世界文化遺産にも登録された京都・上賀茂神社。その目と鼻の先に手芸糸を扱うアヴリルの本社がある。300種類を超える豊富な種類の糸を販売し、全国の手芸ファンにその名を知られている。売上高前年比10%増の経営を続ける福井雅己社長(57)に利益率向上の工夫などを聞いた。

デザイン性豊かな糸を「量り売り」で販売

アヴリル:福井雅巳社長(右から2番目)

アヴリル:福井雅巳社長(右から2番目)

――種類豊富な手芸糸を扱っているそうですね。

福井 種類としては300以上、色数としては2000以上をそろえています。綿、絹、麻、羊毛などの天然繊維が中心ですが、それにこだわっているわけではなく合成繊維を使った糸も扱っています。それらの糸を直営店で一般消費者向けに販売する以外にも、他の小売店やメーカーに卸すこともしています。また、ニット製品も扱っています。

――かわいらしいデザインの糸も多数取りそろえているとか。

福井 リボンやポンポンが付いた糸、くるくるループしている糸、リリヤーン状に編んだ超極太な糸など、いわゆるファンシーヤーン(意匠糸)も企画製作しています。それらは単に編み物の材料にするだけでなく、ラッピングの封を閉める紐として使ったり、シンプルな帽子にぐるぐる巻いてデコレーションするといった使い方もできます。

――現在の店舗数は。

福井 京都本店、三条店(京都・三条通り)、大丸心斎橋店(大阪)、吉祥寺店(東京)の4つです。
 一般的に手芸糸はボール状の玉巻きで売られていることが多いのですが、私たちの店舗では玉巻きする前のコーン巻きの状態で並べて、10グラム単位の「量り売り」をしています。つまり、必要な分だけ無駄なく購入できるわけです。
 また、好みに合わせて何種類かの糸を選んでもらい、それを1本の糸に撚り合わせるサービスをしていることも、私たちの直営店ならではの特徴の一つです。組み合わせ方次第で、違った表情の糸を作り出すことができます。

――そうした販売方法を取り入れたのはお客さんの要望からですか。

福井 ええ。以前、髪の毛に毛糸を編み込むエクステンションが流行していた頃には、美容室の人が「短い長さでいいから、たくさん種類が欲しい」といって来店されるケースがありましたし、今でも「ラッピング用にちょっと使いたい」とか「ウェルカムボードの飾り付けに使いたい」というお客様は割と多い。そうした需要に応えるためにも、グラム売りやメートル売りといった少量での販売は必要だと考えています。最近は、数メートル単位のファンシーヤーンを透明の小袋に入れて売ることも始めていて、デコレーションが目的のお客様にはこちらを勧めています。

――手芸に関する書籍を何冊も出版されているそうですね。

福井 それは、編み物の楽しさを少しでも多くの人に知ってもらいたい、という思いがあるからです。だから「糸あそび」のレベルから入っていける内容のものが多いですね。要は、「指編み」の類です。指編みでもいいからまずは手芸の世界に足を踏み入れてもらい、もっと欲が出てきたら棒針やかぎ針を用いたもう少し高度な編み物にチャレンジしてもらう。そんな流れが生まれることを願っています。

――オリジナルのキット商品も人気があると聞いています。

福井 髪留めやブレスレットとして用いられる「シュシュ」を指編みで簡単に作れるキット商品は、小学生の女の子にも人気があります。糸、ゴム、レシピが同封されていて、手芸がまったく初めてという方でもすぐに作れます。

――会社の生い立ちについて教えてください。

福井 ニット原糸の卸売業として個人創業したのが始まりです。それからすぐにニット製品も扱う会社としてアヴリルを設立。1992(平成4)年のことです。その後、ショップでの販売に力を入れていき、01年からはインターネット通販も始めました。09年には出版社としてISBN(国際標準図書番号)を取得し、出版業にも参入。とくにここ数年は、テレビなどのメディアに取り上げられる機会も増え、前年比10%増のペースで売上高を伸ばしています。

部門別業績管理により4部門の限界利益を把握

――業績管理には『FX2』を活用されているそうですが、導入の経緯を教えてください。

福井 導入したのは00年9月。当時、いろいろな業者から財務ソフトの売り込みがありましたが、最終的に選んだのが『FX2』でした。『FX2』なら操作方法をはじめ、経営判断に関することなどを会計事務所に気軽に質問できます。「これどうするの、あれどうするの」となったときに、スムーズに教えてもらえなければ仕事が滞ってしまう。それを避けるためにも、やはり『FX2』だったのです。

――部門別管理はされていますか。

福井 (1)本店(2)通販(3)支店(4)得意先(卸)の4部門にわけて行っています。事業部門ごとに業績管理をしているというイメージですね。各部門の売上高や限界利益などをリアルタイムで把握できるため、より適切な経営のかじ取りが行えます。ちなみにここ数年、インターネット通販事業は順調に伸びていて、全国の手芸愛好者から注文があります。

――会社全体あるいは各部門の利益率を高めるための工夫といえば何ですか。

福井 とにかく「付加価値の高い経営」を目指しています。たとえば、シュシュやマフラーのキット商品の販売などがそう。もちろん袋代やレシピ代、糸を巻き付けるペラコーン代などがいりますが、たんに糸を単体で売っていくよりも付加価値の高い商売が展開しやすい。
 食品スーパーやコンビニで1人用のサラダセットを見かけたことがあると思いますが、私たちのキット商品もそれと一緒。キャベツ1玉ではいくら安くても、ひとり暮らしの人はなかなか手を出しにくい。「どうせあまらせてしまうのなら、少しぐらい割高でもサラダセットを買う」というお客さんは結構います。私が思い浮かべているのは、そんなイメージですね。

――となると、商品企画の立案と実行が重要になってきます。その辺りはトップダウンで?

福井 いや、私はタネをまくだけです。それを育てるのはスタッフ。そして、花を咲かせるのはお客様。たとえばゆび編みを積極的に提案するようになったのは、私が売り場での接客中にふとしたことからゆび編みの楽しさをお客様に教えたところ、興味を持ってくれたという話をスタッフにしたのがきっかけ。そうしたらスタッフが「ゆび編みでこんなのできますよ」と次々にアイデアを出してくるようになり、それがまたお客様に評価されて、「どうせなら本にしよう」という話へとつながっていきました。つまりアヴリルには、現場から吸い上げたお客様の声を商品開発やサービス向上のために簡単に生かせる社内体制があるのです。営業会議をするわけでもなければ、重役会議での承認も必要ない。お客様に喜んでもらえると判断すれば、即実行が可能なのです。

「会社業績の問い合わせ」で前年対比をチェックする

――業績管理をしていくうえで特に注目している数字は何ですか。

福井 月次決算後に出てくる前年比の数字が一番気になります。主に《全社業績の問い合せ》の画面をもとに、前年と比べて売上高や経常利益がどうだったかを見ていきます。売上高が昨年よりも上がっているにもかかわらず、経常利益が減っているようなら、その原因がどこにあるかをすぐに調べて問題解決にあたるようにしています。

――予算対比についてはいかがでしょうか。

福井 それも気になるところです。『継続MAS』で策定した5カ年の経営計画に基づいて単年度計画を作り、それを『FX2』に月別登録するかたちで予実管理を行っています。目標に対する達成度合いが数字で正しく判断できるわけですから、やはり注視せざるを得ません。

北脇哲雄顧問税理士 福井社長は年に何度か会計事務所にまで来てくれて、予算の話や今後の話などをされます。『FX2』の各種帳表を元にしてさまざまな検討をします。

福井 この先、人や機械を増やそうと思っているけどどうしよう、といった相談に乗ってもらえる存在があることは大きい。税務だけでなく経営のコンサルタントとして頼りにさせてもらっています。

――最後に将来展望について一言お願いします。

福井 手作りの編み物を通じて学べることはたくさんあると思う。それを世の中に伝えていくことが、私たちの社会的使命ではないかと考えています。定期的に開催する体験教室などを通じて、手芸の楽しさをできるだけ大勢の人々に紹介していきたいものです。

(本誌・吉田茂司)

会社概要
名称 株式会社アヴリル
業種 手芸糸、ニット製品の販売
代表者 福井雅己
設立 1992(平成4)年4月
所在地 京都府京都市北区上賀茂朝露ケ原町26番地
TEL 075-702-9406
売上高 約3億円
社員数 40名(パート含む)
URL http://www.avril-kyoto.com/

CONSULTANT´S EYE
時代を先取りする経営をTKCシステムを通じて支援
監査担当 脇坂典宏
北脇七生税理士事務所
京都市左京区鹿ケ谷法然院西町39-2 電話075-771-8368
URL:http://www.tkcnf.com/kitawaki/

 アヴリル様が、平成4年に創業した当時から担当させていただいています。ニット原糸の卸業として会社を設立された当初は、規模もそれほど大きくなかったため、それに見合った財務管理体制でした。しかしその後、売上高が順調に伸び、会社の規模が大きくなるに伴い、請求書の発行業務が手書きでは対応が厳しくなってきたため、まずは『戦略販売・購買情報システム(SX2)』を導入。その後も、経理業務がだんだん煩雑化してきたことから『FX2』を導入し、仕訳連動機能も活用するようになりました。

 平成13年、現在の上賀茂に本店を移転された頃には、手芸糸とニット製品の製造小売をメーンにする会社へと変貌を遂げました。支店として大阪の大丸心斎橋店・京都の藤井大丸・神奈川のビブレ新百合丘へ出店。さらに本店では、手芸糸の通販を始められました。数字がタイムリーに正確に把握できるように部門別業績管理体制を整えたのは、まさにその頃です。タイムリーな業績管理には、翌月の巡回監査は不可欠。月初の監査を現在も続けています。

 アヴリル様は、常に時代を先取り先手をいく経営戦略を実行されており、比較的早い時期からホームページを開設され、情報を発信してこられました。また、他社にはまねができない「糸の量り売り」など、販売面においてさまざまな工夫をされています。糸の専門メーカーとして、糸あそびの面白さと糸の魅力を世界に向けて発信したいと日々頑張っておられます。

 ちなみに売上高は毎年前年比10%超を達成されています。直営の各支店からお客様の声を吸い上げ、いち早くニーズに応える販売手法などが奏功した結果と言えるでしょう。2年前からは『継続MAS』を活用して、予算実績差異分析を始めています。今後もTKCシステムをフル活用して、アヴリル様のさらなる発展のお手伝いができるよう尽力していきたいと思います。

掲載:『戦略経営者』2011年8月号