TKC全国会 中堅・大企業支援研究会(中大研)

掲載日:2020.02.25

連結納税制度の見直し

第3回 損益通算と欠損金の通算

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士・公認会計士 足立好幸

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士・公認会計士 足立 好幸

令和2年度税制改正大綱では、連結納税制度の見直しと新たな制度(グループ通算制度)の創設が明記されました。当コラムでは、連結納税制度の見直しと新しいグループ通算制度について、大綱と執筆時点で公表された法案をもとに解説します。

 令和2年1月31日に令和2年度税制改正を反映した「所得税法等の一部を改正する法律案」(以下、「改正法案」という)が国会に提出された。そこで、第3回からは令和2年度税制改正大綱(以下、「大綱」という)だけではなく、改正法案を織り込んで解説していきたい。
 第3回からは、グループ通算制度における個別項目の取扱いを解説することにし、今回は、グループ通算制度における損益通算と欠損金の通算について解説したい。
 なお、本稿の意見に関する部分は、筆者の個人的な見解であることをあらかじめお断りする。

1.『損益通算』の仕組み

 グループ通算制度における損益通算の計算方法は、以下のとおりとなる。

  • 欠損法人の欠損金額の合計額(所得法人の所得の金額の合計額を限度)を所得法人の所得の金額の比で配分し、所得法人において損金算入する。
  • この損金算入された金額の合計額を欠損法人の欠損金額の比で配分し、欠損法人において益金算入する。

 連結納税制度のように、連結グループの所得金額及び欠損金額を合算して連結所得金額を計算する仕組みではなく、グループ通算制度では、プロラタ計算により、欠損法人は欠損金額を所得法人に移転し、所得法人は欠損法人から欠損金額の移転を受ける、という計算の仕組みとなる。
 そのため、連結納税制度とグループ通算制度で損益通算後の所得の金額又は欠損金額のグループ全体の合計額は同額となるが、各法人の所得の金額又は欠損金額は異なることになる。
 グループ通算制度の損益通算の計算例は次のとおりとなる。

2.『欠損金の通算』の仕組み

 グループ通算制度においても、連結納税制度と同様に、企業グループ内の繰越欠損金を企業グループ内で繰越控除することができる。
 まず、通算グループ全体の欠損金の控除限度額は、連結納税制度と同様に、以下のとおりとなる。

通算法人の欠損金の繰越控除額の計算について、控除限度額は各通算法人の欠損金の繰越控除前の所得の金額の50%相当額(中小法人等(注1)、更生法人等(注2)及び新設法人(注1)については、所得の金額)の合計額とし、控除方法は連結納税制度と同様とする。

(注1)
グループ通算制度の場合、全ての法人が単体納税の中小法人又は新設法人に該当する場合に、通算グループ内の全ての法人が中小法人又は新設法人に該当する(ちなみに、中小法人に該当する通算法人を「中小通算法人」、中小法人に該当しない通算法人を「大通算法人」という)。
(注2)
更生法人等の判定は各法人について行う。

 次に、具体的なグループ通算制度の欠損金の通算の計算方法は次のとおりとなる。

≪欠損金の通算(改正法案の法人税法第64条の7関係)≫

通算法人の欠損金の繰越控除の適用を受ける事業年度開始の日前10年以内に開始した事業年度において生じた欠損金額は、次の①及び②の金額の合計額とする。

  • ①その通算法人の特定欠損金額
  • ②各通算法人の欠損金額のうち特定欠損金額以外の金額(非特定欠損金額)の合計額を各通算法人の特定欠損金の繰越控除後の損金算入限度額の比で配分した金額

また、繰越控除はそれぞれ次に掲げる金額を限度とする。

一.特定欠損金の控除限度額
各通算法人の損金算入限度額の合計額を各通算法人の特定欠損金額のうち欠損金の繰越控除前の所得の金額に達するまでの金額の比で配分した金額

二.非特定欠損金の控除限度額
各通算法人の特定欠損金の繰越控除後の損金算入限度額の合計額を各通算法人の配分後の非特定欠損金額の比で配分した金額

 ここで、特定欠損金とは、その通算法人の所得の金額を限度として控除ができる欠損金をいい、具体的には、親法人又は子法人の開始・加入前の繰越欠損金や損益通算が制限される欠損金が該当する。
 一方、非特定欠損金(特定欠損金以外の欠損金)とは、その通算法人の所得の金額を限度とせずに控除ができる欠損金をいい、グループ通算制度の適用後に生じる欠損金が該当する。

 欠損金の通算の計算方法について、現行制度と大きく異なるのは、最初に非特定欠損金の期首残高を各通算法人の損金算入限度額(50%又は100%)の比で配分する点である。
 これは、非特定欠損金の期首残高を調整するようなイメージであり、この配分計算によって、所得金額が0となる通算法人において非特定欠損金が控除されない(所得の金額がマイナスにならない)ように手当てされている。
 また、損益通算後の個別所得を限度に特定欠損金の控除額が計算される点も現行制度と異なる(現行制度は、損益通算前の個別所得が限度となる)。それによって、グループ全体の控除額について、新制度の方が現行制度より少なくなるケースが生じる。
 グループ通算制度における欠損金の通算のイメージは次のとおりとなる。

3.損益通算できる損失等の額を当初申告額に固定する仕組み

 連結納税制度は、連結グループを一つの納税単位として、すべての連結法人の共同作業で申告書が作成されるという制度設計(一体申告方式)であるため、税務調査などで後発的な修正・更正事由が生じ、連結法人のうち1社でも所得の金額又は欠損金額の計算に誤りがある場合、すべての連結法人の所得の金額及び法人税額を再計算する必要が生じる。
 そのため、納税者及び課税庁において、税務調査が行われた後の修正・更正の事務負担が重くなるという実務上の問題が生じている。
 一方、グループ通算制度では、税務調査と修正・更正を個社で完結させるため、通算グループ内の法人のいずれかで、事後的に所得の金額又は欠損金額が違っていることがわかっても、通算グループ内の各法人(修正・更正の対象となる法人を含む)では、損益通算を期限内申告書に記載された金額のまま固定することになる。そして、修正・更正の対象となる法人のみで(損益通算は固定したまま)所得の金額又は欠損金額を変更することになる。
 同様に、通算グループ内の法人のいずれかで、事後的に所得の金額又は過年度の繰越欠損金額が違っていることがわかっても、通算グループ内の他の法人では、欠損金の通算を期限内申告書に記載された金額のままにし、修正・更正の対象となる法人のみで欠損金の繰越控除額を再計算することになる。
 ただし、欠損金の繰越期間に対する制限を潜脱するため又は離脱法人に欠損金を帰属させるためあえて誤った当初申告を行うなど、法人税の負担を不当に減少させる結果となると認められるときは、税務署長は損益通算及び欠損金の通算を当初申告額に固定する取扱いは適用せずに全体を再計算することができる。
 また、通算グループ内の全ての法人について、 期限内申告における所得の金額が零又は欠損金額がある等の要件に該当するときは、損益通算及び欠損金の通算を当初申告額に固定する取扱いは適用しない。

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プロフィール

税理士・公認会計士 足立 好幸(あだち よしゆき)
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム小委員会委員

著書等
  • 『ケーススタディでわかる連結納税申告書の作り方』(中央経済社)
  • 『連結納税の組織再編税制ケーススタディ』(中央経済社)
  • 『連結納税の清算課税ケーススタディ』(中央経済社)
  • 『連結納税導入プロジェクト』(中央経済社)
  • 『連結納税の税効果会計』(中央経済社)
  • 『連結納税の欠損金Q&A』(中央経済社)
  • 『連結納税採用の有利・不利とシミュレーション』(清文社)
  • 『グループ法人税制Q&A』(清文社)
  • 『M&A・組織再編のスキーム選択』(清文社)など多数。

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税理士法人トラスト

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