更新日 2022.01.24

―令和4年度税制改正―こう変わる!グループ通算制度改正のポイント

第2回(最終回) その他の改正

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 税理士・公認会計士 足立好幸

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
税理士・公認会計士 足立 好幸

令和3年12月24日に閣議決定された令和4年度税制改正大綱では、令和4年4月1日以後に開始する事業年度から適用されるグループ通算制度についても改正が盛り込まれました。
当コラムでは、令和4年度税制改正大綱に基づき、グループ通算制度に関する改正事項についてその内容とポイントを解説します。

1.離脱時の時価評価の対象資産の見直し

[令和4年度税制改正大綱]

通算制度からの離脱等に伴う資産の時価評価制度について、時価評価資産から除外される資産から帳簿価額1,000万円未満の営業権を除外する。

 離脱時の時価評価の対象となる資産(時価評価資産)は、固定資産・土地等・有価証券・金銭債権・繰延資産であるが、帳簿価額が1,000万円に満たない資産は除外されている。
 今回の改正により、営業権については、帳簿価額が1,000万円未満であっても時価評価の対象となるが、「帳簿価額1,000万円未満の営業権」と明示されていることからも、帳簿価額が0円である自己創設営業権が評価の対象となることがわかる。
 今後の法令や財務省解説でどこまで明らかになるのかわからないが、実務上は、営業権の定義(のれん・差額概念、超過収益力、独立取引営業権等)や時価の算定方法(DCF法、財産評価基本通達に準じる方法、差額計算等)などが問題となるだろう。
 なお、通常、離脱時の時価評価が行われる2つの評価事由のうち、主要な事業を継続することが見込まれない場合において、営業権の時価評価が行われることになるだろう。

2.利子税に相当する通算税効果額の取扱い

[令和4年度税制改正大綱]

益金不算入及び損金不算入の対象となる通算税効果額から、利子税の額に相当する金額として各通算法人間で授受される金額を除外する。

 通算法人が他の通算法人との間で授受する通算税効果額は、益金の額及び損金の額に算入されないが、確定申告書の提出期限の延長による利子税が発生する場合で、通算法人間で損益通算や繰越欠損金の通算等に係る通算税効果額に対応する利子税を通算税効果額に含めてやり取りする場合に、その利子税に相当する通算税効果額を利子税の損金算入に合わせて益金の額又は損金の額に算入する見直しである。
 なお、通算税効果額の授受は任意であり、計算対象や計算方法も法令で定められていないため、実務上、通算税効果額に利子税を含める会社は多くはないのではないかと予想される。

3.繰越欠損金の切捨て、特定資産譲渡等損失額等の損益通算制限又は損金算入制限に係る支配関係5年継続要件の見直し

[令和4年度税制改正大綱]

共同事業性がない場合等の通算法人の欠損金額の切捨て、共同事業性がない場合等の損益通算の対象となる欠損金額の特例及び通算法人の特定資産に係る讓渡等損失額の損金不算入の適用除外となる要件のうち支配関係5年継続要件について、次の見直しを行う。

通算承認日の5年前の日後に設立された通算親法人についての要件の判定は、他の通算法人のうち最後に支配関係を有することとなった日 (現行:設立日) の最も早いものとの間で行うものとする。
要件の判定を行う通算法人等が通算承認日の5年前の日後に設立された法人である場合の支配関係5年継続要件の特例について、次の見直しを行う。
(イ)
通算子法人の判定において、自己を合併法人とする適格合併で他の通算子法人の支配関係法人 (通算法人を除く。) を被合併法人とするもの及び自己が発行済株式等を有する内国法人 (通算法人を除く。) で他の通算子法人の支配関係法人であるものの残余財産の確定を特例の適用から除外される組織再編成に加える。
(ロ)
通算グループ内の法人間の組織再編成を特例の適用から除外される組織再編成から除外する。

 改正前において、支配関係5年継続要件を満たす場合とは、次のいずれかに該当する場合をいう。

その通算法人と通算親法人(その通算法人が通算親法人である場合、通算子法人のいずれか)との間に5年前の日から継続して支配関係がある場合
その通算法人又は通算親法人(その通算法人が通算親法人である場合、通算子法人の全て)が5年前の日後に設立された法人である場合(新設法人の除外規定に該当する場合(注2)を除く)であって、その通算法人と通算親法人(その通算法人が通算親法人である場合、通算子法人のうち設立日の最も早いもの(注1))との間にその通算法人の設立日又は通算親法人の設立日(その通算法人が通算親法人である場合、通算子法人の設立日のうち最も早い日(注1))のいずれか遅い日から継続して支配関係がある場合

 まず、上記のうち、下線部の(注1)の見直しが、税制改正大綱の「イ」の改正事項となる。
 また、下線部の(注2)の新設法人の除外規定とは、新設法人を設立して、その新設法人に既存法人の繰越欠損金や含み損、あるいは、事業を移管した後に、その新設法人を通算子法人又は通算親法人とすることで、形式的に上記②の要件を満たすことを規制するための特例をいい、その新設法人の除外規定の該当事由の見直しが、税制改正大綱の「ロ」の改正事項となる。

4.外国税額控除の当初申告固定措置及び進行事業年度調整措置に係る改正

[令和4年度税制改正大綱]

税務当局が調査を行った結果、進行事業年度調整措置を適用すべきと認める場合には、通算法人に対し、その調査結果の内容 (進行事業年度調整措置を適用すべきと認めた金額及びその理由を含む。) を説明するものとする。
上記①の説明が行われた日の属する事業年度の期限内申告書に添付された書類に進行事業年度調整措置を適用した金額 (税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額) として記載された金額等がその説明の内容と異なる場合には、その事業年度に係る税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額に係る固定措置を不適用とする。
税額控除額等(税額控除額、税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額をいう。 以下同じ。) に係る固定措置が不適用とされた事業年度について、その不適用とされたことに伴い修正申告書の提出又は更正が行われた場合には、原則として、その修正申告書又はその更正に係る更正通知書に税額控除額等として記載された金額をもって本固定措置を再度適用する。

 グループ通算制度では、通算法人で外国税額控除の計算要素に事後的に誤りがあった場合、他の通算法人を含めて外国税額控除額の全体再計算をするが、差額(税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額)は進行事業年度(誤っていたことが判明した日又は修更正のあった日の属する事業年度)の法人税額に加算又は法人税額から控除することとなる。
 これを外国税額控除の当初申告固定措置及び進行事業年度調整措置という。
 また、一度、進行事業年度調整措置を適用した事業年度の翌事業年度以後に、再び通算法人で、その進行事業年度調整措置の対象となった外国税額控除額に誤りが見つかった場合、追加の差額は新しい進行事業年度(追加で誤っていたことが判明した日又は修更正のあった日の属する事業年度)の法人税額に加算又は法人税額から控除することとなる。
 これを税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額の当初申告固定措置という。
 上記①②の改正により、税務当局の事前の説明どおりに進行事業年度調整措置を適用しない場合、税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額の当初申告固定措置が適用されないことになる。
 また、上記③の改正では、外国税額控除額の計算の基礎となる事実を隠蔽・仮装している場合や損益通算の濫用防止に係る遮断措置の不適用の規定が適用される場合に該当し、外国税額控除額等(税額控除額、税額控除不足額相当額又は税額控除超過額相当額) に係る当初申告固定措置が不適用とされた事業年度については、修正申告書又は更正通知書に外国税額控除額等として記載された金額をもって再度、当初申告固定措置を適用することにしている。
 ちなみに、外国税額控除額等に係る当初申告固定措置が不適用になると、過去の申告に遡って追徴税額が生じるため、それに対して加算税や延滞税が生じることになる。外国税額控除額等に係る当初申告固定措置が適用されるか否かは、このような点で、通算法人に資金的な影響を与えることとなる。
 なお、グループ通算制度では、住民税の外国税額控除についても法人税と同様の当初申告固定措置及び進行事業年度調整措置が適用されるため、上記②③については、住民税についても同様の改正が行われる。

5.今後の注目点

 交際費等の損金不算入制度については、その適用期限が令和4年3月31日までの間に開始する事業年度であり、グループ通算制度の適用が開始する令和4年4月1日以後開始事業年度よりも前に適用期限が到来することになるため、現時点では、グループ通算制度における取扱いは決まっていない。
 令和4年度税制改正大綱では、交際費等の損金不算入制度について、適用期限を2年間延長すること、接待飲食費に係る損金算入の特例の適用期限も2年延長することが明記されているが、グループ通算制度における交際費等の損金不算入制度の取扱い(定額控除限度額800万円の通算グループでの取扱いや接待飲食費に係る損金算入の特例の取扱いなど)について明記されていないため、今後、公表される改正法案で確認する必要があるだろう。

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