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情報誌 「新風」(かぜ)

2025年10月号Vol.140

【トレンドビュー】個人住民税申告の電子化

地方税共同機構 システム部システム企画グループ 白土繁輝

 令和4年度税制改正において、納税者等が地方公共団体に対して行う全ての申告・申請等について、eLTAXを通じて行えるようにすることが定められました。本改正を受けて地方税共同機構では、法令に基づく申告・申請等に関する電子化を段階的に進めており、今年度、eLTAXを通じた個人住民税申告の提出が可能となります。
 本稿では、来年1月5日から運用が開始される個人住民税申告の電子化の概要と、これに伴う市区町村の対応について紹介します。

1.個人住民税申告の電子化について

 個人住民税申告は、確定申告が不要とされる場合などに市区町村へ所得の申告を行うものであり、全国で年間約300万件提出されています。本申告をオンラインで対応することで、申告書の手書き作成や窓口提出・郵送を不要とし、利便性の向上および当該事務の効率化を図ります。
 利便性の向上に向けた仕組みとしては、申告年の収入の状況で入力内容を変更していることがあります。
 個人住民税申告は収入がなかった方の申告も多く、その場合、入力が必要な項目は限られます。そのため、最初に収入の有無を選択してもらうことで、入力項目の絞り込みを可能としています。また、それぞれの項目についても、入力が必要となる場合に表示される仕様とすることで、利用者がどの項目を入力すればよいのか容易に認識できるようになっています。
 また、収入があった方も〈給与所得のみ〉〈公的年金所得のみ〉の場合は、源泉徴収票の様式に沿って入力できる仕様とすることで申告書の作成を容易にしています。
 市区町村においては、申告書の内容の真偽の確認が必要になりますが、項目によって資料の添付を必須にするシステム制御や入力欄の誘導により、入力漏れや入力誤りを抑えることが期待でき、申告者への問い合わせ減少につながります。

2.電子申告受付の仕組み

 図表に電子申告受付の概要を示しました。申告手続きの主な流れは次のとおりです。
①申告者は、eLTAXホームページ、市区町村ホームページまたはマイナポータルを経由して、個人住民税の申告を行います。
 その際、マイナンバーカードを利用し、氏名・住所等の入力、電子署名を行います。
②eLTAXから、電子署名が付された住民税申告データをマイナポータル申請管理へ送信します。
③市区町村職員は、マイナポータル申請管理において住民税申告データをダウンロードし、基幹税務システムにアップロードするか、もしくは申告書を印刷して必要項目を基幹税務システムに手入力します。
 なお、APIを利用して基幹税務システムに直接取り込むことも可能です。

3.電子申告受付の準備

 電子申告受付に伴い、市区町村では以下の対応が必要です。

1. マイナポータルへの設定

 市区町村は9月に提示した手順書をもとに、マイナポータル申請管理の手続き登録が必要となります。税担当部門での端末設定、権限設定、疎通試験が必要と想定していますので、市区町村内のマイナポータル申請管理を管理している部門との調整をお願いします。

2. 団体連動試験の実施

 9月に団体連動試験資料や暫定版のマニュアルを公開し、オンラインで試験に関する説明会を行いました(当機構のホームページでアーカイブ動画を10月上旬公開予定)。それらを確認いただいた上で、団体連動試験の実施をお願いします。
 試験では、「eLTAX個人住民税電子申告システム」で自団体宛てに送信した申告データを、「マイナポータル申請管理」で受信できることの確認を必須としています。また、基幹税務システム等の改修を実施した場合の連動試験は、市区町村ごとに任意で行うこととしています。

3. 運用方法の確認

 マイナポータル申請管理は、データを受信した翌開庁日(受信日が土日祝の場合は翌々開庁日)を初日として、5開庁日目の午前0時10分にデータを削除する仕様となっています。そのため速やかなデータ取得が求められますので、個人住民税申告データを基幹税務システムに取り込むまでの運用の確認をお願いします。

 その他、eLTAX個人住民税申告システムの利用は、マイナポータルとeLTAXホームページに加えて、各団体ホームページからのアクセスを想定しています。そのため、サービス開始に合わせて、ホームページでリンク先(eLTAXホームページで案内予定)を案内するとともに、別途用意する広報用資材(eLTAXホームページに掲載)を活用して、ホームページへのバナー掲載やリーフレット配布など周知活動への協力をお願いします。

4.eLTAXの今後

 地方税共同機構では、個人住民税申告の電子化の後、「eLTAX次期更改・公金収納のデジタル化」(2026年9月予定)、「納税通知書等の電子化」(27年4月予定)等、規模の大きなシステム開発を控えています。
 これらについては、当機構のホームページや説明会等を通じて随時情報発信を行う予定です。引き続きこれらの動向に注目していただきますようお願いいたします。

個人住民税申告の電子化(イメージ)

導入システム