寄稿

「7000プロジェクト」を継続する

TKC全国会会長 粟飯原一雄

TKC全国会会長
粟飯原一雄

 経営改善計画策定支援事業「7000プロジェクト」は本年3月末日を期限とする活動として取り組んでまいりました。当プロジェクトの趣旨に賛同し、経営支援の担い手として実践された会員の皆さまには、心より敬意を表し、感謝申し上げる次第です。

 この1年弱の間に各地域会と支部において積極的な取り組みをしていただいた結果、金融機関をはじめ経営改善支援センター、信用保証協会及び行政機関にも本プロジェクトの名称と活動内容とが着実に浸透しつつあります。

 すでにご案内のように、国は当事業を2020年までの継続事業として実施することとなりました。この国の決定を受けて、TKC全国会は、急遽3月20日に臨時正副会長会を開催し協議した結果、中小企業の経営状態は依然として厳しい状況にあることに鑑みて、「7000プロジェクト」の名称を変えず、今後も継続して実践することを決定いたしました。

赤字企業だけが支援の対象ではない

 TKC会員にとっての経営改善計画策定支援事業の意義は、すでに様々な機会に述べているように「関与先企業の存続と発展」への支援にあります。そして中小企業経営力強化支援法が求めている中小企業経営者の「財務経営力の強化」と「資金調達力の強化」を推進する取り組みといえます。

 当事業の対象は赤字決算企業のみならず、黒字であっても「営業活動におけるキャッシュフロー」の視点で見れば決して健全であるとは思えない企業も対象となります。営業活動で生み出されたキャッシュフローが借入金の返済にほとんど回ってしまうようでは将来の発展はあり得ません。将来の成長戦略にどれだけ資金を回すことができるのか。企業の事業承継にも深く関係するこのような課題に対して、適切な指導・助言をすることが会計のプロの役割であり、経営革新等支援機関の役割であるといえます。

「事務所の強み」となるまで、粘り強く取り組もう

 各会員事務所の関与先企業における本事業の支援先のゾーンをProFITで確認できますが、売上げ規模3億円未満、債務償還年数10年以上の条件で絞ると、その数はTKC会員事務所全体で、約4万社程度と見込まれます。

 しかし3月中旬における経営改善計画策定支援事業の利用申請書の提出件数は、3200社超にとどまっています。実践事務所数については約1340事務所で、認定を受けている認定支援機関の会員事務所約6000件の2割程度という状況です。

 また実践事務所においても5割以上が実践件数1件です。せっかく実践経験をされたのですから、1件でとどまっていてはなりません。その経験を活かして「事務所の強み」とするまで継続して、他の関与先企業への支援にも広げていくべきでしょう。

所長の決断を望む

 飯塚毅初代会長は、『会計人の原点』(TKC出版)で次のように述べています。

「会計人は、決断と試行的先見の反復の中では生活していないのです。そこが、決定的に、一般の経営者と違うところです。会計事務所も勿論、一箇の経営体ですが、現代的な経営体といえる会計事務所は、いったい何%あるといえるのでしょう。多くは生業、あるいは、家業の規模ではないですか。町工場以下の規模なんですよ。そこが分かったら、一刻も早く自我意識を棄て去って、関与先中心に、祈りをもって、関与先の健全性、発展性に向かって全力投球すべきではないですか。」

「7000プロジェクト」は、関与先企業の存続と発展に絶対に欠かすことができない活動です。すべては所長の決断にかかっているといえます。TKC全国会は、今後とも実践事務所の拡大と実践事務所の取り組みを支援してまいります。

(会報『TKC』平成27年4月号より転載)