寄稿

TKC会計人は、「会計で会社を強くする」王道を闊歩していこう

TKC全国会会長 粟飯原一雄

TKC全国会会長
粟飯原一雄

平成27年の新春を迎え、TKC会員並びに関連・提携機関、読者の皆さまに謹んで新年のお慶びを申し上げます。


 今年は、「TKC全国会創設50周年に向けての戦略目標」推進の第1ステージの2年目となります。その取り組みについては、1月のTKC全国会政策発表会で発表することとして、年頭の所感を述べさせていただきます。

5年続けて7割超が赤字決算企業

 昨年3月に国税庁が発表した「平成24年度分会社標本調査」によれば、法人数は252万5984社で、前年度に比べ4万4千社が減少し、欠損法人数は177万6253社にのぼり、その割合は70.3%にあたります。

 すなわち赤字決算法人が7割超の時代が、これで5年続いていることになります。

『2014年版中小企業白書』によれば、中小企業の数は、平成11年度に484万社であったものが、平成24年度には、385万社と13年間で100万社が減少しています。

 さらに深刻なのは、経営者の年齢が年々高齢化していることで、年齢階級別で見ると、20年前の平成初期は40代が中心でしたが、その後急速に高齢化が進み、平成24年度には70代が一番多く、これに60代が続いており、事業承継が円滑に進んでいない状況が顕著です。

 このような現状の中で、われわれ職業会計人にとって、中小企業の存続と発展を全力で支えること、すなわち「会計で会社を強くする」ことが支柱とすべき業務となっています。

「7000プロジェクト」(3月末期限)を全力で推進

「TKC全国会創設50周年に向けての戦略目標」の第1ステージに掲げた行動指針は、「会計指導力を強化し、企業の存続発展に貢献しよう」です。これは会計指導力を発揮して、「会計で会社を強くする」との趣旨です。

 TKC全国会が取り組んできた中小企業の存続発展を支援する諸活動の推進目的はこの点に尽きます。

 中でも「7000プロジェクト」は、金融機関への返済原資のみならず、新たな経営戦略を推進可能とするキャッシュ・フローの確保を目指しています。

 中小企業の「キャッシュ・フロー計算書」を見ると、赤字決算法人のみならず黒字決算法人でも資金不足で倒産予備軍と思えるような企業が散見されます。

 営業活動によってキャッシュ・フローがどれだけ確保できて、そこから借入金返済にどれだけ回せて、将来の成長戦略のためにはどれだけ使えるのかが、事業承継の成否にも関わる重要ポイントであり、税理士・税理士法人の多くが認定されている経営革新等支援機関の支援する経営改善計画作成の眼目ともいえます。

 国の予算があろうとなかろうと、この観点からの経営改善支援を、引き続き進めていかねばなりませんが、まずは直面する今年3月末を期限とする「7000プロジェクト」を全力で推進し、次につなげていきたいと思います。

会計指導力を発揮し、中小企業の存続・発展に貢献を

 19世紀のドイツが生んだ哲学者フリードリッヒ・ニーチェは「ニヒリズム」の思想家ともいわれています。『広辞苑』によれば「ニヒリズム」とは虚無主義であり、人間が拠って立つ根拠を消失してしまった状態ということです。

 ニーチェは「何処に向かっていけばいいかわからない。高い価値観を求めず、現状を肯定し、無難であることのみを求める生き方」としてさまざまに思想展開をしています。

 そこに高い価値観がありながら、それを求めようとせず、いたずらに現状を肯定するだけの生き方は、職業会計人の衰退、滅亡につながりかねません。

 TKC全国会が求めている高い価値観は、「会計で会社を強くする」ことであり、中小企業の存続と発展に貢献する次の3点に集約されます。

 ①中小企業の黒字決算への支援
 ②決算書の信頼性向上を図る支援
 ③企業の存続基盤を確かなものにする支援

 時代の大きな転換期にあって、多くの中小企業が赤字決算など疲弊した状況にある中で、職業会計人として自らの「事務所総合力」を高め、関与先企業に対して、会計指導力を存分に発揮することが、強く求められています。

 TKC会計人は、堂々と「会計で会社を強くする」王道を闊歩していこうではありませんか。


 本年もTKC会員の皆さまが関与先中小企業の存続と発展に、大いに貢献されますことを心からご祈念申し上げて、年頭のご挨拶といたします。

(会報『TKC』平成27年1月号より転載)