全国会活動

国や社会からの期待に応え、企業の経営力強化を支援

中小企業の経営課題が多様化・複雑化する中、四つの分野の専門家である税理士がその専門性を発揮し、経営者の親身な相談相手として、支援活動へ積極的に取り組んでいくことを求められています。
私たちは、地域の金融機関や中小企業支援団体と協力し、中小企業の経営力強化を支援します。

社会から高まる税理士への期待

 1999年に抜本的に改正された中小企業基本法で示された「中小企業は、日本経済のダイナミズムの源泉である」との根本精神の下に、新たな法律や国の助成制度、金融支援など、多くの中小企業政策が実施されてきました。

 特にここ数年、国の中小企業政策は「会計の活用を通じて経営力の向上を図る」方向へかじが大きく切られており、これに伴い税務と会計の専門家である私たち税理士が担うべき役割が重要となってきています。

経営革新等支援機関(認定支援機関)として

 こうした中、2012年8月に「中小企業経営力強化支援法」が施行されました。この法律の目的は、①中小企業の経営力強化を図るため、中小企業に対する経営支援の担い手として、別途認定した金融機関、税理士・税理士法人等を「経営革新等支援機関」(認定支援機関)として公的な支援機関に位置付け、その活動を後押しする②中小企業の海外展開を促進するため、中小企業の海外子会社の資金調達を円滑化するための施策を講ずる──等とされています。

 TKC全国会は、こうした中小企業支援者としての税理士に対する期待に応えるため、TKC会員に対して認定支援機関への申請・登録を推奨し、その積極的な活動を支援しています。

 認定支援機関の登録数は、2018年4月26日現在で2万8,040機関(うち税理士・税理士法人等は2万3,512機関)となっています。そのうち、TKC会員の登録数は7,643機関で、税理士・税理士法人等の約33%を占めています。

経営改善計画策定支援の取り組み

 こうした税理士・税理士法人等の認定支援機関の大きな役割の一つが、中小企業の経営改善計画の策定支援です。

2017.6.23 TKC全国会理事会 藤原敬三中小企業再生支援全国本部顧問
「早期経営改善計画策定支援のねらい」より抜粋・加工

 国はこの認定支援機関の積極的な活動を促進するため、2013年3月に経営改善計画を自ら策定することが難しい中小企業・小規模事業者を対象として、認定支援機関に策定支援を依頼し、その費用の一部を国が負担する「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」を創設するなど、中小企業の経営改善を促進するための重点的な取り組みを行っています。(図「既存(405)」)

 一方、TKC全国会は、「中小企業の存続・発展の支援」を事業目的に掲げ、中小企業の経営改善に向けた積極的な運動を展開しています。また、全国で20のTKC地域会や支部が覚書を締結した地域金融機関と協働し、関与先企業の経営改善やモニタリング支援等も実践してきました。こうしたこれまでの運動を考えると、私たちTKC会員が経営改善計画の策定支援に取り組むことは必然であるといえます。

 そこで、2014年から2016年にかけ、「経営改善計画策定支援7000プロジェクト」を設置し、積極的な運動を展開しました。

 その結果、TKC会員による支援実績は、全国の実績の約4割を担うまで拡大し、認定支援機関による経営改善計画策定支援は中小企業に欠かせない取り組みであることが、社会に認知される契機になっています。2016年9月に中小企業基盤整備機構が発表した「平成27年度に認定支援機関が実施した中小企業再生支援業務に関する事業評価報告書」では、事業の成果の一因として「TKCの活動(7000プロジェクト)が起爆剤となり」と特筆されるなど、高い評価を得ることができました。

早期経営改善計画策定支援の取り組み

 認定支援機関の役割として新たに加わったのが、国が2017年5月に開始した、「早期経営改善計画策定支援事業」への対応です。当制度は、資金繰り管理や採算管理などの基本的な内容の経営改善の取り組みを必要とする中小企業や小規模事業者の支援を目的としています。(図「新設(プレ405)」)

 中小企業等は、認定支援機関の支援を受けて「ビジネスモデル俯瞰図」や「資金実績・計画表」等の早期の経営改善計画を策定し、金融機関(メイン行または準メイン行)へ提出することにより、今後の自己の経営を見直す機会とすることが期待されています。金融支援を前提としないため金融機関の同意が不要なことなど、従来の経営改善計画策定支援事業より一部条件を緩和しており、今後も多くの中小企業等による利用が見込まれます。

 経営改善計画策定支援のポイントは、中小企業の経営者と金融機関、顧問税理士の3者の対話を促し、お互いの信頼関係を構築することにあります。対話によって中小企業の経営課題が抽出されると共に、3者の相互理解が深まることも期待されます。

 TKC全国会では、中小企業の早期経営改善計画の策定支援をTKC会員の標準業務と捉え、積極的な運動を展開しています。

事業承継支援の取り組み

 中小企業や小規模事業者においては、経営者の急速な高年齢化が進んでおり、今後10年間に70歳を超える経営者が245万人に上る一方、その約半数にあたる127万人(日本企業全体の1/3)は後継者が未定であるといわれています。こうした状況を放置すると、中小企業等の廃業が急増して650万人の雇用と22兆円のGDPが失われる可能性が指摘されるなど、わが国の経済にとって事業承継問題は深刻な課題となっています。これは「中小企業の存続・発展の支援」を事業目的の一つに掲げるTKC全国会にとっても、大変重要かつ喫緊のテーマといえます。

 国は、こうした現状を踏まえ、2018年度税制改正で「特例事業承継税制」を創設し、2018年1月から10年間の時限措置として、施行日後5年以内に承継計画を作成して贈与・相続による事業承継を行う場合の特例を定めました。これは、非上場株式等の制限の撤廃や相続税の納税猶予割合の引き上げ(80%から100%)、雇用確保要件の実質撤廃など、非常に利用しやすい制度となっています。この特例を中小企業が受けるためには、認定支援機関の指導および助言を受けて「特例承継計画」を作成し、都道府県へ提出することが必要となります。

 そこで、中小企業の親身な相談相手である税理士は、認定支援機関として他の支援機関・専門家との連携も視野に入れつつ、事業承継支援の中心的存在になることが期待されています。

 TKC全国会は、中小企業の事業承継支援をTKC会員による中小企業支援の一つと位置づけ、積極的な運動を展開しています。

中小企業の円滑な資金調達に向けて会計を活用


出典:坂本孝司・加藤恵一郎
『中小企業金融における会計の役割』(中央経済社)

 右図は中小企業金融の相互関係をまとめたものです。この図にある“情報の非対称性”とは、融資の現場における貸し手(金融機関)と借り手(企業)との間の情報の格差を示しています。多くの金融機関では、企業の状況に関する情報が不足しており、金融機関は適切な融資判断ができていません。また、企業においてもこの格差は円滑な資金調達を妨げる要因の一つとなっています。

 これを解消する手段として会計の活用があります。TKC全国会第三代会長であった武田隆二博士は、会計が果たす役割について「財務諸表とは、企業の実像を数値で表現した一覧表であって、現にある企業の実像を『数と数との関係』として描き出したものである」*と指摘しています。つまり、会計の役割は「企業の実態把握」といえます。

*武田隆二『最新財務諸表論(第11版)』(中央経済社)

 私たちは、企業と金融機関の情報の非対称性を縮小し、相互の信頼を強固なものとするため、そして企業の実態を正確に示す役割を強化するため、これらの会計情報を利用して金融機関へ積極的に提示することを経営者にお勧めしています。


(『TKC全国会のすべて 2018年版』より転載)