更新日 2019.05.20

平成31年度(2019年度)税制改正のポイント

第2回 みなし大企業の範囲の見直し・組織再編税制の見直し

  • twitter
  • Facebook
税理士 宇野元浩

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 宇野 元浩

平成31年度税制改正では、引き続きデフレ脱却と経済再生を確実なものとするため、研究開発税制の見直し等が行われています。また、国際的な租税回避に効果的に対応するための国際課税制度の見直し、経済取引の多様化等を踏まえた納税環境の整備等も行われています。
当コラムでは、平成31年度税制改正の概要と大法人の制度を中心に、主な税制改正の内容について解説します。

1.みなし大企業の範囲の見直し

(1) 改正の概要

 法人税の中小企業向けの租税特別措置法等の適用を受けることのできる「みなし大企業」の範囲がみなおされ、判定に用いられる「大規模法人」の範囲に、大法人の100%子会社等を新たに追加し、法人税のグループ法人税制の適用範囲と整合させることとなりました。
これは、「大法人の100%子法人」及び「100%グループ内の複数の大法人に発行済株式(または出資)の全部を保有されている法人」を大規模法人の範囲に含めることにより、「みなし大企業」の範囲を拡大させるものです。この結果、大法人のグループ内の孫法人も中小企業向けの租税特別措置の適用がうけられなくなります。

(2) 改正の内容(「みなし大企業」の範囲)

 資本金または出資金の額が1億円以下の法人のうち、以下のいずれかに該当する法人をいいます。

  1. ①その発行済株式(または出資)の総数(または総額)の2分の1以上が同一の「大規模法人」に所有されている法人
  2. ②その発行済株式(または出資)の総数(または総額)の3分の2以上が複数の「大規模法人」に所有されている法人
「大規模法人」

「大規模法人」とは、以下のいずれかに該当する法人をいいます。

  1. 資本金の額(または出資金の額)が1億円を超える法人
  2. 資本(または出資)を有しない法人のうち、常時使用従業員数が1,000人をこえるもの
【改正】により次の2つ追加
  1. 大法人の100%子会社
  2. 100%グループ内の複数の大法人に発行済株式(または出資)の全部を保有されている法人

※大法人とは、以下のいずれかに該当する法人をいいます。

  1. 1) 資本金の額(または出資金の額)が5億円以上の法人
  2. 2) 相互会社または外国相互会社のうち、常時使用従業員数が1,000人を超えるもの
  3. 3) 受託法人
(3) 大規模法人の改正前後

大規模法人の範囲(改正前後)

種 類 改正前 改正後
資本金または出資金が1億円超の法人
資本(または出資)を有しない法人のうち、常時使用従業員数が1,000人を超えるもの
独立行政法人中小企業基盤整備機構が出資者となっている一定の投資事業有限責任組合 ×
大法人(資本金5億円以上の法人等)の100%子法人 ×
100%グループ内の複数の大法人に発行済株式(または出資)の全部を保有されているもの ×

〇:大規模法人の範囲に含まれる  ×:大規模法人の範囲に含まれない

出典:TKC出版「Q&A平成31年度税制改正の留意点」

2.組織再編税制の見直し

(1) 改正の概要

 適格組織再編の対象に以下が含まれます。

  1. ①三角組織再編(適格合併、適格分割または適格株式交換)を行う場合の対価要件に間接保有する関係も含めることとする。
  2. ②株式交換等による組織再編後に行われる「逆さ合併」を適格組織再編の対象に含めることとする。
(2) 三角組織再編成における適格要件の見直し

 三角組織再編成(適格合併、適格分割または適格株式交換)の適格要件の対価要件および被合併法人等の株主における旧株の譲渡損益を繰り延べる要件に、合併法人等の親法人の株式だけでなく、合併法人の発行済株式の全部を間接に保有する関係がある法人の株式を加えることとされました。
改正前の制度では、適格三角組織再編成を行う場合の対価要件が100%親会社の株式のみしか認められておらず、直接の100%親会社が非上場である場合には事実上利用出来ない仕組みとなっているとの指摘がなされていました。
そこで、上場会社であるホールディングス・カンパニー等を念頭に、間接保有の完全親会社の株式を対価とする三角組織再編成も適用要件を満たすように改正が行われました。

(3) 株式交換等の実施後に行われる「逆さ合併」への対応

 株式交換等の後に株式交換等完全親法人を被合併法人(いわいる「さかさ合併」)とする適格合併を行うことが見込まれている場合には、その株式交換等に係る適格要件のうち完全支配関係継続要件、支配関係継続要件および親子関係継続要件について、その適格合併の直前の時までの関係により判定することとされます。

  • twitter
  • Facebook

この連載の記事

テーマ

プロフィール

この執筆者の記事一覧へ

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士・公認会計士 宇野元浩

税理士 宇野 元浩(うの もとひろ)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員(地域会リーダー)
TKC中央研修所税制改正プロジェクトメンバー
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員
TKC企業グループ経営支援プロジェクト(Eプロジェクト)リーダ

ホームページURL
税理士法人エフ・エム・エス

免責事項

  1. 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
  2. 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
  3. 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。