掲載日:2012.11.05

グループ経営のための連結決算

海外子会社の管理①~海外進出の際の注意点~

あがたグローバル税理士法人

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
公認会計士・税理士 大野 崇、野村 昌弘
公認会計士     稲垣 泰典

上場会社では当たり前になった連結決算。情報開示という面が強く認識されていますが、グループ経営の意思決定のための会計として、時として非上場会社にも連結決算・連結管理会計の導入が必要なのではないでしょうか?

このコラムでは、連結決算を組むメリット、単純合算では見えてこない点、グループ経営のためのキャッシュ・フロー計算書、決算早期化、予測連結、海外子会社の連結等、上場/非上場に関わらず、グループ経営の観点から連結決算を分かりやすく解説します。

 縮小する日本経済に見切りをつけ、海外に活路を見出そうとする日本企業が、上場・非上場を問わず急増しています。しかし、金融機関や外部コンサルタントに高い報酬を払って海外進出支援を依頼し、苦労して海外に事業所や工場を持つことができたとしても、その後の事業運営に苦労する会社は後を絶ちません。本社が定期的に受け取っているレポートを鵜呑みにしていたがために、海外子会社の管理がおざなりになり、何か怪しいと思って本社の経理や監査部がチェックしに行くととんでもないことになっているという話は時々耳にする話です。また、取引会社に連れられて現地に工場を作って海外進出したが、取引会社はすぐに撤退してしまい自社だけが取り残されたという話も耳にします。海外進出する際に、海外子会社の管理の方針をどのように考えるかは大きなテーマです。

(1)事業可能性の検討は慎重に

 企業がはじめて海外進出を検討する際は、事業可能性を検討します。そのために、まずは自社の事業活動について自己分析することが重要です。今後も国内事業のみを展開していく可能性はないのか、自社にとって海外展開は必要不可欠なものか、今までの自社の事業活動を主に以下のような観点から分析してみます。

  • 国内において販路開拓の努力を積極的に行ってきた。
  • 海外からの製品や技術の流入に対抗して対策を行ってきた。
  • 国内市場での多角化や異業種連携などへチャレンジしてきた。
  • 一貫したビジネスモデル(製販一体)の確立を行ってきた。
  • 技術を伝承するための人材を、積極的に育成してきた。

 次に、海外展開を進めていくにはヒト・モノ・カネの準備が必要です。そのため、自社の経営力、自社製品・技術力・営業力の強みについて、主に以下のような観点から自己分析してみます。

  • 海外で必要となる中核人材の獲得と育成を行っている。
  • マーケティング、開発設計、営業、顧客対応の自社体制ができている。
  • 自社製品や技術に、オンリーワンの優位性がある。
  • 自社製品や技術・製品コストに価格弾力性がある。
  • 投資や運転資金を準備でき、金融機関からの支援がある。

 以上の自己分析を行ったうえで、次に海外展開先の事情を理解しているかどうかを確認していきます。海外展開の成功の秘訣は、最終的には「海外展開先の事情を正確かつタイムリーに把握しているか」に尽きると言っても過言ではありません。具体的には以下のような項目を確認します。

  • 海外展開予定先調査のために何度も現地へ渡航している。
  • 海外展開予定国の国や地域別情報について理解している。
  • 海外展開予定国の商慣習や規制について理解している。
  • 海外展開予定先での販路や調達先について見込先がある。
  • 現地情報の入手先が多岐にあり、信頼できる現地パートナーがいる。

 さらに、海外展開先での課題を想定しているかについて、以下のような観点からの確認を行います。

  • 海外展開予定国の税務や法律について理解している。
  • 知的財産権(特許・意匠・商標)に関して対策を立てている。
  • 労務管理(雇用、就業、教育)について対策を立てている。
  • 取引に関わる契約書とその内容について理解している。
  • 海外展開予定国での輸出入取引について理解している。

 以上のような分析を行って、海外展開の目的が明確になってから、次のステップとして詳細な市場調査と事業計画を策定していきます。そして、事業計画を基に準備を進め、事業を具体化していくのです。このように、海外展開を具体化していくためにはより慎重な分析・準備を行っていく必要があります。

(チェックリストの出典は経済産業省中部経済産業局「はじめての海外展開」より)

(2)現地会計スタッフと会計事務所の選定

 海外展開には「中核人材の獲得と育成」が必要不可欠です。製造・営業の中核人材が必要なだけでなく、日本語が話せる会計・税務の中核人材が必要です。大手上場企業であれば日本から従業員を派遣することもできると思いますが、非上場会社にとってはなかなか難しい課題です。

 そこで重要になってくるのが海外子会社の面倒を見てくれる会計事務所の選定です。日本語の話せるスタッフが複数いるかどうか、信頼の出来る事務所かどうか、会計税務両面からアドバイス出来る体制になっているか、現地基準だけでなく日本基準、場合によっては国際財務報告基準(IFRS)や米国基準にも精通しているか等、慎重に判断していきます。その際、顧問税理士や現地パートナー、アドバイザー等にも相談してみるとよいでしょう。

(3)定期的な月次決算報告と親会社管理担当者のチェック

 海外子会社をブラックボックスにさせないようにするため、会計事務所にも協力してもらって、毎月定期的に月次決算報告(財務諸表、営業の状況、生産の状況、在庫の状況、人事の状況、政治経済情勢等)を親会社に提出するような体制にしなければなりません。そして、月次決算報告の精度を高めることができるように、また現地の問題点がどこにあるのか、その対応策を検討していくため、親会社の管理担当者は定期的に海外子会社を訪問してチェックを行うことが極めて重要です。

 実際現地を訪問してみると、例えば、現地の社長、従業員、会計事務所間で業務のすり合わせがきちんとできておらず、そもそも業務フローの理解が進んでいなかったため、在庫の動きに合わせてどのような伝票が回っているのか、どのようにすれば原価を適時に把握できるかを考えていなかったといった問題点に気付くことでしょう。また、取引先から請求書が到着するのも遅れがちで、会計事務所も数字の集計が遅れてしまっているという問題があることが分かるかもしれません。そのような問題点に対して一つ一つ適切な対応を取っていくことが改善につながっていきます。

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公認会計士     稲垣 泰典

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