スマート行政DX推進を支援する

情報誌 「新風」(かぜ)

2025年10月号Vol.140

【ユーザー事例1】DX推進で「市役所改革」に挑む

かんたん窓口+スマート申請 > 宮崎県宮崎市

総務部 市役所改革推進課 課長 三輪将太 氏 / 課長補佐兼行革・働き方改革推進係係長 本市 彩 氏 / デジタル支援課 課長 堀口昌樹 氏 / 課長補佐兼デジタル第一係係長 松浦 裕 氏

住所
宮崎県宮崎市橘通西1丁目1番1号
電話
0985-25-2111(宮崎市コールセンター)
面積
643.54平方キロメートル
人口
391,997人(2025年8月1日現在)

──市役所改革に取り組まれた背景や、推進状況について教えてください。

宮崎県宮崎市

三輪 宮崎市では、2022年5月に『市役所改革推進ビジョン』を策定しました。経営理念は〈職員一人ひとりが行政のプロとして誇りと情熱を持ち、市民の幸せのために全力を尽くす〉ことで、経営方針には「職員の意識改革」と「職員の仕事・働き方改革」を掲げました。その実行計画となるのが『市役所改革推進プラン』で、〈職員の意識改革〉と業務の抜本的見直しによる〈総労働時間の適正化〉〈働き方改革〉を進めています。また、市役所改革にはDXが欠かせないことから、別途、『DX推進方針』(デジタル技術の活用)と『人材育成基本方針』(DX人材の育成・確保)を策定し、推進プランと一体的に展開しています。

働き方改革へ、開庁時間を短縮

──25年6月からは、働き方改革の一環として開庁時間も短縮されました。

三輪 開庁時間を1時間短縮し、8時45分~16時30分に変更しました。決断の背景には三つの理由が挙げられます。
 一つ目が、オンライン申請や証明書コンビニ交付サービスの実施による「来庁者数の減少」です。証明書発行件数の推移(15~23年度)を見ると、総発行件数が年々減少し、23年度には15年度比で19%減となりました。また、交付場所では、23年度にコンビニ(53%)が窓口(47%)を逆転しました。
 二つ目は、「開庁前・後に恒常的な時間外業務が発生していた」ことです。これまで開庁時間と勤務時間が同じだったことで、職員の負担となるだけでなく、朝礼・終礼を省略せざるを得ず業務上の連絡や注意など情報共有が徹底できないという課題もありました。
 三つ目は「朝・夕の短縮時間帯は来庁者が少ない」ことです。主要窓口の時間別来庁者の状況を調べたところ、短縮した時間帯の来庁者割合は全体の1割にも満たないことが分かりました。
 開庁時間の変更により、①業務改善への注力による市民サービスの質と生産性向上、②朝礼実施によりミス削減、職員のモチベーション向上、③時間外勤務削減によるコスト削減、働き方改革──が実現できると期待しています。

──市民や職員の反応はいかがですか。

三輪 残業時間の短縮効果など定量評価は実施していませんが、現場からは「情報共有がしやすくなった」「時間外業務が減った」という声が聞かれ、中には「さらに開庁時間を短縮してもよいのでは」という意見もあります。

本市 市民向けには、広報誌で開庁時間の変更を告知するとともに「市役所にいかなくてもできる手続き」を一覧で紹介しました。こうした周知活動もあり、問い合わせは10件程度と意外と少なかったですね。問い合わせには、「業務改善をしてサービスの質の向上に努める」と説明しています。

──理由の一つに「オンライン申請」を挙げられましたが、その推進状況は。

堀口 市民サービスの質の向上ということでは、やはり〝行かない窓口〟の拡充が大切です。宮崎市では、23年6月に「宮崎市スマート申請」(スマート申請システム)のサービスを開始したことを契機に申請手続きのオンライン化を一層進めてきました。現在、オンラインで可能な手続き割合は6割と、手続き数は順調に拡大しています。
 利用率も増加傾向にありますが、手続きによってばらつきも生じており、今後は〈利用拡大〉が重要になると捉えています。特に利用率が低い手続きについては、サービス内容と利用者ニーズのミスマッチがあることも想定されます。これを解消するため、〈手続きの種類・範囲の総点検〉や〈市民がより使いやすいサービス設計〉〈効果的な周知活動〉などにより、利用拡大を図っていく必要があるでしょう。

市役所は、変わらなければ!

──並行して、DX人材の育成・確保にも注力されています。

堀口 人材の育成・確保は急務です。宮崎市ではデジタル専門職を採用する一方で、職員のスキル向上を狙って「ITパスポート」レベルの知識習得を目的とした研修なども実施しています。研修には定員を大幅に超える申し込みがあり、DXへ前向きに取り組もうという職員の意識の高さを感じました。

松浦 人人材育成では、デジタルツールを効果的に使いこなすスキルの向上も大切です。そこで、グループウエアなど最新技術を積極的に採り入れて、職員のリスキリングや能力向上、知識のアップデートを図ることにも取り組んでいます。すでに、ツールを活用して自由な発想で業務改善に挑む職員も登場しており、主体的な取り組みとして定着させるためにはキャリアパスを示すことも必要かなと考えています。

──今後の計画を教えてください。

堀口 『第2次宮崎市DX推進方針』では、重点取り組みの一つに「フロントヤード改革の推進」を掲げており、これに取り組みます。具体的には、31年に予定される新庁舎建設を見据えて〈市民がより利用しやすく、素早く快適にサービスを受けられる市役所〉へ進化するためにさまざまな施策を検討中です。その一つが、ワンストップ窓口による窓口業務の最適化です。現在は、おくやみコーナーなど、一部の手続きで〝書かない窓口〟に取り組んでいますが、将来的には対象手続きの拡大も構想しています。
 いま、社会環境がかつてないスピードで変化する中で、自治体も思い切った改革が不可欠です。そのためにもDXを単なるデジタル技術の導入にとどめず、組織文化や意識の変革を通して、新たなサービスの創出や働き方改革へつなげていきたいと考えています。
( 取材協力:株式会社デンサン)

左から、松浦課長補佐、堀口課長、三輪課長、本市課長補佐

左から、松浦課長補佐、堀口課長、三輪課長、本市課長補佐

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