更新日 2019.08.05

連結納税の地方税の取扱い

第1回 連結納税における地方税の計算の仕組み

  • twitter
  • Facebook
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士・公認会計士 足立好幸

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士・公認会計士 足立 好幸

地方税(法人住民税及び法人事業税)については、連結納税制度が導入されていないため、連結納税制度を適用している場合であっても、各連結法人は地方税を単体で申告・納税することになります。しかしながら、それぞれの課税標準は連結納税制度を適用した金額をもとに計算することとされており、その取扱いは理解しづらくなっています。
当コラムでは、連結納税における地方税の取扱いの留意点について解説します。

はじめに

 連結納税制度において、地方税(住民税と事業税)は、単体納税(単体申告)と“同様”に計算される。ここで実務上ややこしいのは、“同様”ではあるが、“全く同じ”ではないことである。
 連結納税制度については、制度そのものである法人税の取扱いについては数多くの解説書があるが、連結納税制度を採用している企業、つまり、連結法人(連結申告法人)において住民税と事業税がどのように計算されるか、について解説しているものはそれほど多くはない(「地方税は単体納税と同じ取扱いである」という一言で片付けられることも多い!)。
 そのため、実務上、連結納税制度(法人税)については理解が出来ていても、住民税、事業税については理解が追い付いていないことが多い。
 そこで本コラムでは連結納税における地方税の取扱いの留意点について解説していきたい。
 なお、特段の断りのない限り、住民税については、法人税割、事業税については、所得割と付加価値割の単年度損益について解説する。
 また、「連結法人」という場合、連結申告法人を意味している。つまり、連結親法人事業年度の中途で連結納税から離脱する場合など、連結子法人が「連結法人の単体申告」を行う場合は解説の対象外としている。

1.連結納税における地方税の計算の仕組み

 連結納税制度を採用している場合でも、住民税及び事業税は、各連結法人を計算単位として申告・納付を行うことになる。
 その意味で単体納税と同じであるといえるが、住民税(法人税割)の課税標準は連結法人税の個別帰属額を基礎に計算し、事業税(所得割)の課税標準は個別所得(連結所得の個別帰属額)を基礎に計算することになるため、あくまで連結確定申告書の数値を課税標準として利用することになる(地法23①四の二・四の三、292①四の二・四の三、72の23①二)。つまり、地方税を単体納税と同様に計算するために、連結納税の法人税とは別に決算を行う必要はない。

(1) 連結納税制度の住民税の計算

 具体的には、連結納税における住民税の計算方法は以下のとおりとなる。

 上記より、住民税は、基本的に単体納税と同じ計算の仕組みであるが、住民税でやっかいなのは、住民税独自の欠損金として、「控除対象個別帰属調整額」と「控除対象個別帰属税額」の控除が生じることである。
 この住民税独自の欠損金については第2回のコラムで詳細を解説したい。

(2) 連結納税の事業税の計算

 連結納税における事業税の計算方法は以下のとおりとなる。

 上記より、事業税は単体納税と同じ計算の仕組みであり、住民税ほど、連結納税に振り回されず済んでいるといえる。

 連結納税における住民税と事業税の計算の仕組みをイメージした上で、次回からは住民税と事業税の連結納税特有の取扱いの留意点について紹介したい。

  • twitter
  • Facebook

この連載の記事

テーマ

プロフィール

この執筆者の記事一覧へ

免責事項

  1. 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
  2. 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
  3. 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。