更新日 2017.04.24

平成29年度税制改正のポイント

第2回 所得拡大税制・役員給与・地域未来投資促進税制等

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

TKC全国会
中堅・大企業支援研究会

税理士 畑中 孝介

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『平成29年度 すぐわかるよくわかる税制改正のポイント』(共著・TKC出版)

経済社会の構造変化を踏まえた個人所得課税改革、デフレ脱却・経済再生、中堅・中小事業者の支援、地方創生の推進、経済活動の国際化・ICT化の対応と租税回避の効果的な抑制等に関する税務の重要ポイントを解説。

1.所得拡大促進税制の改正

 アベノミクスの重要政策に賃上げがあり、所得拡大促進税制があります。高い割合の賃上げを行う企業に対しインセンティブを与えるために、2%を超える賃上げをした企業に対し税額控除額が上乗せされます。一方大企業については賃上げ率2%以上の場合に現行制度に上乗せがされますが、「賃上げ率2%未満の場合には適用除外」となります。

(1) 現行制度の概要

 (現行)下記3要件を満たした場合には、給与等支給額の増加額の10%が税額控除されます。
(法人税額の10%(中小企業等は20%)が限度)

  • 要件①「給与等支給額」→基準事業年度(平成24年度)から一定割合以上増加
  • 要件②「給与等支給額の総額」→前事業年度以上
  • 要件③「平均給与等支給額」→前事業年度を上回る改正
(2) 改正点

 適用要件のうち、上記③の「平均給与等支給額」の増加要件が変更になります。

<大企業の場合>
 前年度比2%以上の増加が新要件となります。

  • A「平均給与等支給額」→前年度比2%以上の増加の場合
    …税額控除割合12%(2%上乗せ)
  • B「平均給与等支給額」→前年度比2%未満の増加の場合
    …所得拡大促進税制の対象外

2.役員給与の改正

 役員給与における多様な業績連動報酬や自社株報酬の導入を一層促進するため、利益連動給与の算定指標に株価や複数年度の指標を用いることが可能となるほか、対象となる給与に株式報酬信託や新株予約権が追加されます。これにより、現行の株式数ベースでの役4員給与に関しても金額ベースでの役員給与と同様の取り扱いとなり、整合性が図られることになります。

(1) 利益連動給与対象法人の見直し

 これまで利益連動給与は、非同族法人(同族会社に該当しない内国法人)が支給する者のみが認められていましたが、同族会社のうち非同族法人との間に完全支配関係がある法人が支給する給与も対象に追加されます。

(2) 利益連動給与算定指標の追加

 利益連動給与の算定指標の範囲に下記のものが追加されます。

  1. 株式の市場価格の状況を示す指標及び売上高の状況を示す指標(利益の状況を示す指標又は株式の市場価格の状況を示す指標と同時に用いられるものに限ります)
  2. 複数年度の指標(現行は単年度指標のみ)
(3) 対象となる給与の追加

 利益連動給与の範囲に業績連動指標を基礎として算定される以下のものが追加されます。

  1. 市場価格のある株式を交付する給与で確定した数を限度とするもの
  2. 新株予約権を交付する給与で確定した数を限度とするもの
  3. 新株予約権による給与

(注)新株予約権は、その行使により市場価格のある株式を交付するものに限ります。

(4) 定期同額給与の見直し

 定期同額給与の範囲に、税及び社会保険料の源泉徴収等の後の金額が同額である定期給与が追加されます。

役員報酬の類型ごとの改正概要

3.地域未来投資促進税制

 地域の中堅企業等による地域の強みを活かした先進的な事業に必要な設備投資(地域未来投資)について、新たな投資促進税制ができます。

4.中小特例の適用制限

 中小企業向けの各租税特別措置について、前3事業年度の平均所得金額が年15億円を超える事業年度の適用を停止することとされます。
 適用停止の対象となるのは租税特別措置法において規定されているもののみであり、法人税法に定める中小企業向けの措置は対象になりません。

5.確定申告書の提出期限の延長の特例

 法人が会計監査人を置いている場合で、かつ、定款等の定めにより各事業年度終了の日の翌日から3月以内に決算についての定時総会が招集されない常況にあると認められる場合には、その定めの内容を勘案して4月を超えない範囲内において税務署長が指定する月数の期間、確定申告書の提出期限の延長が認められます(常の申告期限2か月+延長4か月=合計6ヶ月)。
 ※3月決算法人の場合には最長9月末申告まで延長されることになります。

6.(法人事業税)法人事業税分割基準の見直し

 電気供給業の分割基準が見直されます。最近増加している太陽光発電事業を行っている法人などでは注意が必要です。

7.(消費税)仮想通貨に係る課税関係の見直し

 資金決済に関する法律に規定する仮想通貨の譲渡については、非課税として明確化されます。

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士 畑中 孝介

税理士 畑中 孝介(はたなか たかゆき)

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会 幹事
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員
TKC全国会中央研修所租税法小委員会委員

略歴
ビジネス・ブレイン税理士事務所所長、株式会社ビジネス・ブレイン代表取締役CEO
大手・上場企業の連結納税コンサルティング業務や組織再編アドバイザー業務を行う。上場企業から中小企業・ベンチャー企業・ファンドまで幅広い企業の税務会計顧問業務に従事。TKC企業グループ税務システムの専門委員、中堅・大企業支援研究会幹事等に就任。
著書等
  • 『消費税インボイス制度の実務対応』(TKC出版)
  • 『令和4年度 すぐわかるよくわかる 税制改正のポイント』(TKC出版)
  • 『企業グループの税務戦略-グループ法人税制・連結納税制度の戦略的活用-』(TKC出版)
  • 『CFOのためのサブスクリプション・ビジネスの実務対応』(中央経済社)
  • 「旬刊・経理情報」「税務弘報」などにも執筆
システム・コンサルティング事例
ホームページURL
ビジネス・ブレイン税理士事務所

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