在宅勤務制度の導入を検討しています。どのようなことに留意して準備を進めればよいでしょうか。(受託開発ソフトウエア業)

 最近大手企業だけでなく、中堅・中小企業の経営者の方の在宅勤務への関心が高まっています。理由は、(1)社員の生産性向上(2)育児や介護のための離職防止(3)優秀な社員の確保(4)オフィスコスト削減(5)BCP(災害時の事業継続計画)や節電対策、などです。ここでは在宅勤務導入のポイントをご紹介しますが、まず図表1(『戦略経営者』2012年5月号32頁)を見てください。労務管理をどのようにするのか、働く環境、情報通信システムをどのようにするのか、という三つの要件を検討する必要があります。

【1】労務管理

 労務管理については、労働時間管理および評価制度をどのようにするか考える必要があります。まず労働時間管理ですが、ほとんどの場合、現状適用している時間管理の方法をそのまま適用できるでしょう。始業・終業時間が決まっているのであれば、その時間通りに働いてもらうことが可能で、フレックスタイム制や裁量労働制も在宅時に適用できます。厚生労働省の在宅勤務ガイドラインでは、在宅勤務時に事業場外みなし労働制を適用することも可能としています。しかしいずれの場合も原則として業務開始時と終業時に、メールや電話で連絡してもらうことが必要です。残業管理上の必要もありますが、労災や健康管理の面から把握する必要があるためです。

 人事評価制度ですが、これも週に1、2日程度の在宅勤務の場合は、通常の評価制度を適用できます。日本の企業で現在導入されているほとんどは週に1、2日程度の部分在宅勤務制度です。

【2】執務環境

 在宅勤務時の執務環境についても留意が必要です。通常整備すべきものは、パソコンや電話のほかに、専用の机、椅子、照明設備、空調設備です。パソコンディスプレーに向かっての執務が多くなるので、疲労を軽減するよう、採光やグレア(まぶしさ)防止、騒音防止にも配慮が必要です。またあくまでも仕事中であることを家族に理解してもらい、原則として執務中は小さなお子さんは保育園に預けることが望まれます。

【3】情報通信システム

 在宅勤務時のICT環境整備にはいくつかの方法があります。(1)PCとVPN(Virtual Private Network)システムを利用する方法(2)ハードディスクのないシンクライアントPCシステムを利用する方法(3)PCに認証用USBキーを差して、仮想シンクライアント環境を構築する方法などです。(3)の方法はイニシャルコストが低額ですし、自宅の個人用PCを利用することも可能です。また導入時の設定も簡易で、短期間で導入できます。このようなシステムは、数社から出されています。

 在宅勤務時のICT環境に求められるのは、情報通信機器がオフィスにいる場合と同じ環境であることと、セキュリティーを確保することですが、在宅勤務用の会議システムを検討してみるのもよいでしょう。電話・テレビ会議システム、Web会議システムなどがあれば、在宅勤務時であっても会議に参加することが可能です。

 在宅勤務制度導入にあたっては、厚生労働省の委託事業であるテレワーク相談センター(0120-91-6479、http://www.tw-sodan.jp)などを活用することをおすすめします。無償で相談に対応してくれます。

掲載:『戦略経営者』2012年5月号