令和8年9月 国税・地方税システム更改の実務対応― KSK2・第5期eLTAX更改が上場企業経理に与える影響 ―

第1回 KSK2更改による国税申告・納付への影響

更新日 2026.06.15

税理士 長谷川 暢彦

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC全国会システム委員会 電子申告システム小委員会 委員長
TKC全国会システム委員会 法人決算申告システム小委員会 委員

税理士 長谷川 暢彦

令和8年9月24日に国税庁の基幹システム「KSK2」と地方税ポータルシステム「eLTAX(第5期)」が同時に更改されます。両システムの更改は、単なるシステムのバージョンアップにとどまらず、申告書様式の抜本的な変更、電子申告環境の変化、さらに国税・地方税当局間の情報連携強化など、上場企業の経理・税務部門にとって確認すべき実務上の対応事項を数多く含んでいます。当コラムでは、この変化の全体像と具体的な対応のポイントを解説します。

当コラムのポイント

  • 申告書様式のAI-OCR対応化による経理実務への影響
  • e-TaxのIPアドレス変更・メンテナンスへの事前対応
  • 第5期eLTAX更改による地方税の納付・申告環境の変化
目次

 国税庁は、令和8年(2026年)9月24日に約25年ぶりとなる国税の基幹システムである「KSK」の全面刷新「KSK2(国税総合管理システム次世代版)」を予定しています。この更改に伴い、多くの申告書・申請書・法定調書の様式が新しくなるほか、電子申告環境にも変化が生じます。ここでは、上場企業の経理・税務部門が特に留意すべき変更点を整理します。

1.KSK2の開発コンセプトについて

KSK2の開発コンセプトについて

出典:国税庁「税務行政のデジタル・トランスフォーメーション-税務行政の将来像 2023-」

(1) 紙からデータ中心へ 

 大法人については電子申告が義務化されていますが、中小法人においては依然申告書を書面で提出されているケースが少なくありません。
 この現状に対応するため、KSK2更改に伴い書面で提出された申告書をAI-OCR(人工知能による光学文字認識)で読み込みができるようにし、高精度にかつ自動でデータ化しKSK2に登録がされるようになります。
 この対応のため、申告書約2,300種類がAI-OCR対応の新様式に全面改定されますので、今から新様式の申告書に慣れておく必要があります。

(2) 縦割り管理から横断的一元管理へ

 法人税・所得税・消費税・相続税など、これまでは税目ごとに分断されていましたが、KSK2更改に伴いデータベースが統合され、マイナンバーや氏名等で全ての税目を横断して検索することが可能になります。これにより過去の申告内容との不一致、あるいは同族会社などの個人と法人の複数の税目にまたがる不整合や不自然な金額の動きをシステム的に簡単に発見しやすくなります。

(3) メインフレームからオープンシステムへ

 KSK2更改に伴い、外部データとの連携や拡張性を確保することで、調査官は調査先からでもKSK2にアクセスが可能になります。
 これにより、調査官が調査先で納税者の情報を瞬時に確認したり、金融機関等に対するオンライン照会やインターネット上の外部の統計データを参照して異常値の発見や分析を行うことも可能となります。

 以上のことからKSK2の導入によって税務調査の精度がさらに向上し、効率的・効果的に実施されていくことが予想されます。

2.KSK2が企業の担当者に直接影響する変更点

(1) 申告書等の様式変更(AI-OCR対応)

 国税庁はKSK2の導入にあたり、紙で提出された申告書等をAI-OCRで読み取り・データ化する処理を本格化させます。これに伴い、多くの申告書・申請書・法定調書の様式が、AIでより正確に読み取れるレイアウトへと改定されます。

主な変更の内容は次のとおりです。

① 記入欄の構成変更と識別番号の付与
 従来の様式では、金額等を1マスずつ書き込む形式が一般的でしたが、新様式では自由に書き込める欄(フリーピッチ枠)に変わります。
 また、AIが各欄を正確に認識できるよう、それぞれの様式に二次元バーコードと様式IDが印字され、さらに個々の欄に識別番号が付与されます。
 上記の改定に伴い、申告書の欄の構成や項番・レイアウトも変わることになるため、これまで紙で印刷した申告書をもとに整備されていた旧様式による社内の検閲やレビューチェックリストは、新様式に合わせて見直しが必要となります。

記入欄の構成変更と識別番号の付与

出典:会報『TKC』令和8年3月号

② 申告書の「控用」の廃止と白黒印刷化
 新様式では、申告書の控用が廃止される予定です。また、申告書の配色は原則として白黒になります。電子申告を行っている場合は受信通知(受付結果)がその役割を担いますが、控えを残す場合は申告書の保管・アーカイブ方法について、社内ルールを確認・整備しておくことが望まれます。
③ 給与所得の源泉徴収票のサイズ変更(A5→A4)
 法定調書のうち「給与所得の源泉徴収票」は、A5サイズからA4サイズへと拡大される予定です。源泉徴収票を給与明細等と一括して郵送・交付している場合は、封筒サイズや送付方法の変更が必要となる可能性があります。
(2) 納付書・所得税徴収高計算書の様式変更

 「納付書」および「所得税徴収高計算書」の様式も新しくなる予定です。
 主な変更点は以下の通りです。

  • ① 整理番号8桁は、システムで自動採番されるお問い合わせ番号13桁に変更
  • ② 用紙サイズは、A4三つ折りの複写式からA4の単票に変更
  • ③ 「納期等の区分」に元号欄を追加、「徴収義務者」欄に郵便番号・フリガナを追加

 源泉所得税の納付を紙の所得税徴収高計算書で行っている場合、しばらくは旧様式も使用可能ですが、令和10年9月までに新様式への切り替えが必要です。
 電子申告・電子納税(e-Tax)を利用している場合は、システム側での対応となりますが、使用しているソフトウェアのアップデート状況を確認してください。

(3) e-TaxのIPアドレス変更への対応

 KSK2更改に伴い、e-TaxのIPアドレスが、固定IPアドレスから動的IPアドレス(接続のたびにIPアドレスが変化する方式)に変更され、仕様変更後IPアドレスは非公開となります。
 現在、社内のファイアウォール等でIPアドレスを指定してe-Taxに接続している場合、令和8年9月24日以降はURLでの接続に変更が必要となります。社内のネットワークのファイアーオール設定やセキュリティ機器などを見直す必要があるためIT部門・情報システム部門と連携のうえ、事前に設定変更及び接続テストを済ませておくことが必須となります。

(4) e-Taxのメンテナンス(利用停止)への注意

 システム更改に伴い、e-Taxが一定時間利用できない期間が発生する予定です。電子申告の期限が更改時期と重なる場合に備え、申告スケジュールに余裕をもった対応が必要です。
 具体的なメンテナンス日時は以下の通りです。

  • ① 令和8年9月19日(土)0:00~令和8年9月24日(木)8:30
  • ② 令和8年9月26日(土)0:00~24:00

 なお、追加メンテナンスの可能性もありますので、定期的に確認するようにしてください。

(5) 今後のスケジュール

 国税庁は、本更改の実施時期を令和8年(2026年)9月24日と公表しています。様式変更については、この日を前後して順次差し替えが行われる予定です。
 現時点ではドラフト版の様式が公開されており、今後も改訂が続く見込みです。

(6) 参考情報(e-TAX処分通知の電子化拡大)

 これまで電子による処分通知は一部の手続に限られていましたが、事前同意すれば、原則すべての処分通知をe-TAXで受領することが可能になります。これにより、よりスピーディーにかつ確実に処分通知を確認することができるようになります。

 次回は、eLTAX(第5期)更改による地方税の申告・納付環境の変化と、上場企業の経理実務への影響について解説します。

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税理士 長谷川 暢彦(はせがわ たつひこ)

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