東海ゴンドラは、ビルの改修工事現場などで見かけるゴンドラのレンタルを手がける企業。ニッチな業界にあって、本業に特化し市場を深耕する戦略をとってきた。花木茂社長と服部昌康取締役、田中正幸顧問税理士を交え、『FX2』による経費管理の重要性などを語ってもらった。

小回りの利く対応力で取引先の信頼を獲得

──ゴンドラはどのような現場で活用されているのですか。

花木 当社はお客さまのニーズに沿ったゴンドラとゴンドラの移動システムの設置、解体業務をなりわいにしており、高層のオフィスビルや集合住宅の外壁工事などで利用されています。名古屋中心部では超高層ビルが目立つようになり、当社システムへのニーズが高まっています。人通りの多い市街地では早朝、夜間に作業を行うことも少なくありません。高所での業務が主体になるため、何よりも安全第一を心がけています。

──システムとは?

花木 「電動式横移動システム」(FAS)のことで、建物の屋上にレールを設置し、作業する人がボタン操作によりゴンドラを上下左右に移動できるシステムです。仮設の足場を地上から組み上げるのに比べて、設置に要する時間と資材コストを圧倒的に抑えられるのがメリットで、大抵半日足らずで設置できます。ゴンドラ操作には一定の技術が求められ、従業員は特別教育を受講して技能を身につけています。
 さらに「養生ネットシステム」(NOS)を併用すれば工事中の塗料飛散を防止でき、日光を透過しつつプライバシー保護にもつながります。

服部 扱っているゴンドラは、1人乗りのチェアタイプから全長7メートルのものまで多岐にわたり、用途にあわせて提案しています。最近では上層階での配線工事等で利用されるケースも増えています。

──業務の受注ルートを教えてください。

花木 大手建設会社から以前手がけた案件が評価されご指名いただいたり、新たなお客さまを紹介される場合が大半です。創業以来、地域密着を経営方針として東海地方を地盤に展開してきました。名古屋地域でゴンドラレンタルを専門に請け負っている企業は2社のみ。フットワークのよさがわれわれの売りです。故障や不具合などでゴンドラがストップしてしまうと、現場の職人さんたちが丸1日を棒に振ることになるので、可能なかぎり当日中に対応するようにしています。

──受注件数の季節変動は?

花木 外壁工事の作業効率が低下する梅雨や真冬の時期はおのずと件数が減ります。原則、日曜祝祭日を定休日にしていますが、ビルに入居するテナント店などから休日に作業してほしいという依頼があれば、ご要望を優先します。そのため、休日出勤した従業員には平日に振替休日を取得してもらったり、早朝出勤した場合は仕事を早めに切り上げてもらったりしています。

服部 きめ細かい労務管理と人手不足への対応は建設業界共通の経営課題であり、当社も出勤シフトを柔軟に組むなどして工夫を重ねているところです。

精度の高い業績予測で打ち手がクリアに

──田中正幸顧問税理士とは10年以上にわたるお付き合いをされているとか。

花木 大阪でゴンドラレンタルを営む経営者から田中先生を紹介され、2004年に顧問契約を結びました。創業当初は赤字が続き、節税対策を気にする必要はありませんでした。ですが業績が上向き、利益を徐々に計上できるようになり、経営全般に関するアドバイスをもらえる税理士の方を探していたんです。
 顧問契約締結以降、田中先生自ら監査のため毎月訪問され、親身に経営の相談に乗っていただいています。田中先生の事務所は大阪の堺市にあり名古屋から離れているものの、緊密に連絡を取り合っているので距離の遠さはあまり感じません。社員旅行に参加してもらったり、親密なお付き合いをしています。

田中 毎月20日以降に新幹線で訪問し、午後半日かけて月次監査と業績報告を行っています。顧問契約当初は私も開業したてで、車で訪問し翌日に大阪に戻っていましたが、最近は日帰りを心がけています。USBメモリを持参しわすれたときは、TKCのデータセンターを経由して伝送データなどをやりとりできる『オンラインデポサービス』を活用することもあります。

──顧問契約と同時に『FX2』を導入されたそうですね。

服部 以前は市販の会計ソフトを利用していました。そのソフトには売り上げ等の取引を大まかに入力し、数字を集計する機能しかありませんでした。『FX2』に切り替えてから仕訳の入力項目が増えて一時的に負担を感じましたが、「仕訳辞書」を活用して効率的に入力できるようになりました。

──仕訳入力はお一人で?

服部 はい。『戦略給与情報システム(PX2)』の入力も担当しています。『FX2』では取引先別の残高を把握できるよう、売上高や費用科目の一部は仕訳入力時に取引先ごとの内訳金額を入力しています。

──普段はどんな勘定科目をチェックしていますか。

花木 『FX2』から《変動損益計算書》を印刷して売上高、外注費、消耗品費などを確認し、金額が予想よりも上回っていれば、仕訳にさかのぼり原因を調べています。そうすると養生ネット代とかゴンドラのメンテナンス費といった、イレギュラーな費用が発生していたりする。グラフで前年同月との差額を確認したりして、対応策について意見交換しています。取引先ごとの残高がわかるのも便利ですね。

──月次監査時に話し合う内容をお聞かせください。

花木 例えば年初は4月決算に向けて業績をシミュレーションし、どんな手を打てるのか検討します。おおよその業績数値は頭の中でイメージできています。ただ、繁忙期に入ると売り上げの伸びに比例して外注費や消耗品費もかさんできますが、コスト面を振りかえる余裕があまりありません。どうしても無駄な費用が発生してしまう。でも月次監査後に田中先生から最新の数字を元に経営状況を解説してもらうと、問題点を明確に把握できます。
 今期の業績見通しは、雨降りの日が例年に増して多かったため、若干厳しめに見込んでいます。

田中 東海ゴンドラさまでは無借金経営を長年続けています。保有されているゴンドラの償却がほぼ終わっているため、同業他社と比べて限界利益率が高い点も財務面における強みです。

──『FX2』を導入して変わった点を挙げるなら?

花木 仕訳を日々入力することで、月次の業績が毎月15日ぐらいまでにつかめるようになり、数字に対する意識が以前よりシビアになりました。業績データの見方を田中先生から指導してもらった効果が大きいと思います。

──4月には改正入管法も施行されますが、採用面など今後の方向性はいかがでしょう。

花木 われわれの仕事には危険な作業もあり、日本人でも一人前にこなすには5年ぐらいかかります。ゴンドラに乗りながら屋上に待機している社員と無線でやりとりしたりするので、お互いの意思疎通が重要です。そのため、外国人の採用には二の足を踏んでいる状況です。採用環境がいっそう厳しくなれば背に腹は代えられませんが、現状では外国人を雇用するのはリスクが高いと判断しています。

──花木社長は4月に代表を退任し、服部取締役が後任を引き継ぐ予定になっているとか。

服部 これからも取引先をただ拡大するのではなく、お客さまと深い関係を構築していきたいと考えています。サービスの質を向上させ、取引をリピートしていただけるお客さまを増やしていきたいですね。

(本誌・小林淳一)

会社概要
名称 株式会社東海ゴンドラ
設立 2000年5月
所在地 愛知県名古屋市西区玉池町131番地
売上高 1億6,000万円
社員数 8名
URL http://t-gon.com/
顧問税理士 税理士法人ライカブリッジ
代表社員税理士 田中正幸
大阪府堺市堺区熊野町東4-4-19
平成ビル7階701号
URL:https://www.likeabridge.co.jp/

掲載:『戦略経営者』2019年3月号