掲載日:2021.10.14

ポイント制度における消費税の取扱いの検証

ポイント制度における消費税の取扱いの検証

株式会社TKC 顧問
税理士 朝長 英樹

ポイントの利用額は、年間、2兆円を超えると言われていますが、そのような中、令和2年1月に国税庁から顧客にポイントを付与した加盟店がポイントの発行会社に支払う「ポイント費用」が課税仕入れとはならないとした処理例が示されました。
この取扱いの変更には、確かに、妥当性があると考えられます。
しかし、顧客が加盟店でポイントを使用する取引の取扱いにも、問題があります。
このため、現在のポイント制度における消費税の取扱いに関しては、ポイントの付与と使用の両方の場面の取扱いを改める必要があると考えられます。
本コラムにおいては、このような観点から、筆者の見解を述べることとします。

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はじめに

 本稿は、ポイント制度における消費税の取扱いについて検証を行うものです。
 最初に、ポイント制度の大まかな仕組みを確認しておくことにします。
 ポイントとは、顧客がポイント制度の加盟店から商品の購入等を行った場合に付与される点数をいい、ポイントを付与された顧客は、ポイント制度の加盟店から商品の購入等を行う際に、付与されたポイントをその対価の支払いに充てたり商品等との交換に用いたりすることができます。また、顧客にポイントを付与する取引を行った加盟店は、ポイントを発行して管理する会社(以下「発行会社」といいます。)に対し、付与したポイント相当額の金銭を支払い、その金銭を受け取ったポイントの発行会社は、その金銭と同額の金銭を顧客がポイントを使用した加盟店(以下「使用加盟店」といいます。)に支払います。
 顧客は、ポイント制度を利用することにより、付与されたポイントに相当する金銭を支払うことなく、ポイント制度の加盟店から商品の購入等をすることができます。
 ポイント制度の加盟店は、ポイントを利用することにより、集客効果を高める等のメリットを享受することができます。
 ポイントの発行会社は、加盟店にポイント制度を利用させる対価として加盟店から「システム利用料」等を得ることができます。
 ポイントには、自社の店舗のみで使うことができるもの、自社とグループ企業の店舗で使うことができるもの、商店街等の店舗で使うことができるもの、インターネットの販売サイトで使うことができるもの、加盟店となっている店舗のいずれでも使うことができるものなど、様々なものがありますが、顧客が商品の購入等を行う毎にポイントが付与されて、その後、顧客が商品の購入等を行う際に対価の支払いに充てたり商品等との交換に用いたりすることができるという点では、違いはありません。
 以上がポイント制度の大まかな仕組みということになります。
 次に、本稿でポイント制度における消費税の取扱いについて検証を行うこととした理由について、説明をしておくことにします。
 現在のポイント制度における消費税の取扱いには、顧客が支払ったとされる消費税額よりも加盟店が納付する消費税額が少ないという構造的な問題(Ⅰで詳細を説明しています。)が存在します。この問題は、共通ポイントと呼ばれているものが出てきた時から存在するもので、長期にわたって未解決のままとなっています。
 ポイント制度における消費税の取扱いに関しては、ポイントの使われ方が多様化していることにばかり目が向きがちになりますが、ポイント自体の取引は、その発生から消滅に至るまで不課税取引となるため(Ⅴで説明しています。)、ポイントの使われ方がどのように多様化しても、不課税取引が増えるだけであって、あまり影響はありません。ポイント制度における消費税の取扱いに関して解決しなければならないのは、新たなポイントの使われ方の取扱いをどうするのかという問題ではなく、古くから存在する上記の構造的な問題であると言っても、決して過言ではありません。
 令和2年1月には、国税庁から、付与加盟店が発行会社に支払うポイント相当額の金銭の支払い(以下「ポイント費用」といいます。)について、不課税仕入れとする処理を示した表(Ⅰでこの表の処理を説明しています。)が公表されました。
 この表の処理が上記の構造的な問題を解決する意図をもってなされたものであるのか否かという点には疑問がありますが、付与加盟店において、ポイント費用を課税仕入れから不課税仕入れに変更すれば、付与加盟店が納付する消費税額が増加して、上記の構造的な問題が解決されることになることは、間違いありません。
 しかし、上記の構造的な問題は、付与加盟店のポイント費用を不課税仕入れとすることだけで解決するべきものではありません。
 それは何故かというと、現在のポイント制度における消費税の取扱いには、付与加盟店におけるポイント費用の取扱いの問題だけではなく、使用加盟店(注1)において、顧客のポイントの使用額を「値引き」として処理していないという問題もあるからです(ⅡとⅢにおいて、そのような問題があるということを確認し、Ⅳにおいて、顧客のポイントの使用額が「値引き」となるということを確認した上で、その処理を確認しています。)。

(注1)
ポイント制度においては、通常、加盟店は、顧客にポイントを付与する取引を行うとともに、顧客がポイントを使用する取引も行いますので、付与加盟店でもあり、使用加盟店でもあるということになります。しかし、ポイントを付与する取引を行う場面と使用する取引を行う場面では、ポイントの取扱いの内容(付与と使用)が全く異なり、検証するべきことも全く異なります。このため、混乱することがないように、本稿においては、加盟店を付与加盟店と使用加盟店とに分けてそれぞれの取引の取扱いを検証することにしています。

 付与加盟店が顧客にポイントを付与する取引を行ったことによってポイントの発行会社に支払うことになるポイント費用について、課税仕入れから不課税仕入れに変更すると、付与加盟店が納付する消費税額が増加することになりますが、使用加盟店が顧客のポイントの使用額を「値引き」とすることに変更すると、使用加盟店が納付する消費税額が減少することになるため、付与加盟店と使用加盟店が同じであったとすれば、消費税額は、現在と変わらなくなります。
 また、現在のポイント制度における消費税の取扱いには、上記の構造的な問題が存在するのみならず、ポイントを用いた多様な取引の取扱いが明確でないという問題も存在します。
 このような事情にあることに鑑みて、本稿では、ポイント制度における消費税の取扱いを検証し、上記の構造的な問題を解決するとともに多様な取引の取扱いを明確にするべく、筆者の所見を述べることにしています。
 なお、付与加盟店、使用加盟店や顧客の殆どは、現在のポイント制度における消費税の取扱いを変更するということになると、インボイス制度への対応と同じように、税務処理やレシート処理のシステム変更が必要となって、現実には相当な経過期間がないと対応できないという状況にある(注2)、と考えられますので、上記の構造的な問題等について、早急に議論を深めて結論を出す必要があるということを付言しておきます。

(注2)
現在、我が国におけるポイントの利用額は2兆円を超えると言われており、ポイントの加盟店は、小売業、飲食サービス業、宿泊業などを中心に、非常に多く存在していますが、折悪しく、このような業種の事業者は、コロナ禍の直撃を受けています。
このため、ポイント費用を課税仕入れから不課税仕入れに変更し、顧客のポイントの使用額を「値引き」とすることにより、消費税額の負担が増加しないことに変更するということであったとしても、現在のような過去に例のない厳しい状況下で、ポイントの加盟店がインボイス制度への対応に加え、ポイント制度における消費税の取扱いの変更への対応をするために、税務処理やレシート処理のシステム変更を行うということになると、相当な期間が必要になるものと考えられます。

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プロフィール

税理士 朝長 英樹(ともなが ひでき)
株式会社TKC 顧問
日本税制研究所 代表理事

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税理士法人朝長英樹税理士事務所
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