掲載日:2020.07.27

法人税法22条2項による「無償」の「資産の販売」の取扱い

第1回 22条2項の文言と立法過程からの確認

株式会社TKC 顧問 税理士 朝長英樹

株式会社TKC 顧問
税理士 朝長 英樹

法人税法22条2項は、「無償」の取引においても収益の額を益金算入するべきことを定めたものとされています。
資産を移転する取引には、それが「資産の販売」であるのか「資産の譲渡」であるのかにかかわらず、22条2項の「無償」の取引の取扱いが適用されるとする見解なども見受けられます。
本コラムでは、22条2項を正しく解釈すれば、「無償」の取引の取扱いが「資産の販売」にも適用されるという解釈は採り得ない、ということを確認します。

はじめに

 昭和40年の法人税法の制定時に創設された法人税法22条(各事業年度の所得の金額の計算の通則)の中の「益金の額」に関する定めである2項は、「無償」の取引においても収益の額を益金算入するべきことを定めたものとされています。この法人税法22条2項は、次のとおりとなっています。

2
 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。

 上記のとおり、22条2項においては、「無償」という文言は用いられていますが、「低額」等の文言は用いられていませんので、同項を文言どおりに読んだだけでは、同項は低額の取引には適用されないようにも読めるわけですが、同項が低額の取引にも適用されることは、同項の趣旨から明らかであり、それに異論はないはずです。この低額の取引に22条2項が適用される場面は、一見したところ、租税特別措置法66条の4(国外関連者との取引に係る課税の特例等)1項の移転価格税制(以下、「移転価格税制」という場合には、同条3項の国外関連者への寄附金の損金不算入制度を除いたものをいいます。)が適用される場面と似ていますので、これらの場面の類似性等を根拠として、22条2項の「無償」(以下、低額を含む場合には、括弧を付して「無償」と記載します。)の取引の取扱いを移転価格税制の取扱いと同様のものであるかのごとく捉える見解が見受けられます。
 また、「資産の販売」と「資産の譲渡」とは、資産を移転するという点では、共通性があるということになりますので、この共通性等を根拠として、資産を移転する取引には、それが「資産の販売」であるのか「資産の譲渡」であるのかにかかわらず、22条2項の「無償」の取引の取扱いが適用されるとする見解なども見受けられます。
 これらの見解によれば、「資産の販売」を無償又は低額で行った場合にも、22条2項を根拠として収益の額に対する課税が行われるということになります。
 しかし、22条2項を正しく解釈すれば、同項の「無償」の取引の取扱いが「資産の販売」にも適用されるという解釈は採り得ない、と考えられますので、本コラムでは、その点を確認してみることとします。
 なお、法人税法における「益金の額」に関しては、平成30年度税制改正によって22条2項と22条の2の2つの規定が存在するという異例の状態となったわけですが、本コラムにおいては、22条2項に例示として挙げられている「資産の販売」の取扱いについて確認を行うこととしており、22条の2に挙げられている「資産の販売」や22条2項と22条の2との関係などについては言及しないこととしている、ということを予めお断りしておきます。

1.22条2項の文言からの確認

 22条2項の文言を素直に解釈すれば、同項の「無償」の取引の取扱いは、「資産の譲渡」に適用され、「資産の販売」には適用されない、ということになります。「有償又は無償による」という文言を「資産の販売」には付さずに「資産の譲渡」に付したということには、当然、意味があると解する必要がありますが、その意味とはどういうものであるのかということを考えてみると、同項の「無償」の取引の取扱いは「資産の譲渡」に適用して「資産の販売」には適用しないというものである、と考えるのが自然です。
 「無償」の取引において、収益の額があるとすれば、それが益金算入されることとなりますので、「無償」の取引において収益の額があるとする法律の条文を設けるという場合には、当然のことながら、その対象となるものとその対象とはならないものとを慎重に判断することとなります。このため、「有償又は無償による」という文言を「資産の販売」には付さずに「資産の譲渡」に付すという判断は、軽々に行われたものではないと解する必要があります。
 ただし、何故、「有償又は無償による」という文言を「資産の譲渡」に付して「資産の販売」には付さなかったのかということについては、22条2項の文言から読み取ることはできませんし、筆者が見たところでは、同項の企画立案をされた方々が書き残されたものの中にも、説明が見当たりません。

2.22条2項の「無償」の取引の定めの立法過程からの確認

 22条2項の「無償」の取引の取扱いが「資産の販売」に適用されるのか否かということは、「資産の販売」等の例示と「無償による」という記載とのいずれが先に行われたのかということを調べることによっても確認を行うことができます。
 先に、「資産の販売」等の例示とはかかわりなく、「無償」の取引において、資産の移転等を行う側の法人と受ける側の法人とに益金算入される収益の額があるということを定めておいて、その後に、「資産の販売」等の例示を行った、ということになっていたとしたら、22条2項の企画立案をされた方々は、同項により、例示とはかかわりなく、広く取引の全般において、「無償」の取引であっても益金算入される収益の額があると認識しながら同項を定めたものと考えられますので、同項によって収益の額を益金算入する「無償」の取引の範囲は、例示にとらわれることなく、広く捉えるべきである、ということになると考えられます。そうすると、「無償」の取引であっても収益の額があるのが原則と言ってもよい状態ということになりますので、「「資産の販売」に「無償による」という文言を付さなかったのは「資産の販売」は有償で行われるのが通例であるためである」として、「資産の販売」を「無償」で行うという異例のことが行われたということであれば収益の額があるとする必要がある、というように、原則を重視する解釈もあり得る、ということになると考えられます。
 他方、先に、「資産の販売」等の例示を行っておいて、その後に、「無償」の取引について、資産の移転等を行う側の法人と受ける側の法人とに益金算入される収益の額があるということを定めた、ということになっていたとしたら、22条2項の企画立案をされた方々は、広く取引の全般において「無償」の取引に収益の額があると認識してはいなかった、と考えられますので、同項によって収益の額を益金算入する「無償」の取引の範囲は、「無償」の取引において収益の額を益金算入することとされている例示の取引だけに限るべきである、ということになると考えられます。そうすると、有償の取引で収益の額があるのが原則と言ってもよい状態ということになりますので、「無償による」という文言が付されなかった「資産の販売」においては、「無償」の取引が行われたとしても、22条2項によって収益の額があることとはされないという解釈が妥当である、ということになると考えられます。
 実際のところ、「資産の販売」等の例示と「有償又は無償による」等の記載とのいずれが先に行われたのかということを確認してみると、次の昭和40年1月6日の案には、「資産の販売」等の例示はあるものの、未だ「有償又は無償による」等の文言はありませんので、「資産の販売」等の例示が先に行われ、その後に「有償又は無償による」等の文言が挿入されたということが分かります。

2
 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、譲渡若しくは貸付、役務の提供その他の事由により当該事業年度において実現した収益の額(資本等取引に係る経済的価値の増加額に該当するものを除く。)の合計額とする。

 このため、22条2項によって「無償」の取引において収益の額があるとするものの範囲は広く捉えるべきではなく、「資産の販売」においては、「無償」の取引が行われたとしても、同項によって収益の額があることとはされないという解釈が妥当である、ということになるものと考えられます。
 また、22条2項においては、「資産の販売」に「無償による」という文言がないだけではなく、「無償」によって「役務の提供」を受けたものについても例示の文言がありませんので、この「無償」によって「役務の提供」を受けたものにおける同項の取扱いについて、同項の企画立案をされた方々が述べておられる見解からも、「資産の販売」を「無償」で行ったものにおいて収益の額があると解釈するべきか否かということを窺い知ることができます。
 昭和40年の22条2項を含む法人税法の制定を主導しておられた武田昌輔先生は、「本来は、無償による資産の譲受けを例示として掲げた以上は、無償により受けた役務の提供ついても明確な例示をすべきであるということになろう。・・・しかし、一般にはこのような無償による役務の提供を受けた場合には、これを収益として計上していない。したがって、これを収益に計上すべきことを明確にすることには問題が存したのである。・・・しかし、厳格な立場からいえば、一つの考え方としては、むしろ、無償での役務の提供を受けたのであるから、これを収益として計上すべきこととなろう。」(「課税所得の基本規定の軌跡 ―法人税法第22条はこうして生まれた― ⑫」、MSG会社税務研究94-3、20頁、平成6年)と述べておられます。これは、「無償」によって「役務の提供」を受けたものについても、「一つの考え方としては」「収益として計上すべき」と述べておられるものですが、22条2項が「無償」によって「役務の提供」を受けたものについても収益の額があると解釈することとなるということであれば、このようなことを述べる必要はありませんので、この見解は、同項が「無償」によって「役務の提供」を受けたものについては収益の額があるとはしていないという解釈を前提とするものということになります。
 つまり、22条2項は、「無償による資産の譲受け」に関しては収益の額があると定めているが、しかし、「無償」によって「役務の提供」を受けたものに関しては、収益の額があると定めていないため、収益の額があると解釈することはできない、ということです。
 このように、「無償」によって「役務の提供」を受けたものに関し、例示として掲げられていないということを理由として、収益の額があるということにはならないとする解釈は、「資産の販売」に関しても、同じように当てはまるはずです。
 なお、立法趣旨から「無償」の取引の取扱いが「資産の販売」に適用されるのか否かということが分からないのかという疑問も生じてくるのではないかと思われますが、「無償」の取引において収益の額があるとする趣旨は「時価に相当する対価を金銭で受取り、これを贈与したことと何等変るところがな〔い〕」(大蔵省主税局「法人税法関係想定問答(第1次案)」問4の答、昭和40年2月)ということであると解すべきであると考えられるものの、この趣旨からは、「資産の譲渡」には「有償又は無償による」という文言を付しながら「資産の販売」には、何故、その文言を付さなかったのかという疑問が湧いてくるだけであって、「無償」の取引の取扱いが「資産の販売」に適用されるのか否かということを判断することは、困難です。

《参考》「無償」の取引の取扱いを正確に定めるべきであるという観点からすると、「資産」の取引について「資産の販売」と「資産の譲渡」に分けるのであれば、本来は、①「役務の提供」についても、2つに分ける必要がないのかということ、そして、②「資産の譲受け」について、それが「資産の譲渡」だけでなく「資産の販売」にも対応するものであるのか否かということを明確にする必要がないのかということ、これらの2つの事項についても、十分、検討した上で、その検討の結果が分かるようにしておくべきではなかったのかと考えます。

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プロフィール

税理士 朝長 英樹(ともなが ひでき)
株式会社TKC 顧問
日本税制研究所 代表理事

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税理士法人朝長英樹税理士事務所

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