寄稿

中小企業の存続と発展を願って

「7000プロジェクト」を発足

TKC全国会会長 粟飯原一雄

TKC全国会会長
粟飯原一雄

 「中小企業経営力強化支援法」に基づく「経営革新等支援機関」(認定支援機関)の登録数は、本年5月9日(第15号認定)で、21,535機関。そのうち税理士・税理士法人・公認会計士等は18,213機関で約85%を占め、TKC会員は6,547機関で約30%を占めています。

 税理士等の認定支援機関の大きな役割の一つとして、中小企業の経営改善計画の策定支援があり、特に中小企業金融円滑化法によって、金融機関からの返済猶予を受けた企業の経営改善計画策定支援が期待されました。

 国は、その促進のために405億円の予算措置を行い、「認定支援機関による経営改善計画策定支援事業」を開始し、各県の経営改善支援センターが申請窓口となりました。その後、本事業の対象企業は約6万社程度と試算され、そのうちの約2万社程度が、地域金融機関等の支援が受けられないゾーンであり、税理士等の支援機関による支援が期待される対象と目されています。

 しかし、経営改善計画策定支援事業の申請・利用件数の実態は低調で、本年3月末現在で2,281件と、想定数の1割程度に止まっている現状にあります。

 約18,000の税理士・税理士法人・公認会計士等が認定支援機関に登録していながら、申請・利用件数が増えないのはなぜでしょうか。そこには金融機関、行政機関、税理士等の立場の違いに起因する思惑の違い等もあったようです。

 しかしこのままでは、債務を抱えた多くの中小企業が救済されず、さらに税理士は中小企業の経営面でさまざまなサポートをする立場といわれながら、「税理士には経営改善計画の策定支援はできない」との低評価の烙印を押されかねない恐れがあります。

 TKC全国会は「中小企業の存続・発展の支援」を政策課題に掲げており、本年からスタートした活動目標に照らしても、経営改善計画の策定支援に取り組むべき立場にあります。

 各地域会や支部が地域金融機関と覚え書きを締結して、経営改善支援やモニタリング支援等を実践してきた実績もあります。

 今回の支援事業は、申請書類などが過去のものと異なるとはいえ、支援内容そのものに大きな違いはありません。本来、国の予算があろうとなかろうと、取り組むべき必然の業務と言えます。

年商1億円以下の関与先が主な対象

 そこでTKC全国会は、「中小企業の存続と発展」のために、「7000プロジェクト」(リーダー:中小企業支援委員会藤原均委員長)を立ち上げ、来年3月末までに、7000企業の経営改善計画策定支援を行うことを決定いたしました。

 この経営改善計画策定支援の対象企業は、すべての債務企業や赤字企業ではなく、次の3点に該当する関与先企業です。

年商3億円以下(1億円以下がメイン)。
保証協会付借入金があり、折り返し融資を受けている、あるいは、信用保証協会付の新規融資を希望する法人企業。
経営改善に取り組む意思を経営者に確認できる法人企業。

 各会員事務所には、この条件に合致する関与先があるのではないでしょうか。以下の内容が、本支援事業の標準的なステップと考えられています。

経営改善計画策定支援事業活動の6つのステップ
事前確認 所長の取り組み方針の確認と関与先の選定
ステップ1 関与先経営者の説得
ステップ2 メイン金融機関の説得
ステップ3 経営改善支援センターへの相談と「利用申請書」の提出
ステップ4 TKC継続MASシステム」による経営改善計画策定
ステップ5 すべての書類の提出(経営改善支援センター)
ステップ6 モニタリング開始

 このうちステップ1「関与先経営者の説得」では、「このまま借入金を抱えた経営を次世代まで残すのか、支援事業を活用して積極的な経営改善に転換するのか」を問いかけ、その経営者魂に点火することがカギになります。

 ステップ3以後は、申請手続きですが、特にステップ4の経営改善計画の策定が一番の課題となります。

6月から経営改善計画策定「実践会」を緊急開催

 本プロジェクトは、来年3月までの短期決戦となります。

 そこで利用申請書作成、提出可能な経営改善計画の策定を実際に行う、経営改善計画策定「実践会」を、この6月2日から9月19日まで緊急開催します。講師としては、中小企業再生支援全国本部から派遣していただき、継続MASシステムによる数値計画の部分はSCGが担当することになります。

 その第一弾として、6月2日から7月2日までの1カ月間に13カ所で先行開催されます。その内訳は、信用保証協会との連携が可能な6地域(宮崎・岡山・和歌山・三重・長野・青森)と主要都市7カ所(仙台・東京・静岡・金沢・名古屋・大阪・福岡)です。

 その後、第二弾を7月7日から9月19日までに全国43カ所で開催する予定です。今後のプロジェクトの各都道府県リーダー等からの発信情報などに、ぜひご注目ください。

 認定支援機関の会員が一人1件以上提出すれば、目標はクリアできます。中小企業の存続・発展支援に向けて、一人でも多くのTKC会員に参画していただき、積極的な支援活動をお願いする次第です。

(会報『TKC』平成26年6月号より転載)