掲載日:2013.02.25

グループ経営のための連結決算

連結会計の今後の方向性

あがたグローバル税理士法人

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
公認会計士・税理士 大野 崇、野村 昌弘
公認会計士     稲垣 泰典

上場会社では当たり前になった連結決算。情報開示という面が強く認識されていますが、グループ経営の意思決定のための会計として、時として非上場会社にも連結決算・連結管理会計の導入が必要なのではないでしょうか?

このコラムでは、連結決算を組むメリット、単純合算では見えてこない点、グループ経営のためのキャッシュ・フロー計算書、決算早期化、予測連結、海外子会社の連結等、上場/非上場に関わらず、グループ経営の観点から連結決算を分かりやすく解説します。

 上場会社の決算といえば、連結ベースが当たり前の時代になりました。傘下に多くのグループ会社を持つ会社では、連結で決算を見ないとグループ全体の実態はわからないため連結決算書が求められています。これに対して、非上場会社ではグループ会社を持っていても連結決算書を作成している会社は少ないと思います。今後は、非上場会社においても、グループ全体の実態を把握しておかないと意思決定を誤る可能性があるため、連結決算書を作成し、企業経営に活かしていく必要があります。

(1)今後の連結会計制度の方向性

 現状では、多くの上場会社が日本の連結会計基準に従って連結決算書を作成しています。前回ご説明したように、日本の会計基準において連結と個別の取扱いが異なる会計基準が公表され、連結と個別の決算書をそれぞれ考える必要性が生じてきています。これは、連結決算は情報提供機能を重視していますが、個別決算は会社法や税法との関係を考慮しないといけないという違いがあるためです。
 今後の連結会計制度を考える場合には、現在議論されている国際財務報告基準(IFRS)の適用も視野に入れる必要があります。現状、上場会社で一定の要件を満たす会社についてはIFRSを任意適用できるとされていますが、実際任意適用会社は10社程度といった状況です。
 IFRS強制適用については、2009年6月の「我が国における国際会計基準の取扱いに関する意見書」(企業会計審議会)において、「強制適用の判断の時期については、とりあえず2012年を目途とすることが考えられる」とされ、2012年に強制適用の判断をした場合には、「2015年又は2016年に適用開始」することが適当であるとされていました。そのなかでは、IFRSは連結決算において先行的に適用し、単体決算ではいずれIFRSに移行していくという「連結先行」とされていました。
 しかし、結局2012年中のIFRS強制適用についての判断は見送られてしまいました。企業会計審議会から「国際会計基準(IFRS)への対応のあり方についてのこれまでの議論(中間的論点整理)」(2012年7月2日)が公表され、その中ではIFRS強制適用について、いくつかの論点で意見にかなりの隔たりがあり、さらに審議を継続して議論を深める必要があるとの記述があります。また、中間的論点整理では、前述の「連結先行」ではなく、「連単分離」を前提に最もふさわしい対応を検討すべきであるとしています。
 このように、日本では中間的論点整理の段階ですが、国際的には多くの国がIFRSを適用している状況にあります。そのような状況において、日本も将来的には現状より踏み込んだ判断をしていくことになると思われます。

(2)連結決算の活用

 連結決算は、情報提供機能が主たる機能と言われていますが、一方で経営に活かしていくという観点も必要になります。連結会計制度が上記のように変わったとしても、最終的には会計を経営に活かしていくという観点が重要である点は変わりません。その手法として、本連載で紹介した経営管理的な情報を連結ベースで作成することが考えられます。単に連結決算書を作成するだけでなく、そこから経営判断に資する情報を捉え、活用していくことで連結決算を作成する意味が増すものといえます。

①管理情報としての活用
 管理会計を連結ベースで考える場合には、その企業グル―プに適した形で実施していくことが重要です。企業グループの形態も、製造、販売に会社が分かれている垂直型や事業ごとに会社が分かれている水平型など様々です。したがって、連載の中でご紹介した予算管理の適用の仕方、セグメントの考え方はそれぞれの会社に適した形で実践していくことが求められます。
②子会社の管理面での活用
 親会社において子会社の決算書をきちんと見ることが重要です。連結決算書を適正に作成するためには、子会社の決算内容についても十分把握しておく必要があります。子会社の決算書をより正確に把握することによって、子会社の管理水準を把握できるとともに、子会社に対する牽制機能を働かせるのに効果があるものといえます。また、子会社から連結決算に必要な情報を入手することで、それに合わせた管理を実施していくことが、結局は子会社の管理水準の向上につながります。

(3)非上場会社にとっての連結決算書

 非上場会社にとっては、(1)で述べた連結決算に関する制度的な制約はありません。そのため連結決算書の作成は、企業グループの状況をより正確に掴むために作成すべきものといえます。企業グループの状況を把握することで、的確な意思決定ができます。
 連結決算書を作成することにより、上記(2)のように活用出来るというメリットがあるほかに、金融機関に対する信用力の向上が図れます。銀行等の金融機関では、融資判断についてグループ会社の決算数値も確認しています。そのため、連結ベースの決算書を提出できるということは、会社が一定のレベル以上の管理を実施し経営を行っているという印象を金融機関に与えることができます。それが会社の信用力となり、借入金利を低下させる効果も期待できます。

 昨今の経営環境が厳しい状況においては、グループ全体の現状を把握し、個社単位ではなくグループ全体としての大局的な視点による経営が重要です。そのために連結決算を上手く活かしたグループ経営が望まれます。グループ経営の効果的、効率的な経営の実践にあたり、12回にわたって連載した「グループ経営のための連結決算」がその一助になれば幸いです。

プロフィール

公認会計士・税理士 大野 崇、野村 昌弘
公認会計士     稲垣 泰典

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