掲載日:2020.07.29

法人税法22条2項による「無償」の「資産の販売」の取扱い

第2回(最終回) 「無償」の「資産の販売」の取扱いの解釈の結論

株式会社TKC 顧問 税理士 朝長英樹

株式会社TKC 顧問
税理士 朝長 英樹

法人税法22条2項は、「無償」の取引においても収益の額を益金算入するべきことを定めたものとされています。
資産を移転する取引には、それが「資産の販売」であるのか「資産の譲渡」であるのかにかかわらず、22条2項の「無償」の取引の取扱いが適用されるとする見解なども見受けられます。
本コラムでは、22条2項を正しく解釈すれば、「無償」の取引の取扱いが「資産の販売」にも適用されるという解釈は採り得ない、ということを確認します。

3.22条2項と一体的に考えるべき37条7項・8項の内容からの確認

 22条2項の「無償」の取引の取扱いが「資産の販売」に適用されるのか否かということは、37条(寄附金の損金不算入)の中の「寄附金の額」の定義規定である7項と8項の内容からも、確認を行うことができます。
 37条7項においては、「寄附金の額」は、「金銭その他の資産」の「贈与」をした場合における金銭の額又は資産のその贈与の時における価額、そして、「経済的な利益」の「無償の供与」をした場合における経済的な利益のその供与の時における価額によるものとされています。
 そして、37条8項においては、「資産の譲渡」をした場合において、その譲渡の対価の額が資産のその譲渡の時における価額に比して低いときは、その差額の内、実質的に贈与をしたと認められる金額が「寄附金の額」に含まれるものとされており、「経済的な利益の供与」をした場合において、その供与の対価の額がその経済的な利益の供与の時における価額に比して低いときも、その差額の内、実質的に贈与をしたと認められる金額が「寄附金の額」に含まれるものとされています。
 「無償」の取引を行った場合、資産の移転等を行った側の法人においては、収益の額があるということでなければ、寄附金の額があるという処理も行い得ませんので、22条2項の「無償」の取引に収益の額があるとする取扱いは、37条7項及び8項と一体的に考えるべきものということになるわけですが、37条7項及び8項は、「金銭」の「贈与」を除くと、「資産」の「贈与」及び「資産の譲渡」をした場合と「経済的な利益」の供与をした場合に、「寄附金の額」があるものとすることとされています。
 この37条7項の「資産」の「贈与」には、同項の文言を読んだだけでは、「資産の販売」と「資産の譲渡」の双方が含まれるのか、あるいは、それらの一方のみが含まれるのかということは、分かりません。
 一方、37条8項の「資産の譲渡」には、「資産の譲渡」が含まれることは改めて言うまでもないわけですが、「資産の販売」が含まれるのか否かということに関しては、「資産の販売」は含まれないと解するべきであると考えられます。それは何故かというと、37条8項において、「資産の販売」についても、「資産の譲渡」と同様に、低額の部分を寄附金の額とするということであれば、「資産」を移転する取引として最も多いのは「資産の販売」という取引であるわけですから、法令作成の常識からして、「資産の販売」という文言を用いずに「資産の譲渡」という文言だけを用いるということは、あり得ないと考えられるからです。「資産の販売」という文言を用いている規定を挙げるとすれば、誰もがまず初めに移転価格税制の定めである租税特別措置法66条の4第1項を挙げるものと思われますが、同項とは異なり、37条8項には、「資産の販売」という文言は、用いられていないわけです(租税特別措置法66条の4第1項には、37条8項とは異なり、「資産の譲渡」という文言は、存在しません。)。そして、「資産の販売」という文言を用いている租税特別措置法66条の4第1項も、「同法〔法人税法〕その他法人税に関する法令の規定の適用については、当該国外関連取引は、独立企業間価格で行われたものとみなす」とされていることから分かるとおり、「資産の販売」等(正確に言えば、「資産の販売、資産の購入、役務の提供その他の取引」と定められています。)について22条2項によって収益の額があるとされることを前提とした定めとはなっていないわけです。
 このように、低額の取引について定める37条8項は、「資産の販売」を対象とはせずに「資産の譲渡」のみを対象としている、と解すべきこととなるわけですが、そうすると、無償の取引について定める同条7項は、「資産の販売」と「資産の譲渡」の双方を対象としているということになるのかというと、「資産の販売」について無償の場合にのみ寄附金とし低額の場合には寄附金とはしないという取扱いに妥当性がないことは明らかですので、同項も、「資産の販売」を対象とはせずに「資産の譲渡」のみを対象としていると解するのが適当であると考えられます。
 要するに、37条7項と8項で無償又は低額で資産の移転を行った場合に寄附金の額があるとされるのは、「資産の譲渡」のみである、ということです。
 このように、37条7項と8項が「資産の販売」を対象とせずに「資産の譲渡」のみを対象としているということになると、これらの定めと一体的に考えるべきものとされている22条2項においても、自ずと、同項の「無償」の取引の取扱いは、「資産の販売」には適用されず、「資産の譲渡」のみに適用されると解するのが妥当である、ということになります。

4.1から3までの確認の結果を踏まえた結論

 1から3までにおいて述べたことから、既に結論は明らかですが、改めて確認をしておくと、22条2項の「無償」の取引の取扱いは、「資産の販売」には適用されない、ということになります。
 この22条2項の「資産の販売」とは、どのようなものをいうのかということが気になりますが、この「資産」は、「棚卸資産」に限定されているわけではありませんので、2条20号の「棚卸資産」だけでなく、同条21号の「有価証券」や同条22号の「固定資産」も含むと解する必要があります。
 このように、22条2項の「資産の販売」の「資産」は、その対象を広く解する必要があるわけですが、「資産の販売」の「販売」に関しては、法令用語として用いられる場合には、「売ること又は売りさばくことを意味し、対価を得て他人にある財産権を移転することをいうが、単に偶発的な1回限りの売買行為による場合ではなく、営業又は事業として、すなわち、営利目的があるかどうかを問わず、反復的かつ継続的に行われるものを指す場合が多い。」(吉國一郎他『法令用語辞典』学陽書房)とされています。この『法令用語辞典』の「販売」に関する説明では、「反復的かつ継続的に行われるものを指す場合が多い」とされており、「反復的かつ継続的に行われるものを指す」とされているわけではありませんが、22条2項においては、「資産の販売」と並べて「資産の譲渡」が例示として挙げられており、「資産の販売」は「資産の譲渡」を含まないものと解すべきこととなりますので、同項の「販売」は、「反復的かつ継続的に行われるものを指す」と解するのが適当ということになるものと考えられます。
 そうすると、結果的には、22条2項の「資産の販売」とは、「棚卸資産」や「有価証券」を「反復的かつ継続的」に「売ること」ということになるものと考えられます。「固定資産」を「反復的かつ継続的」に「売る」ということは、通常、行われませんので、22条2項の「資産の販売」には、「固定資産」の「販売」は含まれないと考えてよいでしょう。
 換言すれば、22条2項の「無償」の取引の取扱いは、「棚卸資産」や「有価証券」を「反復的かつ継続的」に「売ること」には適用されない、ということになります。

最後に

 22条2項の「無償」の「資産の販売」の取扱いは、上記のとおりですから、同項を根拠として、「無償」の「資産の販売」について、収益の額があるとする不利益な課税処分を行うということになると、違法との指摘を受けざるを得ないと考えられます。
 確かに、「無償」の取引に22条2項が適用される場面は、移転価格税制が適用される場面と似ており、また、「資産の販売」と「資産の譲渡」とは、資産を移転するという点では、共通性があります。
 しかし、22条2項の文言や立法過程あるいは37条7項及び8項の内容などから離れて22条2項を解釈するというわけにはいきませんので、22条2項の「無償」の取引の取扱いを移転価格税制の取扱いと同様のものであるかのごとく捉える解釈、そして、同項の「無償」の取引の取扱いは資産を移転する取引の全てに適用されるとする解釈は、採り得ない、と言わざるを得ません。
 「無償」の「資産の販売」において収益の額があるとする課税処分を行い得るケースがあるとすれば、それは、資産を時価で販売した上で、時価と対価との差額について寄附等を行った、ということが事実認定として明確に言い得るケースか、あるいは、132条(同族会社等の行為又は計算の否認)を適用することが可能であるケースか、そのいずれかに限られるものと考えられます。
 いずれにしても、「無償」の「資産の販売」において収益の額があるとする課税処分を行うことについては、かなりハードルが高い、ということです。

この連載の記事一覧へ

プロフィール

税理士 朝長 英樹(ともなが ひでき)
株式会社TKC 顧問
日本税制研究所 代表理事

ホームページURL
税理士法人朝長英樹税理士事務所

免責事項

  1. 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
  2. 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
  3. 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。
会計・税制の改正情報をいち早くお知らせします!メールマガジン配信申込みはこちら