大企業に比べ遅れているといわれる中小企業の女性活躍推進。しかしトップの積極的な姿勢や各種社内制度の整備で成果を生み出している事例もある。女性スタッフが生き生きと働いている会社の秘訣を探った。

女性が活躍する会社

 労働力人口が減少に転じるなか中小企業でも女性をはじめとした多様な人材の活用が急務となっている。とくに女性の活躍推進については安倍政権が発足当初から注力している政策でもあり、日本の経済成長にとって欠かせないドライバーとして広く認識されるようになった。では中小企業が女性活躍推進を効果的に実施するにはどうしたらよいのだろうか。

 それにはまず、すでにこの取り組みで実績のある企業の特徴を把握することが必要である。日本政策金融公庫総合研究所が2011年に実施した「企業経営と従業員の雇用に関するアンケート」では、「女性活躍に取り組んでいる企業」と「女性の活躍に取り組んでいない企業」を比較し、「女性活躍に取り組んでいる企業」の特徴はおおよそ次の通りであることを明らかにしている。

推進企業はメリットを実感

 1つ目は、それらの企業が、なんらかの男女平等の人的資源管理を行っていることである。採用や配置、研修や資格取得の支援、管理職への登用について、男女の性別に関係なくそれらを行っているかを尋ねたところ、「女性活躍に取り組んでいる企業」は、いずれの項目も70%を超える企業が「性別に関係ない」採用や配置、登用などを行っていると回答したのだ。一方で「女性活躍に取り組んでいない企業」の「性別に関係ない」取り組み割合は、「女性活躍に取り組んでいる企業」に比べ総じて30ポイント程度下回っていた。

 第2に、積極的に女性活躍推進している企業は、さまざまメリットを実際に感じていることである。「優秀な人材を確保できる」「職場の雰囲気が良くなる」「従業員の勤労意欲が高まる」などの回答が多く寄せられ、人材の確保や会社の雰囲気・イメージの向上を実感している経営者が多い。

 一方、積極的に女性活躍に取り組んでいるだけに、それを妨げる要素もより強く認識しているという結果も出ている。具体的には「取り組んでいない企業」に比べ、「家事や育児の負担を考慮する必要がある」「結婚や出産で退職する女性が多い」「残業・出張・転勤をさせにくい」「仕事と家庭の両立の難しさ」などの項目でそれぞれ10ポイント程度回答割合が高かった。女性活躍推進にともなう課題に苦慮する会社の姿が垣間見える。

 4番目は、取り組みが進んでいる企業は、女性が活躍しやすい人事制度や人材育成制度、育児と仕事の両立支援などの各種社内制度をすでに整備しているということ。具体的には「出産や育児等による休業がハンディとならないような人事制度の導入」「人事考課基準を明示する」などの人事制度に関する取り組み、「非正社員を対象にした研修等の教育訓練の実施」などの人材育成の取り組み、あるいは「仕事と家庭との両立支援制度を整備」などの割合が高かった。

 最後の5番目は、そうした支援を行うことによって、仕事の進め方などの改善につながるなどの効果を企業が感じていることである。アンケート結果によると、「仕事の進め方について職場内で見直すきっかけとなった」「各人が仕事に効率的に取り組むようになった」などと仕事の進め方の改善に関する回答割合が高い。会社全体として無駄な仕事の廃止などの業務改善に結びついたとともに、各人も仕事を短時間で終えられるよう工夫を凝らす効果を生んでいるといってよいだろう。

まずは女性の採用数拡大を

 さて、アンケート調査の結果から浮き彫りになったこれらの特徴を踏まえ、これから女性活躍推進に取り組む中小企業はどんな点に注意すればよいだろうか。次の4点を指摘したい。

①企業のビジョン・目標を明確に
 女性の影響力がより高まる社会では、顧客ニーズや市場ニーズがより多様化する。企業がそれに対応しビジネスチャンスを広げるためには、女性の感性や発想をこれまで以上に生かし社内の活性化を促さなければならない。企業の競争力強化と成長のために「女性従業員の活躍」を重要な経営目標として位置づけることは極めて重要なのである。そのためには従来の雇用慣行を打破する必要があるが、その力はボトムアップでは生じにくい。企業経営者が明確に「企業戦略上必須である」と社内で宣言する必要がある。

②段階ごとに着実に取り組む
 女性従業員の活躍に対する取り組みは、女性の採用拡大、女性の職域拡大、女性管理職の登用──と段階を踏んで行うべきだろう。あるいは採用拡大と職域拡大を同時に行い、その後に女性管理職の登用を進めるという順番で行うこともできる。いずれにしろ、とにかくまずは意識的に女性の採用を増やさなければならない。学校の就職担当者に女性の採用に積極的であることをPRしたり、ホームページの採用コーナーで女性従業員が活躍している姿を掲載したりするなど、地道な取り組みの積み重ねが必要である。
 職域の拡大については、これまで一般的に男性の職種と考えられている分野で女性が活躍する事例が増えており、固定観念を取り払って積極的に配置することが大切だろう。たとえば女性社員が2割の運送会社A社(静岡県)では、女性ドライバーを戦略的に増やしたところ顧客満足度が向上。いまではフォークリフト作業や検品出荷作業、運行管理・配車業務などそれまで男性だけが勤務していた職種にも女性を配置するようになり、実際に成果も出しているという。
 管理職への登用については、女性を優先的に管理職に引き上げるのは現実的ではない面がある。しかし管理職候補者をリストアップし、グループリーダーのような管理職一歩手前の職に就けるよう配慮する取り組みは効果的だと思われる。

③働きやすい職場環境の整備
 女性を活躍させたい企業側の思いとは裏腹に、採用拡大から職域拡大、管理職登用に至る過程で女性が退職するケースが後を絶たない。とくに20~30代の女性が結婚や育児で辞めてしまういわゆる「M字カーブ」の問題はなお存在する。とにかく結婚・出産を経験した後も働きやすい職場環境を整備することが必要だろう。
 具体的には、パート従業員の積極的な活用や出産・育児休業制度、短時間勤務制度などの各種施策の導入、従業員個々の事情に応じた柔軟な対応など、家庭と仕事の両立を支援する体制の整備、仕事のやり方の変更や無駄な作業の削減、仕事の効率化などによる業務時間短縮──などの手法がある。たとえば全従業員の半数以上を女性が占める自動車部品製造業のB社(千葉県)では、複数の工程を一つの作業に集約できるような機械を開発し効率化と標準化を徹底。各工程の詳細なマニュアルも作成し、女性がスムーズに製造現場での作業に慣れるような仕組みを作り効果を上げている。

④能力を発揮できる仕組みづくり
 職場の雇用慣行が男性優先で、女性が仕事を続けづらいと感じることもあるため、女性が能力を発揮し定着する仕組みづくりも大切である。人事評価基準を明確化し、男女の区分なく仕事で評価される仕組みづくりをする、本人の希望を踏まえながら適材適所の配置をし、従業員のモチベーションの維持・向上を図る、生産設備や生産工程を工夫し、仕事のやり方そのものを変更し、男性に限られていた仕事を男女の区別なく作業可能とする──などを実践すると良いだろう。

(インタビュー・構成/本誌・植松啓介)

掲載:『戦略経営者』2015年7月号