掲載日:2022.04.25

中堅・大企業向け消費税インボイス制度の留意点

第4回(最終回) 電子インボイスとデジタル化の動向

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
税理士 畑中 孝介

いよいよ、令和5年10月1日からインボイス制度が始まります。特に仕入税額控除のあり方が大きく変わり、従来通り仕入税額控除を受けるためには自社だけではなく仕入先・外注先・家主等が適格請求書発行事業者になっているかどうかの確認も必要です。つまり経理部門だけでなく営業や購買部門・契約部門など幅広い部門をまたがった確認が必要になるということです。
当コラムでは、全4回でインボイス制度のうち中堅・大企業が対応すべき事項について解説します。

1.電子インボイス制度の概要

 現在、EIPA(「電子インボイス推進協議会」(E-Invoice Promotion Association))では、「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」を見据え、事業者間での請求に係る業務プロセスのデジタル化、共通電子インボイス・システムの構築を進めているようです。
 EIPAは、2022年秋に事業者が電子インボイスに対応したソフトウェアを使用できる状態になることを目指しています。そして、共通電子インボイス・システムの構築に向けて、国際標準仕様「Peppol(ペポル)」をベースとして電子インボイスの「日本標準仕様」を策定することを決定しました。
 EIPAでは現在、「Peppol」が定める国際標準規格について詳細な調査・分析を進めるとともに、「日本標準仕様」として必要な追加要件を整理し、電子インボイスの国内標準仕様(初版)を策定しています。
 共通電子インボイスの普及が進んだ場合、現在分断されている「基幹業務システム」と「会計・税務システム」がシームレスに連携することから、バックオフィス業務の省力化・生産性向上が実現することになります。
 経理業務を中心にした場合、現在基幹業務システムから出てきた出力帳票をもとに、請求データや支払いデータを会計システムに手入力していたものが、電子インボイスの登場で 請求データから電子インボイスが作成され、それが電子データのまま得意先にわたります。得意先(買い手)はその電子インボイスとともに請求データを受領し、その請求データを仕入データとしてそのまま電子的に取り込むことが可能となります。
 そのため、受領した電子インボイスをチェックし、仕入れデータとして取り込むだけで購入データが電子インボイスとともに、電子データとして取り込まれ、それをチェックし取り込むだけで会計システムに仕訳データとして直接データ連携することが可能となります。また、仕入購入データを支払いデータに連携させることで、債権債務の照合、自動消込にも対応することになります。さらに、それにとどまらず電子インボイスの普及によってデジタル化が加速することで、見積もりや受発注業務との連携についても計画されているようです。
 これらにより、以下のような流れで、販売者・購入者ともに請求データ・仕入データ・入金支払データがシームレスに連携し、債権債務の消込作業までが一気通貫でデータ上のまままで、一切紙を介さずにできることになります。

(請求者)基幹業務システムでの見積データ⇒受発注データ⇒請求データ⇒電子インボイス発行

(購入者)受領した電子インボイス・請求データ⇒購買管理システム・会計システムに取り込み⇒支払いデータ作成⇒全銀EDIを通じて決済

(請求者)全銀EDIを通じて入金データを受領⇒販売管理システム・会計システムに取り込み⇒請求データとの照合の上自動消込

2.デジタル化の動向

 令和5年10月1日からはインボイス制度が導入されインボイス制度導入と同時に電子インボイスの導入も予定されています。
 インボイス制度導入を契機にして、デジタル化の流れは急加速するものと思われます。
 前述したとおり、EIPAでは、インボイス制度を見据え、事業者間での請求に係る業務プロセスのデジタル化、共通電子インボイス・システムの構築を進めています。これら共通電子インボイスの普及が進んだ場合、「基幹業務システム」と「会計・税務システム」の連携により、バックオフィス業務の省力化・生産性向上が実現することになります。
 電子インボイス推進協議会のホームページにおいても「日本国内の事業者の業務プロセス全体には、紙・FAXでのやり取りを中心とした多くのアナログ処理が存在しており、特に中小・小規模事業者の生産性向上の妨げとなっています。この問題を解消するためには、単に紙での処理の「電子化」(Digitization)を進めるのではなく、デジタルを前提として業務のあり方そのものを見直す「デジタル化」(Digitalization)を推し進め、業務全体の圧倒的な効率化を実現する必要があります。」とされています。
 つまり、単に紙が電子データに置き換わるといったデジタイゼーションにとどまらず、バックオフィス業務のプロセスの電子化やビジネスモデル転換といった業務全体の抜本的な変革が行われていくと思われます。
 また、令和3年度の税制改正において、電子帳簿保存法(電子計算機を使用して作成する国税関係帳簿書類の保存方法等の特例に関する法律)の改正が行われ、令和4年1月1日に施行されました。2年間の宥恕措置が講じられていますが、電子取引データ保存は法律上すべての事業者に対し強制適用されることになっていますので、適切に対応しない場合には青色申告の取り消しなどの可能性があります。電子データ保存に関しては電子インボイス制度の動向も踏まえて検討すべきでしょう。(了)

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プロフィール

税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員

著書等
  • 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
  • 『令和3年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
  • 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
  • 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
  • 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
システム・コンサルティング事例
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