更新日 2022.02.07

令和3年度(令和4年3月期)税務申告の直前対策

第1回 法人税申告(地方税含む)の直前対策(その1)

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TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員 企業グループ税務システム普及部会会員 税理士 吉田公彦

TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
税理士 吉田 公彦

令和3年度税制改正では、研究開発税制、人材確保促進税制等、コロナウイルス感染症への対策を盛り込んだ改正が随所に含まれています。また、会計においては「収益認識に関する会計基準」の適用初年度となる会社も多く、税務申告についても影響を与えることが考えられます。
当コラムでは、3月決算の大企業を中心に本年度申告に向けて注意すべき主な項目を解説します。

はじめに

 早いもので、年が明け2月が経過し3月決算の会社については、決算申告業務の時期が近づいてきました。昨年に引き続きコロナウイルス感染症は収束せず、会社の業績や業務面において未だ大きな影響を受けたまま決算期を迎える会社も多いと考えられます。
 今年度において適用される法人課税に関しては、研究開発税制、人材確保促進税制等、コロナウイルス感染症への対策を盛り込んだ改正も随所に含まれています。
 また会計においては「収益認識に関する会計基準」の適用初年度となる会社も多く、税務申告についても影響を与えることが考えられます。
 本稿では2回にわたって3月決算の大企業を中心に、本年度申告に向けて注意すべき主な項目を概観していきます。

1.適用税率

 各税目について本年度申告において適用される税率の概要は以下の通りで、いずれも前年からの変更はありません。

(1) 法人税

 本年度申告に適用される法人税率は23.2%です(法法66、81条の12、H28改正法附則26、27、29)。

(2) 地方税

 いずれの税目においても、前年度からの変更はありません。
 なお、超過税率を採用している地方自治体については、各自治体のホームページ等で税率をご確認ください
(地法51、地法314の4、地法72の24の7)。

税目 令和2年4月1日以後開始事業年度
法人税 23.2%
地方法人税 10.3%
住民税(法人税割) 7.0%
事業税(所得割) 1.0%
特別法人事業税 260%
地方法人特別税を含む事業税 3.6%
法定実効税率 29.74%
事業税(付加価値割) 1.2%
事業税(資本割) 0.5%

※3月決算法人を前提とする。

※外形標準課税適用法人・軽減税率不適用法人の場合。表中の税率は標準税率による。

2.人材確保促進税制(賃上げ・投資促進税制の見直し)

 令和3年度の税制改正により新たに人材確保促進税制が創設され、これまでの賃上げ・投資促進税制が大きく見直されました。
 新型コロナウイルス感染症拡大を受けて、従来の継続雇用者支給額に着目した適用要件から、新たな人材投資を税制面から支援するため「新規」雇用者給与等支給額の増加に着目した要件へ改められたことが大きな特徴です。

(1) 改正点
改正前 改正後(本年度申告)
要件 ①継続雇用者等支給額の増加率が3%以上
②雇用者給与等支給額が前年を上回ること
③国内設備投資額≧減価償却費の95%
新規雇用者等支給額の増加率が2%以上
②雇用者給与等支給額が前年を上回ること
(設備投資要件は廃止)
税額控除 給与等支給額の前年度からの増加額の15%
※法人税額の20%を上限
※人的投資に関する一定の条件を満たせば20%
新規雇用者給与等支給額の15%
※法人税額の20%を上限
※人的投資に関する一定の条件を満たせば20%
(2) 雇用安定助成金額の取扱い

 給与等に充てるために他の者から支払いを受ける金額は、原則として新規雇用者給与等支給額から控除することとなりますが、新型コロナ感染症拡大への対応に伴い支給を受ける雇用安定助成金については、控除をしないで本制度への適用可否を判定することとなります。ただし、税額控除限度額の計算の基礎となる金額(15%を乗ずる金額(=控除対象新規雇用者給与等支給額))については雇用安定助成金を控除することに注意が必要です(措法42の12の5③四、五)。

(3) その他

 新規雇用者給与等の具体的な要件、出向者給与の取扱い等に関しては、経済産業省のホームページに詳しい資料があります。
(経済産業省ホームページ)
jinkakuzeiseiguidebook20210830.pdf (meti.go.jp)

3.租税特別措置の適用除外要件の見直し

 前年に引き続き、所得が増加しているにもかかわらず、賃上げと国内設備投資のいずれもほとんど行わない大法人について一定の租税特別措置の適用の制限があります(措法42の13⑥)。
 令和3年の税制改正により適用除外の対象となる措置の追加がありました。

(1) 適用要件(適用が制限されてしまう条件、前年からの変更はありません)
①当期の所得金額>前期の所得金額 (いずれも欠損金控除前
②その法人の継続雇用者給与等支給額の対前年度増加率≦0%
③国内設備投資額≦当期の減価償却費の総額×30%

 なお②の「継続」雇用者給与等支給額については、令和3年度税制改正による人材確保促進税制(上記2参照)の適用要件からは除かれましたが、本適用除外要件の判定においては引き続き必要となります。基礎数値の集計の際にはご注意ください。

(2) 適用が制限される制度
  • 試験研究費の税額控除制度
  • 地域未来投資促進税制に係る税額控除制度
  • 認定特定高度情報通信技術活用設備を取得した場合の税額控除制度(5G促進税制)
  • デジタルトランスフォーメーション促進税制【追加】
  • カーボンニュートラル投資促進税制【追加】
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税理士 吉田 公彦(よしだ きみひこ)

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税理士法人ベルーフ

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