更新日 2015.01.26

平成26年度(平成27年3月期)税務申告の直前対策

第1回 法人税申告の直前対策①

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士・公認会計士 鯨岡健太郎

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士・公認会計士 鯨岡 健太郎

平成26年度では、投資減税措置等や所得拡大促進税制の拡充に加え、民間投資と消費の拡大のための措置が講じられています。当コラムでは、平成27年3月期決算法人のための直前対策として、法人税・消費税の決算・申告に関する留意点を解説します。

1.はじめに

 年も改まり平成27年を迎え、3月決算法人においては年度決算・申告の時期が目前に迫ってきました。決算・申告実務を効率的に進めていくためにも、平成27年3月期ではどのような税制が新たに適用されるのか、そして年度内に準備しておくべき点はないかを改めて確認しておくことは重要です。
 そこで本コラムでは、2回にわたり、平成27年3月期決算における税務申告の直前対策として、関連する内容について紹介していきます。

2.平成27年3月期決算に適用される税制改正

 まずは、平成27年3月期決算において適用されることとなる主な税制改正項目について列挙しておきます。ほとんどは平成26年度税制改正によるものですが、一部の項目は平成25年度以前の税制改正によるものもあります。

(平成26年度税制改正)

  • 復興特別法人税の1年前倒し廃止
  • 地方法人税の創設(平成26年10月1日以後開始事業年度より)
  • 生産性向上設備投資促進税制の創設
  • 研究開発税制の拡充
  • 事業再編促進税制の創設
  • 所得拡大促進税制の拡充
  • 交際費課税の緩和

(平成24年度税制改正 経過措置の適用)

  • 貸倒引当金の廃止

 また消費税については、通常の税制改正のスケジュールとは異なり、平成24年8月22日に交付された「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律」(抜本改革法)に基づき、平成26年4月1日より税率が5%から8%に引き上げられているのは既にご承知のことと思います。
 このほか、該当は少ないかもしれませんが「特定新規設立法人の納税義務の免除の特例」の規定が、平成26年4月1日以後に設立された法人に対して適用されます。

3.法人税申告の直前対策

(1) 復興特別法人税の1年前倒し廃止

 これまで、基準法人税額に対して10%の税率で課されていた復興特別法人税は、当初3年間にわたり課税されることとされていましたが、1年前倒しで廃止となりました。
 これを受け、従来、復興特別法人税から控除されていた復興特別所得税額は、通常の所得税額と合わせて法人税額から控除するように改められました。
 そのため、当初は(平成49年まで継続する)復興特別所得税額の還付を受けるために復興特別法人税申告書は作成・提出し続けなければならないとされていましたが、この実務が廃止されます。

(2) 地方法人税の創設

 平成26年10月1日以後開始事業年度より、地方法人課税の偏差の是正を図るため、「地方法人税」という新たな税目が創設されました。適用期日の関係で、ほとんどの3月決算法人は翌期(平成28年3月期)からの適用になります。
 これは基準法人税額に対して4.4%の税率で課税されるもので、復興特別法人税とは異なり終了期限は定められていません。これに合わせ、法人住民税及び法人事業税並びに地方法人特別税の税率も改正されていますが、課税主体が変更されるだけで、基本的に法定実効税率には影響はありません(連結法人を除く)。
 また、復興特別法人税とは異なり、地方法人税申告書は法人税申告書と統合されていますので、別途申告書を作成する必要はありません。

(3) 生産性向上設備投資促進税制の創設

 青色申告法人が、平成26年1月20日(産業競争力強化法の施行日)から平成29年3月31日までの期間内に一定の「生産性向上設備等」を取得して事業の用に供した場合には、取得価額相当額の即時償却(平成27年度まで)または税額控除(建物・構築物は3%、それ以外の設備は5%。平成27年度まで)を行うことができます(措法42の12の5⑦~⑨)。
 「生産性向上設備」は、「先端設備」(いわゆるA類型)、と「オペレーション等改善設備」(いわゆるB類型)の2つに分類され、それぞれの類型ごとに対象資産が異なるほか、該当の設備が「生産性向上設備」に該当することについて一定の確認手続が必要とされます。
 A類型は、該当設備を担当する工業会等から、設備メーカーからの申請を受けて「確認書」の発行を受けます。企業側では特段の準備は不用ですが、確認書は確定申告書に添付することが実務上求められるため、その入手までの時間的余裕を確保できるかがポイントになります。
 これに対してB類型は、「設備投資計画における投資収益率が15%以上(中小企業者等は5%以上)であることについて経済産業局の確認を受けたもの」が生産性向上設備の要件となります。このため企業では、作成した設備投資計画について公認会計士又は税理士の「事前確認」を受け、その上で経済産業局から「確認書」の交付を受け、その後該当設備を取得するという流れになります。このようにB類型では、確認書の交付までにある程度の時間を要することが見込まれるほか、確認を受ける前に設備を取得してしまった場合、その設備は「生産性向上設備」の要件を満たさないこととなりますのでご注意ください。
 また、いずれの類型についても、資産の種類ごとに最低取得価額が定められていますので、あわせてご確認ください。

(4) 研究開発税制の拡充

 平成26年度税制改正では、研究開発税制のなかの「上乗せ措置」である「増加型」についての改正が行われました。
 改正前の制度における税額控除限度額は、増加試験研究費(試験研究費から比較試験研究費を控除した金額)に5%を乗じた金額とされていましたが、改正により、控除割合が増加試験研究費割合(増加試験研究費が比較試験研究費に占める割合)にスライドすることとなり、最大30%まで控除できるようになりました(措法42の4⑨一)。
 その他の措置(総額型、高水準型)については改正されていません。

(5) 事業再編促進税制の創設

 国内の産業競争力を高めるための事業再編を促進するための措置として、産業競争力強化法に定める「特定事業再編計画」の認定を受けた合弁会社に対する出資等を行う企業に対し、その出資等の70%相当額まで「特定事業再編投資損失準備金」を積み立てた場合には、その積み立てた金額を損金の額に算入できることとされました(措法55の3①)。
 準備金を積み立てることができるのは、原則として、対象法人が特定事業再編計画の認定を受けた日から同日以後10年を経過するまでの期間ですが、対象法人が3期連続で営業利益を計上した場合には、その事業年度終了の日までで積立期間が終了します。
 積み立てられた準備金は、積立期間終了日を含む事業年度の翌事業年度から、5年間で金等に取り崩して益金の額に算入することとなります(措法55の3③)。ただし、特定事業再編計画の認定取消等、一定の事由が生じた場合には、その事由の生じた日の属する事業年度においてさらなる取崩が生じることがあります(措法55の3④)。

プロフィール

税理士・公認会計士 鯨岡 健太郎(くじらおか けんたろう)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員

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税理士法人ファシオ・コンサルティング

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