実対比が一目で分かるので、状況に合わせた意思決定、戦略策定を素早く展開できています。また、当社の比較的新しい事業である「スローベリィプリズム福井店」と「製菓工房」を部門組でまとめ、新事業だけの採算も管理しています。ちなみに部門組機能は泉さんから紹介されて利用を始めました。

泉監査担当 会長から「新事業だけの業績を集約できないか」と相談があったので、すかさず部門組機能を紹介しました。高井屋さんはシステムの活用に積極的で、われわれからの提案も前向きに検討いただいています。

──注視されている帳表や指標は?

会長 先ほど酒井先生の話にもありましたが、《365日変動損益計算書》は日々の業績管理はもちろん、各部門の幹部社員が参加する月一の「データ会議」で配布し、目標と実績値をもとに今後の打ち手を議論しています。特に注目しているのが粗利益率の動向。売り上げももちろん大切ですが、外部環境に左右されやすく営業努力によってある程度数字をコントロールできる。その点、粗利益は材料の単価や仕入れの数量など細かいところにまで気を配らないと数字が上がりません。粗利益率が0.5~1%減るだけで会社全体に大きな打撃を与えてしまうので、幹部社員には粗利益率をいかにアップさせるかを意識するように伝えています。

迅速な業績開示で金融機関との連携が強固に

──「TKCモニタリング情報サービス」(MIS)で決算書と試算表データを提供されています。利用しての感想を聞かせてください。

松本本店社屋

松本本店社屋

社長 最新業績が福井信金さんに速やかに共有されるので、材料の仕入れ先や商品の販売先を紹介いただくなど当社の実態に合った提案を受ける機会が増えました。スローベリィプリズム福井店をオープンする際も「もっとおしゃれな容器を使った方がいいのでは」などきめ細かなアドバイスもいただけるようになり、お互いの関係がより密接になったと感じています。

水上支店長 高井屋さんでは四半期に一度、酒井先生、泉さんと当信金を交えた業績検討会を開催されています。MISを導入されてからは、われわれも事前に最新の業績を把握した上で議論に参加できるようになり、高井屋さんの現状に合った支援策を速やかに提案できるようになりました。

酒井税理士 高井屋さんは昔から金融機関との綿密な連携を意識しておられました。MISによって情報開示のスピードが向上し、両者の連携に弾みがついた印象です。

──福井信金ではまず決算書・試算表データを本部に集約し、各営業店にフィードバックされていると聞きました。本部ではどのようなメリットを実感されていますか。

藤木上席調査役 やはり融資審査をスピーディーに進められることでしょうか。特にMISで提供される業績資料は顧問税理士のお墨付きがあるので、信頼性も十分。本部では300~400の取引先から決算書・試算表データを受け付けており、データ受信後速やかに各支店と共有することで融資審査の効率化・迅速化が進んだように感じます。

──今後の抱負は?

社長 2年後には北陸新幹線が敦賀まで延伸する予定で、「福井の経済が盛り上がる」と県内企業の士気が上がっています。当社もこの流れに乗り遅れないよう商品のラインアップをいっそう充実させ、県外のマーケットを積極的に切り開いていきたいですね。

(本誌・中井修平)

会社概要
名称 株式会社高井屋
設立 1985年4月
所在地 福井県福井市松本3丁目21-1(松本本店)
売上高 2億9,000万円
社員数 33名(パート・アルバイト含む)
URL https://www.takaiya.com
顧問税理士 税理士法人アイ・タックス 福井事務所
代表税理士 酒井 雅幸
福井県福井市板垣5-901 板垣プラザ2F
URL: https://www.itax-no1.com

掲載:『戦略経営者』2022年3月号