ユーザ事例 社会福祉法人 ICA

スムーズだった新会計移行会計データを経営管理に活用

社会福祉法人ICAは、横浜市鶴見区で「わくわくの森保育園」と「市場保育園」の2つの園と、市場保育園に併設される「市場保育園直接契約部(認可外保育施設・公益事業)」を運営する。新会計基準へは「社会福祉法人会計データベース」で平成25年度に移行した。現場で移行に携わった事務長の川上望氏、塚田歩氏と、コンパッソ税理士法人の戸田盛通税理士にお話をうかがった。

保育の新制度も考慮し早めに移行対応を実施

社会福祉法人 ICA

「健やかな身体とやさしい心を持ち、
人の和の中でいきいきと育つ」を
基本理念に掲げる市場保育園

──はじめに、いつ新会計基準に移行されたのかということからお聞かせください。

川上 平成25年度です。コンパッソ税理士法人の戸田さんから、準備はすべて整っているので早めに移行されてはどうかとの助言もありましたし、それに保育所の場合は27年度から新しい制度が始まることもあったので早めに移行したのです。

──その「子ども・子育て支援新制度」については、方向性をどう考えているのでしょうか。

川上 いまのところは従来のまま行こうと考えています。横浜市全体としては待機児童も解消されてきているのでしょうが、地域差があります。こちらの地域は待機児童が多く、保育所のニーズは高いのです。

塚田 この周辺だけでも2歳児の待機児童が非常に多いです。ですから、幼稚園に対しては別でしょうが、保育所に関しては横浜市もそれほど積極的に移行を推進しているわけではありません。また、実際に新制度の財源がつくのも29年度からになります。いま急いで動かなくてもいいだろうと考えているのです。

──新会計基準に話を戻しますが、実際にどんな段取りで進めてこられたのですか。

戸田 ちょうど24年の12月くらいのときに、拠点区分をどのように設定するのか、あるいは経理規程など、新会計基準への移行の実務についての研修をTKC社福研でやっていただいたので、その研修で最終的な確認をして、拠点をどうするか固めました。そして25年の1月に勘定科目や経理規程など全部を決めて、25年2月の理事会で承認していただいたという流れです。

新会計基準での戸惑いは新しい科目の使い方のみ

──移行においては、どのような点が大変でしたか。

戸田 とくに大きな問題はありませんでした。ただ、保育収入などは新会計基準になって、大科目の中で区分されるようになりましたし、ほかにも新しく出てきた科目について、使っていいのかどうか、よくわからないところがありましたので、そういう部分を16年基準との新旧対照などで確認したりしました。

──川上さんや塚田さんは、新会計基準について事前の理解が必要だったと思いますが。

川上 私たちは最初に戸田さんにレクチャーしてもらい、新会計基準の内容を理解したところで、講習会に参加し、教えてもらったことを再確認しました。

──会計システムとしては「TKC社会福祉法人会計データベース」(社福DB)を使っていらっしゃるのですね。

戸田 拠点区分ごとにパソコンに登録し、それぞれで入力してもらうようになっています。それを月次巡回監査のときに合算するかたちです。

──拠点というのは、市場保育園とわくわくの森保育園の2つになりますか。

戸田 それに加えて法人本部と、公益事業として認可外保育所があって、その4拠点になります。
 認可外保育所は、市場保育園に併設する形で直接契約部としてあるのですが、もともとは戦前に個人経営の認可外保育所「市場幼稚舎」がスタートで、いまは園児数も逆転しましたが、そこに保育園が併設されたのです。
 その認可外の部分は、以前は社会福祉事業の小規模の部分として、社会福祉事業に含めるという解釈で処理してきましたが、横浜市の解釈が変わり、折衝した結果、今年の4月からは公益事業ということになりました。以前から経理も分離させていたのですが、正式に分けることになったのです。それに伴い、評議員会も設置することになりました。

確立する月次決算体制予算執行状況を毎月チェック

──予算の作成は、いつ頃にはじめたのでしょうか。

戸田 こちらの法人は月次決算の体制にしっかり乗っていましたので、新会計基準とは関係なく、第3四半期が終わったところで、残り3か月を予想して、2月の理事会に向けて予算をつくっていました。ですから、移行年度においては、あとは科目が変わるだけという感じでしたので、1月になった段階で23年基準のシステムを立ち上げ、新基準の科目で予算をつくっていく例年の流れと同様にできました。システムが使えるようになっていたことが大きかったですね。

川上 科目で不安があるところは確認してから決定するようにしましたので、とくに問題はなく、いつもの予算作成とそんなに違いませんでした。

──会計データを経営面で有効に活用しているとのことですが、主にどういうデータをチェックするのですか。

川上 やはり予算に対しての執行率を一番にチェックします。以前は何か月かに1度、見られればいいという時期もありましたが、いまは施設も2つありますし、行政の監査も厳しい。いち早くチェックしたいところです。

塚田 収入はある程度予測が立ちますし、大きくズレることはありませんので、注意すべきは支出の部分ですね。

戸田 月次の報告は、大きなモニター画面に映して、1時間半~2時間ぐらいかけて説明しています。途中で気になる項目があればドリルダウンして、なぜ執行率が高いのか等の原因を確認していきます。
 それと「TKC社会福祉法人経営指標(S-BAST)」との比較機能をよく活用します。同規模の他の保育園と比べてどうなのか、客観的な指標として役立てています。

──S-BASTで比較した場合、どのような特徴が見られますか。

戸田 こちらの場合は、職員が若い人が多いことが要因なのですが、人件費が少なく、その分、積立金が多いという傾向が見てとれます。しかし要因がはっきりしていますので、問題になることではありません。

川上 若い人が多いというのは、以前、離職率が高い時期があったからです。いまは有給休暇を取りやすくするなど働きやすい環境に整備した結果、最近は落ち着いています。

──お話をうかがうと、会計基準の移行についてはとてもスムーズに進んだようですね。システムについては以前から社福DBを使っていたので、その戸惑いもなかったということでしょうか。

右から市場保育園塚田事務長、わくわくの森保育園川上事務長、コンパッソ税理士法人戸田税理士

右から市場保育園塚田事務長、
わくわくの森保育園川上事務長、
コンパッソ税理士法人戸田税理士

塚田 1年経って、科目についての戸惑いもほぼなくなりましたし、今月分の会計処理したものを翌月半ばまでにはチェックしてもらう流れができています。スムーズにいっていると思います。

戸田 システムの機能面では意外と好評なのが「カナ検索」です。以前は科目コードで覚えましたが、覚えなくてもよくなりましたので、非常にいいみたいですね。それと「仕訳読込機能」も便利で省力化につながっています。社福DBは非常に進化していると思います。

(平成26年9月17日)

法人Data

社会福祉法人 ICA
神奈川県横浜市鶴見区市場東中町12-27
理事長 山本隆義

  • わくわくの森保育園 定員60名
  • 市場保育園 定員90名
  • 市場保育園 直接契約部(公益)定員70名