日本の空の玄関口、成田国際空港。フェンスを隔て隣接する場所で、商品の輸入代行、配送業務を手がけるのがLECS JAPANだ。櫻木浩社長の持ち前のバイタリティーにより、取引量が増加。売上高は直近の4年間で4倍に拡大した。背景には会計データを経営に生かしつつ、信頼性を高める取り組みがあった。

「坪」と「人」をうりに口コミで取引先を獲得

──米ロサンゼルスで起業されたと聞きました。

櫻木浩社長

櫻木浩社長

櫻木 勤務していた会社を退職し、以前から憧れていた米国に渡りました。渡米する前は大手運送会社でセールスドライバーをしていました。稼いだ資金を元手に、国内よりもビジネスの可能性を感じた米国でひと旗揚げようと思ったんです。
 現地で物流事業を手がけている方々から刺激とサポートを受け、2003年にLECS USAを立ち上げました。創業まもないころは、商品の買い付けや視察などで訪れた日本人が宿泊するホテルの部屋を訪ね、飛び込み営業を行ったりしていました。

──すごいバイタリティーですね。その後LECS JAPANを設立されたと。

櫻木 帰国し、日本法人を立ち上げたのが10年です。当時プランとして思い描いていたのが、高速道路を使わずに車で全国各地を回り、取引先を開拓すること。脈のありそうな会社の看板を見つけては、迷わず訪問していました。出身地の大分県から北上し、1年間で100件以上訪問しました。セールスドライバー時代に仕事に向き合う厳しさや、目標を達成する喜びを教えられたことが、今日の当社のベースになっています。

──現在も営業活動を続けていますか。

成田市内に2カ所の拠点を持つ

(上)成田市の本社
(下)成田市内に2カ所の拠点を持つ

櫻木 今は営業の専任担当者を置いていません。取引先さまがこれまでの取引に満足してくれた結果だと思いますが、新たなお客さまを紹介していただける場合が多いです。もちろん、03年の創業当初からお付き合いが続いている取引先さまもいらっしゃいます。

──成田空港に隣接している好立地から競合会社も多いと思います。会社の強みは?

櫻木 われわれの仕事で必要なのは商品を保管する倉庫と従業員。「坪」と「人」が生命線です。接客業のようにお客さまと頻繁に顔を合わせるわけではありませんが、スタッフの人間性とチームワークがレックスの商品であり、顔であると考えています。特に正社員にはさまざまな業務を経験してもらい、OJTを通して学んでもらっています。

──取扱商品のトレンドはありますか。

櫻木 健康志向の高まりから近年、ランニング系商品やトレーニング用品、アウトドア用品の輸入代行を委託されるケースが増えています。その他欧州製の自動車部品、衣料品なども多く取り扱っています。

──米国ファーストを掲げる大統領が昨年就任しましたが、事業への影響はいかがでしょうか。

櫻木 これまでの大統領に輪をかけて自国民の雇用促進を打ち出しているため、外国人へのビザ発給に時間がかかっているようです。やはり一番気になるのは為替相場ですね。昨年1月の新大統領就任前後はレートが大きく変動し、日本への輸入量が左右されました。当社のお客さまにとっては円高の状況が望ましい。米国の政策動向は常にウオッチしています。

集合写真

左から3人目は経理担当の山本絵美子さん。右隣が飯塚幸子監査担当

税務調査の打診も書面添付で調査省略

──小髙(おだか)正之顧問税理士とは08年からのお付き合いだそうですね。

櫻木 日本で事業を始めるにあたり、成田市に住居兼事務所を構え顧問税理士を探していたところ、知人から小髙先生を紹介されました。温かみのある人柄と人間力に引かれ、この方となら共に歩んでいけると確信し顧問契約を結びました。以来食事やイベントなどにも誘ってもらい、公私にわたり支援をいただいています。おかげさまで、縁もゆかりもなかった成田市周辺で人脈を広げることができました。

小髙正之顧問税理士

小髙正之顧問税理士

小髙 異国の地で事業を興し成功されていたので、興味深い方だなと思いました。いろいろお話をうかがい、櫻木社長の行動力と決断力に感銘を受けたのを覚えています。

──書面添付(※)実践の表敬状を掲げられています。

櫻木 3年連続実践の表敬状を小髙先生から先日授与されました。書面添付のありがたみを感じたのは、15年に税務署から税務調査打診の連絡が入ったとき。会社設立当初から『FX2』を利用し、会社の数字に関して何も隠すことなく経営してきたつもりでしたが、税務調査はできれば避けたいのが本音。
 数日後、小髙先生から実地調査が省略になったとの連絡をいただきました。書面添付を実践していると税務調査の前に税理士に対して意見聴取が行われるとうかがい、税務申告をまじめにやってきてよかったと感じました。表敬状をいただいたからには、よりしっかりした経理体制を構築しなければと気を引きめています。

──小髙事務所の書面添付に対するスタンスを教えてください。

書面添付3年連続実践の表敬状

書面添付3年連続実践の表敬状

小髙 月次巡回監査、FXシリーズによる自計化、書面添付の推進を事務所の標準業務として、原則全ての関与先企業さまに提案しています。顧問契約時、櫻木社長に書面添付の趣旨を説明し賛同をいただいており、売り上げが拡大し、申告書の信頼性を高めるためにも実践しています。

──『FX2』では「銀行信販データ受信機能」を活用されているとか。

山本 従来は金融機関の預金通帳を確認しながら仕訳入力していましたが、預金の入出金に関わる取引を自動でダウンロードできるようになり、入力に要する時間がだいぶ減りました。頻繁に入力する取引は小髙会計の飯塚さんに仕訳辞書として登録してもらいました。他の社員が仕訳入力する時もあるため助かっています。

飯塚 山本さんは経理業務だけでなく、発送のお手伝いやデータ集計など他の仕事もこなされており、仕訳入力の負担を減らしたいというご要望をいただいていました。また、新規のお客さまが増え、取引先ごとの残高を把握するのが難しくなってきたため、売掛金や買掛金、未払金などの勘定科目には補助科目を設け、取引先別の残高がわかるようになっています。

──入力業務を省力化できれば、より早期に業績を把握できるようになります。

山本 毎月15日までをめどに前月の仕訳入力を完了させるべく、努力しているところです。

──日ごろどんな帳表を活用していますか。

櫻木 《変動損益計算書》で経費科目を入念にチェックすることが多いですね。なおかつ、巡回監査後に全科目の《勘定科目残高一覧表》を印刷してもらい、一つひとつの科目の残高が前月あるいは前年同月と比べて、どのぐらい変動しているかを確認しています。
 そして大きく変動している場合は原因を掘り下げ、対策を考えてから次月に臨むようにしています。パソコンで『FX2』の画面を確認していると、お問い合わせメールが届いたりして顧客対応を優先するため、業績確認は後回しになりがちです。帳表なら自宅でもじっくり確認できます。

──出張する機会も多いのでは?

櫻木 外出時にどうしても業績が気になるときは、メールで資料を送信してもらっています。ただ、どこからでもリアルタイムに最新の業績を閲覧できるクラウド型システムの導入も検討中です。業務効率の向上に資するシステムや機能を積極的に活用していきたいと思っています。

──今後の抱負をお聞かせください。

櫻木 運送料金の改定や労働環境の改善など、物流業界には変革の波が押し寄せています。近年は受発注の代行やカスタマーサービスの代行など、業務の幅が広がっています。そんななかで人材の定着化を図り、サービスの質を高めていきたい。そして顧客だけでなく、スタッフにも気に入ってもらえる会社にしていきたいです。将来的にチャンスがあれば、関西方面にも拠点を構えたいと考えています。

※「書面添付制度」とは

 税理士が申告書作成にあたり次のような項目について、添付書面に記載します。

  1. 関与先にどのような資料、帳簿類が備え付けてあり、どの帳簿類を基に計算し、整理し、申告書を作成したか。
  2. 今期大きく増減した科目の原因及び理由。
  3. 関与先からどのような税務に関する相談を受け、回答したか。
  4. 税理士として関与先の申告書内容について、どのような所見を持っているのか。

 書面添付をすると、調査対象となる前に、税理士に記載内容についての意見を求められることがあります。これを「意見聴取」と言います。この意見聴取で疑問点が全て解決できれば、調査省略となります。また、調査に移行したとしても、既に調査を行うテーマが分かっており短時間で終了するのが殆どであり、税理士・関与先ともに負担が軽減されます。

日本税理士会連合会「書面添付制度をご存じですか?」より引用

(千葉センター・髙橋翔子/本誌・小林淳一)

会社概要
名称 LECS JAPAN株式会社
設立 2010年2月
所在地 千葉県成田市三里塚光ヶ丘1-362
売上高 1億円
社員数 15名
URL http://www.lecsusa.com/
顧問税理士 代表社員税理士 小髙正之
税理士法人桜頼パートナーズ会計
小髙事務所
千葉県成田市囲護台3-2-3 川豊西口館301
URL:http://odakakaikei.tkcnf.com/

掲載:『戦略経営者』2018年4月号