更新日 2022.10.24

続・疑問を解消!印紙税よくある質問Q&A

第2回 印紙税よくある質問Q&A(その2)

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TKC税務研究所 副所長 丸山 慶一郎

TKC税務研究所
副所長

丸山 慶一郎

2019年12月に掲載した「疑問を解消!印紙税よくある質問Q&A」の続編として掲載します。

当コラムのポイント

  • TKC税務研究所に寄せられた質問から12種類を厳選
  • 関連情報として根拠条文等を記載
目次

前回の記事 : 第1回 印紙税よくある質問Q&A(その1)

【Q5】覚書と印紙税

以下の内容の覚書は、加盟店契約書に係るロイヤリティの対価を定めるものですが、印紙税法別表1課 税物件表の第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当すると解するべきか迷っています、ご教示の程よろしくお願いします。

覚書

 甲と乙と丙は、甲と乙の間において締結の加盟店契約書(以下「本件契約書」という)について、以下の内容で合意したので、本覚書を3通作成し、各々記名押印の上、各1通を保有するものとする。

  1. 本件契約書第7条第1項のロイヤリティについて、甲がロイヤリティの対価として乙に提供する○○認証取得について、丙が認める認証登録機関で既に認証取得済みであることを確認した場合は毎月金14万5千円(及び消費税)とする、
  2. 乙の○○の認証取得が確認できなくなった場合、乙は直ちに丙の指定する認証登録機関で当該認証を取得することとし、甲はその履行を担保するものとする。その場合の取得費用は60万円(及び消費税)とする。

【A5】

  1. 一つの文書で、その内容に原契約書等、当該文書以外の文書を引用する旨の文言の記載があるものについては、引用されている他の文書の内容がその文書に記載されているのと同様の効果があることから、当該文書に引用されている他の文書の内容は、当該文書に記載されているものとして当該文書の課非を判断するとされ、そして、この場合において、記載金額及び契約期間については、印紙税法の規定において、「当該文書に記載された金額」(「課税物件表の適用に関する通則」4)、「契約金額の記載のあるもの」(「課税物件表」第7号「物件名」欄)などと定められていることから、当該文書に記載されている記載金額又は契約期間のみに基づいて判断することになると解されております(印紙税法基本通達第4条参照)。
     ご照会の「覚書」と題する文書(本件覚書)においては、「甲と乙との間において締結の本件契約書について、以下の内容で合意した」と記載されていることから、本件覚書に係る印紙税の課非の判断は、本件契約書の記載事項を加味して行うことになります。
  2. 本件契約書の記載事項は明らかでありませんが、ご照会の記述から、本件契約書は「継続的取引の基本となる契約書」(印紙税法施行令26条1号)に該当するものであったと推測され、本件覚書には、本件契約書第7条第1項のロイヤリティについて、本件覚書第1条に定める場合に「毎月金14万5千円(及び消費税)」とする旨が記載されており、これは、印紙税法施行令26条1号にいう「単価」を変更又は補充するものであり、本件契約書について重要な事項を変更し、又は補充するものと解される(印紙税法基本通達「別表第2 重要な事項の一覧表」5(1)参照)ことから、本件覚書は、「継続的取引の基本となる契約書」に当たることになり、そして、本件覚書には契約期間に記載がなく、「課税物件表」第7号「物件名」欄の括弧書き(除外規定)の適用がないことから、本件覚書は、第7号の課税文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当すると考えられます。
     なお、仮に、本件契約書が「請負に関する契約書」(第2号文書)であった場合でも、本件覚書には契約金額の記載がなく、それを計算することもできないことから、本件覚書は、第7号の課税文書(継続的取引の基本となる契約書)として課税されることになります(「課税物件表の適用に関する通則」3イ参照)。

【関連情報】

《法令等》
印紙税法施行令26条1項
印紙税法基本通達4条

【Q6】業務委託基本契約書の「対価及び支払方法」に関する覚書と印紙税

  1. A社とB社は、第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)に該当する「業務委託基本契約書」(本件契約書)を取り交わしておりました。
  2. 今般、本件契約書第3条(対価及び支払方法)1項の「委託業務の対価は、給油所の毎月の売上総利益から当該月の燃料油の販売数量から1リットル当たりの別途定める金額を乗じた額を差し引いた金額とする。」、同2項の「委託業務の対価は、翌月第7営業日までにB社が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。」との定めに関し、〔1〕「原契約に定める1リットル当たりの単価は、0.5円とする。」(合意事項1)、〔2〕「支払は、A社とB社の債権・債務を相殺する。」(合意事項2)とする「覚書」と題する文書(本件覚書)を作成する予定でおります。
  3. 本件覚書が印紙税の課税文書に当たるか、お尋ねします。

【A6】

  1. 原契約の変更又は補充と印紙税
     印紙税法別表第一「課税物件表の適用に関する通則」5は、印紙税法にいう「契約書」には、原契約の内容の変更を証すべき文書(変更契約書)及び原契約の内容の補充を証すべき文書(補充契約書)が含まれる旨を規定しており、課税実務上、変更契約書及び補充契約書のうち、通常、課税物件表に掲げられている契約の内容となると認められる事項(重要な事項)を変更又は補充する文書のみを課税対象として取り扱うこととされており、第7号文書については、「印紙税法施行令26条各号に掲げる区分に応じ、当該各号に掲げる要件」及び「契約期間」が「重要な事項」として例示されております。
  2. 本件覚書と印紙税
     本件覚書の合意事項1は、本件契約書第3条1項にいう「1リットル当たりの別途定める金額」、すなわち、「単価」(「単価」とは、1単位当たりの具体的な数値をいいます。)を補充するものと解され、また、合意事項2は、同2項の「委託業務の対価は、翌月第7営業日までにB社が指定する銀行口座に振り込む方法により支払う。」という「対価の支払方法」の定めを「支払は、A社とB社の債権・債務を相殺する。」に変更するものであり、「単価」及び「対価の支払方法」は、いずれも「重要な事項」に当たることから、本件覚書は、「継続的取引の基本となる契約書」(第7号文書)に該当すると考えられます。

【関連情報】

《法令等》
印紙税法別表第一「課税物件表の適用に関する通則」5
印紙税法施行令26条1号
印紙税法基本通達17条
印紙税法基本通達18条
印紙税法基本通達7号文書10
印紙税法基本通達「別表第2 重要な事項の一覧表」5

【Q7】預り金の受取書に係る印紙税

  1. 質問事項
     自動車修理業者が車検に際し預かる税金等の預り証について、印紙が必要か。
     車検終了時には、別途領収書が出ますので預り証を回収すれば印紙はいりませんか。
  2. 事実関係
     車検の請負をした場合、車検の税金と自賠責保険料を最初に預かり、納付を代行します。その折お客様から先にお金を預かる際に、領収書の代わりとして預り証をお渡しします。この場合、当社の預り金額(税金、保険料、リサイクル料)と同額の場合と少し多い場合(車検費用に充当)とがあります。

【A7】

  1. 印紙税は、法定された文書について課される税ですが、流通税の性質を持ったものと考えられます。
     このうち、17号の2文書《売上代金以外の金銭又は有価証券の受取書》は、営業に関し作成される金銭や小切手等の受取書で売上代金に係るもの以外のものについて、1通につき200円の印紙を貼付すべきこととされています。
     したがって、ご質問のように車検に係る諸費用(税金、保険料、リサイクル料等)としてあらかじめ金銭等を預かる場合にも、印紙税の課税対象となります。
     また、「預り証」とか「仮領収書」とかの名称を用いている場合であっても、金銭を受け取ったことを証することでは「受取書」あるいは「領収書」と変わりませんから、同様に課税対象となります。
  2. さらに、車検が終わって正規の領収書等を発行する場合で、先に発行した預り金の受取書を回収することとしても、先に金銭等を受け取ったという事実がなくなるというものではありませんから、これを理由に印紙税の課税を免れることはできません。

【関連情報】

《法令等》
印紙税法別表一の17号の1
印紙税法別表一の17号の2

【Q8】電子帳簿作成に関する委託契約書と印紙税

 税理士法人である乙は関与先法人甲との間で、電子帳簿保存法に基づき備え付け及び保管する電子帳簿の作成に関する委託契約を締結しました。この委託契約書により甲が会計ソフトを利用して作成した会計データ等の処理について、以下の業務を乙に委託するとしています。
(1)書面による帳簿等を作成する業務
(2)電子帳簿の保存に係る電磁的記録媒体を作成する業務
 この委託業務の対価については無料としていることから、契約書上、対価の支払関係に係る記載は一切ありません。この電子帳簿作成に関する委託契約書は、課税文書として取り扱うべきかご教示願います。

【A8】

  1. 請負の意義
     印紙税法別表第一「課税物件表」第2号文書にいう「請負」とは、民法632条にいう「請負」をいい、当事者の一方(請負人)がある仕事の完成を約し、相手方(注文者)がその仕事の結果(成果)に対して報酬を支払うことを約することによって成立する契約をいうとされています。すなわち、仕事の完成と報酬の支払いが対価関係に立つものであることから、労務の供給に対してまったく報酬が支払われないものは請負には該当せず、おおむね委任となると解されています。印紙税法上、請負契約に該当する場合は、課税文書となりますが、委任契約に係る契約書は不課税文書となります。
  2. 「電子帳簿作成に関する委託契約書」と印紙税
     お尋ねの「電子帳簿作成に関する委託契約書」(本件契約書)は、甲が税理士法人乙に対して委託する業務について、(1)書面による帳簿等を作成する業務及び(2)電子帳簿の保存に係る電磁的記録媒体を作成する業務であり、この完成を約したものと認められますが、その対価については、無償であることから、契約書上、一切記載されていません。
     しかしながら、印紙税は文書課税であることから、対価が仮に無償であったとしても、その契約書に無償であることを明示しない限り、当該契約が無償であるとは文書上認識できません。したがって、上記のように帳簿の作成という仕事の完成を約した契約書の場合、当該契約書に対価の額は無償である旨を明示しなかったときは、契約金額の記載のない請負に関する契約書に該当することになります。
     なお、本件契約書の記載内容から契約当事者が税理士法人と関与先法人との契約であり、いわゆる営業者間の取引と認められることから第7号文書(継続的取引の基本となる契約書)にも該当することになると思われます。したがって、本件契約書は、第2号文書と第7号文書のいずれにも該当する文書となりますので、印紙税法別表第1の課税物件表の適用に関する通則3イにより、契約金額の記載のない契約書の場合は、第7号文書として取り扱われることになりますので、ご留意願います。

【関連情報】

《法令等》
印紙税法別表1課税物件表第2号文書
民法632条
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プロフィール

TKC税務研究所 副所長 丸山 慶一郎

丸山 慶一郎(まるやま けいいちろう)

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