掲載日:2020.09.14

中堅、大企業のための企業決算・税制上の新型コロナ対策

第2回(最終回) 税制上の措置

KC全国会 中堅・大企業支援研究会 企業グループ税務システム普及部会会員 税理士 吉田公彦

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会
企業グループ税務システム普及部会会員
税理士 吉田 公彦

今年に入って国内でも感染が拡大している新型コロナウイルスは、夏場にかけてもなかなか終息が見通せず、社会経済にも大きな影響を与え続けています。これに対して、国等は国民生活や経済活動を支えるべく様々な施策を発表してきました。メディア等を通じたものとしては持続化給付金をはじめ、個人、中小企業を対象としたものが目立ちますが、中堅、大企業に対しても、企業決算等に関する特例、救済措置、あるいは税制上の措置が整備されています。
当コラムでは、これらの決算業務に関する対応と税制上の措置についてを紹介します。

1.申告納付に係る特例、関連制度

 新型コロナウイルス感染症の社会経済に与える影響の大きさを鑑み、税制上の措置として「新型コロナウイルス感染症等の影響に対応するための国税関係法律の臨時特例に関する法律」(以下「新型コロナ特例法」)が令和2年4月30日に成立しました。これにより国税通則法その他の国税関連法律に対して特例が定められています。
 第2回では新型コロナ特例法の内容を中心に、現行税制も含め企業一般に適用可能な制度の紹介をします。

(1) 納税の猶予

 通常の納税猶予制度には「換価の猶予(国税徴収法151、151の2)」と「納税の猶予(国税通則法46)」とがあり、これらは一時に納税をすることにより事業継続が困難になる場合や、災害で財産が損失した場合に、最大で1年間納税が猶予される制度です。
 これに対し新型コロナ特例法における納税猶予の特例では、無担保、延滞税なしで納税を猶予する特例措置が設けられています。

制度 換価の猶予 納税の猶予 特例猶予
根拠条文 国税徴収法151、151の2 国税通則法46 新型コロナ特例法3
要件 事業継続または生活の維持が困難であること。(比較的幅広い) 「財産の損失が生じた場合」のみ 新型コロナウイルスの影響により事業等に係る収入に相当の減少(令和2年2月以降の1月以上の任意の期間において前年比おおむね20%以上減少)があること
担保 原則として要 原則として要 不要
延滞税 要(軽減) 免除となる場合あり 免除

 特例猶予については、令和3年1月31日までに納期限(申告、納期限が延長されている場合には延長後の納期限)が到来するものが対象となりますが、これには中間申告も含まれます。
 既に納期限が過ぎている未納の国税についても本特例の利用は可能です。もし既に通常の納税の猶予や換価の猶予を受けて、延滞税を支払済みであっても本特例の対象となれば、手続きを経た上で延滞税は還付されます。

(2) 法人税等の申告納付期限の個別指定による延長

 新型コロナウイルス感染症の影響により、法人がその期限までに申告・納付ができないやむを得ない理由がある場合には、申請により期限の個別延長が認められています。
 「申告・納付ができないやむを得ない理由」について、「 法人税及び地方法人税並びに法人の消費税の申告・納付期限と源泉所得税の納付期限の個別指定による期限延長手続に関するFAQ」 には幅広い書き方がされており、個別延長が認められるケースは多いと思われます。
 前述(1)の納税の猶予に対して、こちらは申告期限自体の延長であり、申告書に延長申請の旨を記載して提出すると、申告書の提出日が申告、納付期限となります。
 なお、この個別延長については、国税通則法11条、国税通則法施行令3条3,4項の規定に基づく延長であるため利子税や延滞税はかからないことになります。

(3) 欠損金の繰り戻しによる還付(中堅法人への拡大)
①青色欠損金の繰戻し還付
 繰戻し還付制度とは、確定申告書を提出する事業年度に欠損金額が生じた場合、その欠損金額をその事業年度開始の日前1年以内に開始したいずれかの事業年度に繰り戻して法人税額の還付を請求できるというものです。(法法80①)
 つまり「前期の所得」と「当期の欠損金」を相殺し、前期に納付した税金の還付を受けることができるものですが、現行制度では資本金1億円以下の中小企業者等以外は適用が停止されていました。(措法66の13)
 これに対し新型コロナ特例法により、令和2年2月1日から令和4年1月31日までの間に終了する事業年度に生じた欠損金については、資本金1億円超10億円以下の中堅企業についてもこの規定が適用可能となりました。(新型コロナ特例法7~9)
 ただし、資本金10億円以下であっても大規模法人との間に完全支配関係のある法人については対象とならないためご注意ください。
②災害損失欠損金の繰戻し還付
 災害が発生し、棚卸資産、固定資産又は一定の繰延資産に損失が生じた場合には、災害欠損事業年度の欠損金額のうち、その災害損失からなる部分については、その災害欠損事業年度開始の日前2年(青色申告の場合)以内に開始した事業年度に繰り戻して法人税の還付を受けられる制度が現行制度でも整備されており、中小企業者等に限らず適用が可能となっています。(法法80の5)
 なお、対象となる災害損失については、「国税における新型コロナウイルス感染症拡大防止への対応と申告や納税などの当面の税務上の取扱いに関するFAQ」(以下、「国税庁FAQ」)にも例示があり、棚卸資産や固定資産に生じた損失に加え、その被害の拡大・発生を防止するために緊急に必要な措置を講ずるための費用が該当します。今回の新型コロナウイルス感染症の影響による、施設や備品などを消毒するために支出した費用、感染発生の防止のため、配備するマスク、消毒液、空気清浄機等の購入費用等も対象になるものとされています。
(4) 仮決算による中間申告

 新型コロナウイルス感染症の影響により、例えば3月決算法人であれば上半期の業績を大きく悪化させている企業も多いと考えられます。
 制度としては新しいものではありませんが、法人税、消費税等の中間申告については、仮決算による中間申告を行い、当面の納税を抑えることも検討が必要です。
 その際、外出自粛要請の影響など、通常の業務体制が維持できないことにより、中間申告書を提出期限までに提出することが困難となる場合にも、上記(1)、(2)の納税の猶予や提出期限の延長が認められています。

2.その他税務上の取扱い

 (1) 寄附金とその隣接費用との判定

 企業が新型コロナウイルス感染症に関連して、取引先等の支援や社会的責任という観点から地域、生活困窮者の支援のため自社製品、マスク等の無償提供を行うことがあります。これらに関して無償による経済的利益の供与という形をとることから、寄附金への該当有無の判断が必要となります。
 国税庁では、「国税庁FAQ」において、生活困窮者等に自社製品等を提供した場合、マスクを取引先に無償供与した場合等、寄附金に該当しないケースの例示をしています。

(2) 業績悪化に伴い役員給与減額した場合の取扱い

 企業が、新型コロナウイルス感染症の影響により業績を大きく悪化させた場合、年度の途中で役員給与を減額することも考えられますが、これが定期同額給与に該当するのか否かが税務上問題となります。
 「国税庁FAQ」にもあるとおり、これらは「業績悪化改定事由」(法法34の1の1、法令69の1の1ハ)に該当し定期同額給与として損金算入することができるという判断ができそうです。
 また、同FAQでは現時点では売上等の数値的指標に大きな悪化がなくとも、役員給与の減額等を行わなければ「客観的な状況から判断して」、今後の経営状況が著しく悪化することが不可避と考えられえるならば、「業績悪化改定事由」に該当するとしています。

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プロフィール

税理士 吉田 公彦(よしだ きみひこ)
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