TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2012.11.12

連結納税の基礎

連結所得の計算Ⅱ ③全体での連結調整から連結所得まで

税理士 藤井規生TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士 藤井 規生
制度創設から10年が経過し、繰越欠損金の持ち込み制限の緩和や復興特別税の創設等、連結納税制度の適用を検討するためのポイントも変遷しています。
そのため、このコラムでは、連結納税制度の適用を検討するにあたり必要となる制度の基礎的な理解や制度創設時とは変わった点について、わかりやすく解説します。

 前回(第5回)は連結所得金額の計算過程の「①単体調整」と「②単体での連結調整」の部分を解説しました。今回は「③全体での連結調整」から連結所得金額までの計算過程を解説します。

<連結所得の計算>

連結所得の計算イメージは下記のとおりです(第5回掲載のものと同様)。

③全体での連結調整

 連結グループ全体の所得調整額を計算し、その調整額を一定の基準で各連結法人へ配分(個別帰属額といいます。)するものがあります。そのような項目を下記に列挙しますので、その特徴をみていきましょう。

1.受取配当等の益金不算入

<連結納税での特徴>

(1)
株式等の種類判定は、連結グループ全体で持分を計算し判定します。
(2)
受取配当等の額から控除される負債利子の計算については、連結法人全社の負債利子等の額(連結法人に支払うものを除く。)、及び総資産の帳簿価額等を把握する必要があります。たとえ受取配当等のない連結法人であっても例外ではないため注意が必要です。

各連結法人への個別帰属額の計算

  株式等の種類 益金不算入額
グループ全体 個別帰属額
完全子法人株式等 受取配当等の額×100% 各連結法人が受ける完全子法人株式等に係る配当等の額
関係法人等株式等 (受取配当等の額-負債利子)×100% 左記の金額をグループ全体で受けた配当等の額のうちに各連結法人が受けた配当等の額が占める割合で按分した額
Ⅰ・Ⅱ以外の株式等 (受取配当等の額-負債利子)×50%

2.寄附金の損金不算入

<連結納税での特徴>

(1)
連結グループ内の法人間の寄附金は、支出額の全額が損金不算入、受贈益の全額が益金不算入となります。
(2)
連結グループ外への寄附金は、連結グループ全体で損金算入限度額を計算(所得基準は連結所得金額、資本基準は連結親法人の資本金等の額)し、連結グループ全体の損金不算入額を按分します。

各連結法人への個別帰属額の計算

3.交際費等の損金不算入

<連結納税での特徴>

 連結グループ全体の損金算入限度額を連結親法人の資本金の額に基づき計算し、連結グループ全体の損金不算入額を按分します。

各連結法人への個別帰属額の計算

{留意点}

連結親法人が大法人である場合、損金算入限度額はゼロになります。
連結親法人が中小法人である場合、損金算入限度額は連結親法人又は連結子法人の支出した交際費等の合計額のうち、年600万円以下の部分90%までとされています。中小法人にとっては、連結納税によって所得加算が増加することになります。

4.繰越欠損金の控除

 繰越欠損金の控除は第2回と第3回で触れましたが、全体での連結調整において重要な部分ですから改めて復習しましょう。

(1)繰越欠損金の取り扱い

欠損金の種類 内容 取り扱い
非特定連結欠損金 連結親法人等が連結納税開始前に有していた繰越欠損金、及び連結納税開始後の連結事業年度に生じた繰越欠損金など 連結グループ全体の所得から控除
特定連結欠損金 連結納税開始時または加入時に時価評価の適用を受けない連結子法人が連結納税開始前または加入前に有していた繰越欠損金など 特定連結欠損金を有する連結子法人の個別所得金額を限度として控除

(2)繰越欠損金の控除順序

ルール1 発生年度の古い繰越欠損金から先に控除
ルール2 非特定連結欠損金と特定連結欠損金が同一年度に発生している場合には、特定連結欠損金を優先して控除(個別所得金額が限度)

 非特定連結欠損金は連結グループ全体で使用できますが、前期から繰越された連結欠損金・当期に発生した連結欠損金・当期に控除した連結欠損金はどの法人にいくら帰属していたか(連結欠損金個別帰属額といいます。)を必ず計算します。
 下記の"簡単な計算例"からわかるとおり、連結欠損金の繰越控除は連結所得計算の中では、最もわかりづらい項目です。実務では、連結納税システムを利用すれば計算に困ることはありませんが、計算結果を検証する上で仕組みを理解しておく必要があります。

(3)簡単な計算例(非特定連結欠損金の発生と控除)

X0年 連結事業年度(非特定連結欠損金の発生)

  親法人P 子法人S1 子法人S2 連結合計
当期連結所得(欠損) 2,000 △1,500 △1,000 △500
上記のうちの親法人Pの黒字はどの法人の赤字といくら相殺されたか※1   1,200 800  
翌期繰越(非特定連結欠損金個別帰属額)   △300 △200 △500
※1 子法人S1
2,000×1,500÷(1,500+1,000)=1,200
   子法人S2
2,000×1,000÷(1,500+1,000)=800

X1年 連結事業年度(X0年度に発生した非特定連結欠損金個別帰属額の控除)

  親法人P 子法人S1 子法人S2 連結合計
前期繰越連結欠損金   △300 △200 △500
当期連結所得(欠損金控除前) 3,000 △1,500 △1,000 500
非特定連結欠損金は全体及び各法人でいくら控除されるか※2   △240 △160 △400
当期の連結所得 3,000 △1,740 △1,160 100
翌期繰越(非特定連結欠損金個別帰属額の残高)※3   △60 △40 △100
※2 全体
500×80%=400<500 ∴400
   子法人S1
400×300÷(300+200)=240
   子法人S2
400×200÷(300+200)=160
※3 子法人S1
300-240=60
   子法人S2
200-160=40

「③全体での連結調整」は主に上記のものになります。

 各連結法人の当期利益をスタートとし、前回(第5回)と今回(第6回)にわたり解説してきた各種調整計算を行えば、各連結法人の個別所得金額又は個別欠損金額が算出され、その合計が連結納税の課税標準である連結所得になるのです。

 いかがですか?
 複雑そうな連結所得の計算も、「①単体調整」「②単体での連結調整」「③全体での連結調整」にわけて考えれば、意外とシンプルに理解できるのではないでしょうか?

 次回(第7回)は、今回の連結所得から連結法人税額の計算までを解説いたします。

プロフィール

税理士 藤井規生(ふじい のりお)

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