株式会社岡田電気

大阪府大阪市に拠点を置く岡田電気は、電気工事業では珍しく営業から工事まですべて自社で完結させるビジネスモデルを構築している。また、社名に〝電気”を掲げているが電気設備以外の工事も広く引き受け、顧客から厚い信頼を獲得しているという。岡田真典社長、中西英子税理士、村上直也監査担当に電気工事業としては異色といえる経営戦略の実態と、『DAIC2』を活用した原価管理のポイントについて聞いた。

営業から工事までを一貫して請け負う

──業容を教えてください。

岡田真典社長

岡田真典社長

岡田 オフィスビルや工場、学校など、主に法人のお客さまを中心に電気設備の工事を受注しています。活動エリアは大阪府がメインですが、関東や九州での工事も請け負っています。公共工事にも力を入れていて、灯台のLED照明を設置したり、大阪メトロの工事にも携わりました。
 また、空調や消防設備建築などの工事も手掛けており、最近ではこういった電気設備以外の工事を請け負うことも多くなってきました。

──それはなぜでしょう?

岡田 当社の目指すところは「お客さまの困りごとを解決する」です。ただ頼まれた仕事をするだけではなく、他に困りごとがないかを聞いて当社でもできることであれば積極的に手掛けるようにしており、例えば店舗改装・解体、コンプレッサーのメンテナンスやパッケージエアコンの設置なども行っています。

──営業から工事まで一貫体制を構築されているとか。

岡田 電気工事は営業と工事で担当者が分かれていることが多く、引き継ぎやお客さまの対応に時間がかかってしまいがちです。その点、私たちは「できることは自分たちでやろう。そして、自分たちでできることを増やしていこう」と肝に銘じながら仕事をしています。
 お客さまには「他社では5日かかるところを、当社では3日でできます」と説明していますが、それは受注してから工事が完了するまでのすべての工程を自社で完結しているからです。これにより、お客さまからの要望に対して最適な提案ができたり、逆に工事のプロから見たときに望ましくない要望は商談の時点でストップをかけることもできるので、お客さまにとってもメリットが多いと感じています。

──技術力の強化はどのように?

豊富な経験と確かな技術力が強み

豊富な経験と確かな技術力が強み

岡田 現場で職人や先輩社員の仕事ぶりを見て学ぶOJTが基本です。ただ、それだけではカバーしきれないところもありますので、社外の技術研修にも積極的に派遣するようにしています。社員には常日頃から「研修で学んだことをどのように応用できるかを考えよう」と伝えています。研修で学ぶ知識や技術のほとんどは基礎的なことなので、それだけですべての業務を回せるわけではありません。実際の作業をイメージしながら研修を受講することで、学んだ内容が身につくことを強調して社員たちを啓発しています。

──顧客の評判も良く売り上げも好調だとか。

岡田 おかげさまで、「岡田電気は電気工事以外でも気軽に相談できる」と言われるようになりました。別のお客さまを紹介してもらえることも多くなり、そのかいあってか、昨年度は過去最高の売上高を記録しました。
 ただ、当社はあくまでも「お客さまの困りごとを解決する」ことを念頭に置いて仕事をしているので、収益はその結果としてついてきたものだと考えています。

──さまざまな社内改革にも着手しました。

社屋外観

社屋外観

岡田 当社は1975年創業で、父である前社長が長らく個人事業者として電気工事業を営んできました。法人化したのは94年で、私が入社したのが2002年のことです。
 私が入社するまでは会社という看板を掲げてはいたものの、考え方は個人事業のままで、家族が明るく生活できるだけの収入があれば良いというスタンスでした。ただ、せっかく会社として活動している以上、社会に貢献したいという思いがありましたので、まず建設業許可を取得しました。建設業許可は500万円以上の大規模な工事を請け負うための資格で、大型案件を受注し、会社を大きくするためにも必要であると前社長に訴えたのです。
 また、当時は祖母の自宅をオフィスとして兼用していたので、業務に集中するために自社オフィスを建てたり、従業員が安心して働けるように健康保険に加入することも進言し、徐々に会社としての体裁を整えていきました。

中西 社長は前社長から得意先を1件も引き継がず、自ら新規顧客を開拓するほどの強いハングリー精神の持ち主です。寝る間も惜しんで仕事をしている姿が印象的で、そのうち倒れてしまうのではないかとハラハラしていた時期もありました。

岡田 今でも頭の中は会社をより良くすることばかり考えていますね。先日も休日に街中でエアコンの設置工事を見かけて「ウチに頼めばいいのに」と思ってしまいました(笑)。

『DAIC2』を活用して工事ごとのコスト管理を徹底

──『DAIC2』を導入した背景は?

岡田 『DAIC2』を導入する前は売上高が下降傾向にあり、その原因が全く分からない状態でした。他社の会計ソフトを利用していたのですが、領収書の数字をそのまま入力するだけの「どんぶり勘定」に終始していたので、「経理改革をしたい」と中西先生に相談したのです。

中西英子税理士

中西英子税理士

中西 工事ごとの原価管理をきちんと行いたいという社長の要望に応える形で『DAIC2』を導入しました。岡田電気さんでは工事規模の大小を問わず、数千円単位から数千万円単位の案件まで幅広く受注していたので、工事ごとの利益率をしっかりと〝見える化〟するためには『DAIC2』が最適と考えました。

──特に注目される帳表は?

岡田 現状把握と将来の見通しを立てるために変動損益計算書は頻繁にチェックしています。特に「限界利益」に注目していて、当月の限界利益額をベースに固定費や変動費の見込み額を上乗せして、翌月の目標売上高を算出しています。

村上 社長は学生時代に会計学を専攻していたこともあって、会計への関心がとても高い。巡回監査のたびに色々な相談を受けますし、時には調べないと分からないような専門的なことを聞いてこられるので、私自身も勉強させてもらっています。

──現場社員が直接工事台帳に記帳しているのだとか。

岡田 現場社員が工事にかかるコストをしっかりと意識するために、システムとは別に当社で独自に作成した紙の工事台帳を作成していて、現場社員が自ら書くことによって、予算に対してどれだけのコストが発生しているかをしっかりと把握しています。最初は工事台帳の考え方や書き方など教えることが山ほどありましたが、今では会社全体にコスト意識が浸透してきたように感じます。
 現場監督が書いた工事台帳は経理担当者が『DAIC2』にくまなく入力しますので、システムとの整合性もバッチリです。

──書面添付(※)も実践されています。

中西 かれこれ10年以上になるでしょうか。岡田電気さんは経理体制をしっかりと構築されているので、これを証明するためにも責任をもって添付書面を作成しています。過去には書面添付の連続実践を可能にした経理体制をたたえて、岡田社長に表敬状を贈呈したこともありました。

村上直也監査担当

村上直也監査担当

村上 添付書面に書きたいことが多すぎて、いつもどの部分を削ろうかと悩んでしまうほどです。昨年も事項欄や総合所見でスペースが埋まるぐらい詳細に書きましたので、全体で5ページぐらいのボリュームになりました。

岡田 私としては当然のことを当然のようにできる環境を整えているだけなので、何か特別なことをしているつもりはないのですが、プロのお墨付きがもらえるのはとても光栄ですし、中西先生や村上さんのご指導のたまものだと感謝しています。

──今後の展望についてお聞かせください。

岡田 当社には「真摯(しんし)な対応 確かな技術」という社是があります。これからもお客さまと真摯に向き合って仕事をするとともに、社員の技術力をさらに高めていきたいと思います。ひいては、「困ったときは岡田電気に相談しよう」とたくさんの人に思ってもらえるような会社にしていきたいと考えています。

※「書面添付制度」とは

 税理士が申告書作成にあたり次のような項目について、添付書面に記載します。

  1. 関与先にどのような資料、帳簿類が備え付けてあり、どの帳簿類を基に計算し、整理し、申告書を作成したか。
  2. 今期大きく増減した科目の原因及び理由。
  3. 関与先からどのような税務に関する相談を受け、回答したか。
  4. 税理士として関与先の申告書内容について、どのような所見を持っているのか。

 書面添付をすると、調査対象となる前に、税理士に記載内容についての意見を求められることがあります。これを「意見聴取」と言います。この意見聴取で疑問点が全て解決できれば、調査省略となります。また、調査に移行したとしても、既に調査を行うテーマが分かっており短時間で終了するのが殆どであり、税理士・関与先ともに負担が軽減されます。

日本税理士会連合会「書面添付制度をご存じですか?」より引用

(大阪南センター・橿渕美音/本誌・中井修平)

会社概要
名称 株式会社岡田電気
設立 1994年6月
所在地 大阪府大阪市東成区東今里2-11-30
社員数 13人
URL http://www.okadadenki-dontokoi.co.jp/
顧問税理士 税理士 中西英子
中西会計事務所
大阪府大阪市阿倍野区旭町1-1-10 竹澤ビル7階
URL:https://nakanishi-ao.tkcnf.com/

掲載:『戦略経営者』2019年9月号