スマート行政DX推進を支援する

情報誌 「新風」(かぜ)

2025年10月号Vol.140

【スマート行政最前線】TKCが目指す「スマート行政DX」とは

株式会社TKC 自治体DX推進本部 武長 浩史

 TKCでは、いま「スマート行政DX」を掲げてシステムやサービスの強化拡充を図っています。これは「行政効率向上による住民福祉の増進」を事業目的の一つに掲げる企業として、お客さまを支援する上での理念や活動目的を示した〝スローガン〟です。
 目指すのは、〈住民との接点から、職員の皆さんの業務に至る業務プロセス全体を、デジタル技術で変革する〉こと。『自治体DX推進計画』が一区切りを迎えるいま、改めてここに込めた思いや取り組みなどをご紹介します。

全ての起点となる標準化

 2020年12月に『デジタル社会の実現に向けた改革の基本方針』が閣議決定され、今後、日本が目指すべきデジタル社会のビジョンが示されました。『自治体DX推進計画』も、その一連の施策として策定されたものです。
 そうした時代の転換点にある地方公共団体を支援するために、当社は何ができるのか──「スマート行政DX」は、こうした問いから生まれました。
 根幹をなすのは、〈基幹業務システム標準化・共通化〉〈行政手続きデジタル化〉〈内部事務デジタル化〉を一体として推進するという考え方であり、それぞれを連携させることで〝新たな価値創出〟と〝顧客への貢献〟を目指しています。
 2040年問題に備え、少ない職員でも持続可能な自治体経営を実現するには自治体DXが不可欠で、そのベースとなるのが〈システム標準化〉です。
 現状では、まだ職員や住民のメリットが見えにくい状況ですが、標準化後には①シームレスなデータ連携、②ガバメントクラウド移行による情報セキュリティー対策の拡充、③行政手続きデジタル化による職員・住民の利便性向上──などが期待されています。その実現のためにも、自治体は標準化を機に行政サービスの高度化へと大きく舵を切ることが求められます。
 当社では、システム標準化は業務効率化と住民サービスの向上を図るための必要条件であり、重要な法改正と捉え、全てのお客さまの期限内移行完了を目標に掲げました。
 21年に標準化対応の調査研究組織を、また22年5月には「標準化推進プロジェクト」を発足。標準仕様に適合するシステムを開発するとともに、「自治体DX推進セミナー」など情報発信により移行準備を支援してきました。また、移行作業ではプロジェクト管理ツールで課題や進捗状況をお客さまとも共有し、〝ワンチーム〟となった取り組みを進めています。

一歩先行くサービスのために

 標準化によってシステム間連携が容易になることで、一段と進むのが「フロントヤード改革」です。すでに多くの自治体が〈住民接点の多様化〉により住民サービスの向上に取り組んでいますが、数年後には〈フロント/バックヤードのデータ連携〉による業務効率化が当たり前の姿となるでしょう。
 さらに「公共サービスメッシュ」など情報連携基盤が整うことで、行政の保有データを安全かつ円滑に連携・活用して、申請手続きの入力省略・簡素化や、住民への漏れのない情報提供、申請のプッシュ通知、自治体の審査効率化・精度向上──といった新たなサービスの世界が広がります。
 先進団体では、すでに標準化後を見据えた具体的な検討を始めています。
 一例が〈窓口改革〉で、ここにきて書かない窓口を拡充して業務プロセスを抜本的に見直そうというお客さまが増えてきました。また、内部事務では電子決裁などの導入による業務改善に加え、持続可能な行財政経営の視点から〈公会計情報の活用〉に取り組む動きも広まっています。

 そうしたお客さまの要望に応えるには、スマート行政DXに掲げる三つのサービスの連携により新たな価値を創造し、自治体の業務やサービスに変革をもたらすことが欠かせません。
 例えば、フロントヤード改革ではバックヤードに蓄積された情報をいかに有効活用するかがポイントで、現在、お客さまと〈パーソナルデータを活用したオンライン申請〉の実証事業を進めています。
 支払い手続きのデジタル化では、財務会計システム(公会計システム)と地方税電子申告支援サービスの連携による〈公金収納のデジタル化〉対応を予定しています。また、財務会計システムとオンライン申請を連携することで、申請手続きの受付から審査、決裁、財務会計処理まで一連の業務を効率化でき、そのための機能強化・拡充にも取り組んでいます。
 さらに、持続可能な行財政経営の観点では、当社がこれまで一部上場企業から中小企業等まで約60万社(*)を支援してきた知見を生かし、公会計情報と各種データを連携させ、財政状況の見える化や経営の効率化にも貢献できると考えています。
 加えて、〈限られた人員で、多様な住民ニーズに応え、質の高い行政サービスを提供する〉ことを支援するため、研究を進めているのがAI技術の活用です。生成AIやAIエージェントなど高度な技術と、システム・サービスをどう組み合わせ、どう活用すれば、職員も住民も安心・安全・便利に利用いただけるか検討を重ねています。

◇   ◇   ◇

 『自治体DX推進計画』の対象期間は来年3月末までですが、国は引き続き自治体DXを推進する方針を示しており、自治体には行政手続きデジタル化や内部事務デジタル化の取り組みを一段と加速することが求められます。
 TKCでは、これからも「スマート行政DX」を合言葉に〝一歩先を行く〟サービスやサポートの提供に努め、お客さまのデジタル改革をご支援してまいります。

* TKCの会計システム利用社数

TKCが目指す「スマート行政DX」

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