社会福祉法人津山福祉会

左から神﨑律子事務主任、森麻梨子さん、
仁木潤事務局長、瀬島貴仁さん

「時代と地域のニーズに即応する施設経営」をモットーに特別養護老人ホーム「高寿園」を運営する津山福祉会。「津山市ワーク・ライフ・バランス推進企業」に選定されるなど、働きやすい職場づくりが注目の的となっている。経理業務では伺書、会計伝票の入力から振り込みデータの作成まで電子的に一気通貫で行える仕組みを導入し、業務効率の向上を成し遂げた。

53種類の勤務パターンで柔軟な働き方を後押し

──ウェブサイトでさまざまなイベントを紹介されています。

仁木 創業者である前理事長が地域の民生委員を50年にわたり務めていたこともあり、地域の人々との交流イベントを盛んに実施してきました。例えば250名ほどを収容できるホールでは合同芸術祭や、地元高校生による吹奏楽、演劇の上演会などを開催しています。現在はコロナ感染予防を行いつつ、一部のイベントのみ継続しています。

──どのような感染対策を実施していますか。

「AI体温検知器」

顔認証機能も備える「AI体温検知器」

仁木 職員は日々の検温とこまめな手洗いの実施はもちろん、ご家族の勤務先等で感染者が確認された場合、自宅待機としています。また、デイサービス利用者さまおよびご家族が県外に外出された際は、利用を1週間控えていただくようお願いしています。入居者さまとご家族との面会も、オンライン形式のみ受け入れている状態です。施設入り口には「AI体温検知器」を設置。来館者の体温を非接触で検知できるのに加えて、マスク着用の有無を感知する機能も付いています。

──細心の注意を払われていますね。柔軟な働き方を率先して取り入れられていると聞きました。

仁木 施設長と子育て中の職員をメンバーとする、両立支援委員会を定期的に開催し、ワーク・ライフ・バランスの実現に資する施策について話し合っています。施設内で職員のお子さんを預かる「子ども出勤」や、育児後に短時間勤務から徐々に復職できる「トライアル出勤」をはじめ、ライフステージに応じた勤務体系を選択できます。
 そのほか「朝パート」「夕方パート」という勤務体系もあり、デイサービス利用者さまの送迎等で職員の人数が減る早朝と夕方の時間帯に短時間働いてもらえるので、運営上ありがたいと感じています。職員の要望に基づいて多様な勤務スタイルを取り入れた結果、勤務パターンは53種類まで増えました。もっとも、勤怠管理は大変ですが。

施設外観等

──コロナ禍でテレワークも始められたとか。

仁木 昨年11月以降、試験的に導入し、いまでは8名が利用しています。在宅勤務を開始したきっかけは、職員のご家族の勤務先で感染者が確認されたためです。当初、事務系の職員が利用し、ケアマネージャーや管理栄養士などの専門職スタッフに対象を拡大していきました。

──在宅勤務制度やハードウェア環境の整備はどのように?

仁木 正直なところ、準備を万全にととのえて開始したわけではありません。ただ、経理担当者は『FX4クラウド』を日ごろ利用しているため、在宅勤務にスムーズに移行できたと思います。ハードウェアの整備に際しては、働き方改革推進支援助成金(テレワークコース)も活用しました。

電子承認機能を活用し経理業務の省力化を実現

──清水博文税理士と顧問契約を結ばれたいきさつを教えてください。

仁木 2015年11月に施設を移転、新築するにあたり、財産処分や減価償却を行い、固定資産管理台帳を作成する必要がありました。加えて、当時利用していた会計ソフトの使い勝手にも、かねて不便を感じていました。お世話になっていた社会保険労務士の方から紹介されたのが清水先生でした。

──『FX4クラウド』を導入されたのは18年11月ですね。

神﨑 はい。従来利用していた会計ソフトが準拠していたのは旧会計基準で、サービス区分ごとの総勘定元帳の出力しかできませんでした。清水先生に相談したところ『FX4クラウド』を紹介いただき、システムのデモを見せてもらい切り替えました。

──会計システムを移行されて、最も変わったのはどんな点でしょう。

仁木 組織運営の観点でいえば、事務担当職員の時間外労働が大幅に減りましたね。『FX4クラウド』の伺書の電子承認機能を活用できるようになったのが大きいと思います。電子承認した伺書を元に会計伝票が自動的に作成され、さらに会計伝票を承認すると金融機関用振り込みデータの作成まで行えます。
 こうした業務フローにより経理業務が省力化され、入力ミスも防止できるようになりました。われわれ管理職にとって、書類に押印する必要がなくなったのもありがたいです。

清水博文顧問税理士

清水博文顧問税理士

清水 システムに3段階の電子承認プロセスを登録されており、従来採用されていた伺書の回覧による承認方法にくらべて、内部統制の度合いが格段に高まったと感じています。電子承認機能を活用している社会福祉法人は、全国でもあまり例がないと思います。

──電子承認機能により、間接業務を削減できたわけですね。

仁木 経理担当者に時間的な余裕が生まれ、その分イベントの運営を手伝ってもらったりしています。介護担当スタッフは腰痛が原因で離職してしまうケースが多く、当施設では現在、入居者さまを移乗するためのリフトの導入を進めています。新たな投資を行うには、無駄な出費を削らなければなりません。先日補正予算を組むとき、総勘定元帳を確認したところ、おむつ代が前年より増加しているのがわかりました。単価の上昇によるものか、使用方法に原因があるのか現場の職員に確認していますが、以前利用していた会計ソフトではこうした問題点は発見できませんでした。

──伝票入力など日常業務における使い勝手は?

神﨑 会計伝票が伺書データから自動的に作成されるため、入力にまつわる手間が一挙になくなりました。以前はスプレッドシートに伺書の内容を入力し、それを元に会計ソフトに改めて入力していましたから。事業未払金の消し込み作業も不要になりました。
 清水先生の事務所からインターネット経由でシステムを確認してもらえるので、疑問点などを随時相談しています。

──システムに登録しているサービス区分を教えてください。

マルシェ

昨年11月に初めて開催したマルシェには5店舗が出店した

神﨑 本部、特養、短期、デイサービスの四つです。サービス区分別、あるいは組織全体の総勘定元帳を簡単に出力でき、県の監査に対応する際などに活用しています。

仁木 先日、岡山県による指導監査を受けましたが、会計伝票のペーパーレス化について指摘された事柄は、特にありませんでした。

──決算業務はいかがでしょう。

神﨑 財務諸表等電子開示システムを用いた、決算書情報の公開を行っており、TKC提供によるガイダンス動画を参照しながら、『FX4クラウド』からのデータ連携処理を行っています。取り込み用残高ファイルを出力して資金収支、事業活動などの内容を簡単に連携できるため、転記ミス防止に役立っています。決算前だからといって、特段、業務量が増え残業に追われるといったことはないですね。

──組織運営の方向性をお聞かせください。

仁木 採用環境は依然厳しい状況にありますが、昨年は4名の新卒者を採用することができました。新入職員は3週間の新任職員研修を受講し、配属後も先輩職員がマンツーマンで指導する体制をとっています。そして月に1度1年間にわたり、業務のふり返りの場としてミーティングを実施しています。
 こうした取り組みにより、職員の離職率は近年低下傾向にあります。限られた人員で組織を効率的に運営するべく、ITツールを活用した働きやすい職場づくりを進めていきたいと考えています。

(中四国統括センター・藤澤修一/本誌・小林淳一)

会社概要
名称 社会福祉法人津山福祉会
設立 1980年7月
所在地 岡山県津山市下高倉西1581-1
職員数 92名
URL https://www.kojuen.jp/
顧問税理士 清水博文
税理士法人LEGARE岡山オフィス
岡山県岡山市北区清心町16番38号
https://shimizu-taxoffice.tkcnf.com/

掲載:『戦略経営者』2021年3月号