社員数十名の中小企業ですが、社内報を発行する意義はありますか。また、どのようなことに留意して運営すれば良いか教えてください。(金属加工機械製造業)

 社内報というと大手企業が発行するものというイメージがありますが、むしろ中小企業こそオフィシャルなメディアとして経営に与える効果は大きいです。「全員の顔が見える規模だからコミュニケーションには問題なく、必要な情報は伝わっている」と考えがちですが、果たしてそうでしょうか。会社の経営理念・ビジョンは理解されているでしょうか。戦略課題に沿った社員による自発的な行動は引き起こされているでしょうか。

 コロナ禍となり、グループウエアや社内SNSなどツールの活用も促進され、社内コミュニケーションが格段と改善されたように錯覚してしまいますが、それだけでは自然発生的なコミュニケーションに委ねているにすぎません。

 もう一歩踏み込んで、計画的・意図的に情報を発信することで自社を成長に導くことができます。そして、その最適なツールこそ社内報なのです。

理念の共有を後押し

 社内報を戦略的に活用して自社を成長に導くには、次の3つの柱で企画を組み立てることがポイントです。

①経営理念・ビジョンへの理解・共感を高める
 会社が大切にする価値観や目指す方向性を明らかにすることは会社経営の基本です。しかし、経営理念・ビジョンは数回話しただけで全社員に浸透するものではありません。繰り返しメッセージを送ることで浸透を図るためにも、定期的に発行される社内報は有効なツールとなります。

②社内の人や組織を知る
 組織の関係性を深めるためには互いに相手を知ることが前提となります。メンバー間のコミュニケーションを活性化し成果に結びつけるためにも、周りのスタッフや組織に興味・関心を持つようなインタビュー企画などが効果的です。

③会社が抱えている課題の解決を目指す
 社内報は情報伝達手段以上の役割を担うことがあります。例えば、ある課題をテーマに社員間で対話してもらいたいと考えたとき、誌上座談会といった企画を設けることでそうした対話の機会を確保することができます。

 このように企画・制作された社内報も、社員に親しまれたものとならなければ効果はありません。そのために、発行主体を工夫することも重要です。例えば、部門横断のプロジェクト組織として社内報編集部を設けることで、「経営トップから発信されたもの」という印象を与えることなく、社員にとって身近な人たちが制作しているものと感じることができるでしょう。実際に新卒・中途入社2年目の社員を社内報編集担当に任命している会社もあります。

 社内報は冊子のほか、最近ではPCやスマートフォンで閲覧するウェブ社内報も広く活用されています。冊子の社内報は制作工程の負荷が高くなりがちですが仕上がりの特別感があり、誌面に登場したい、バックナンバーを取っておきたいと感じさせるなどのメリットがあります。ウェブの場合は社内報向けに開発されたCMS(コンテンツ・マネジメント・システム)を活用して効果的・効率的に運用することができます。それぞれのメリットを検討して効果的なツールを選択しましょう。

掲載:『戦略経営者』2023年1月号