更新日 2025.08.12
TKC全国会 中堅・大企業支援研究会会員
TKC企業グループ税務システム普及部会会員
税理士 杉山 直
新リース会計基準を踏まえた税務上の対応について、法人税法上の条文が新設され、また国税庁から通達が公表されています。その具体的内容について本コラムにて解説いたします。
当コラムのポイント
- 法人税法53条の新設(借手における賃貸借取引に係る費用)
- 令和7年6月30日に公表された通達(新リース対応の改正法人税基本通達等)
- 各種経過措置について
- 国税庁の申告調整(不動産賃貸借)
- 目次
-
1.法人税法第53条の新設(借手における賃貸借取引に係る費用)
新リース会計基準では、法人税法上のリース取引以外のリース取引(いわゆるオペレーティング・リース取引。以下「オペレーティング・リース取引」)について、ファイナンス・リース取引と同様に売買取引に準じた会計処理がされることになりましたが、法人税法上は従来と変わらず、賃貸借処理に準じた処理とされています。
法人税法第53条が新設され、オペレーティング・リース取引の支払賃借料について、債務確定基準により損金算入されることが明文化されました。
参考:令和7年度法人税関係法令の改正の概要 - 国税庁 1 新リース会計基準に対応する改正
法人税法上は取引の経済的実体を重視し、オペレーティング・リース取引はあくまでも賃貸借取引であると認識しています。一方、オペレーティング・リース取引について、新リース会計基準では、現在価値計算などの見積計上が介在することとなります。法人税法上、損金の額に算入される販売費、一般管理費その他の費用の額は債務確定が要件とされていることから、借手の賃借費用として損金の額に算入する額を債務性の高い確実な費用に限るものとしたものです。
これにより、税法上はオペレーティング・リース取引について、基本的に従前どおりの取り扱いとなりますが、新リース会計基準に従った会計処理との乖離が生じ、申告調整が必要となります。
2.令和7年6月30日に公表された通達(新リース対応の改正法人税基本通達等)
令和7年6月30日に、国税庁から新リース会計基準対応の通達が公表されました。その内容を一部ご紹介します。
参考:法人税基本通達等の一部改正について(法令解釈通達)「法人税基本通達等の主要改正項目について(PDFファイル/237KB)」国税庁
消費税法基本通達の一部改正について(法令解釈通達)「別紙(PDF/200KB)」国税庁
(1) (法人税)基通12の5-1-3(リース取引の判定)
法人税法上のリース取引は、法人税法第64条の2第3項において解約不能、かつフルペイアウトが要件とされており、この要件については従前から変更はありませんが、フルペイアウトの基準について、新リース会計基準に合わせて、通達で基準が明示されました(改正前法人税法施行令第131条の2に規定あり)。
- ① 賃貸人の会計リース料の現在価値が、原資産の現金購入価額のおおむね90%以上であること。
- ② 賃貸人の会計リース期間が、原資産の経済的耐用年数のおおむね75%以上であること(原資産の特性、経済的耐用年数の長さ、原資産の中古市場の存在等を考慮した場合に、⑴による判定が90%を大きく下回ることが明らかな場合を除きます。)
(2) (法人税)基通7-6の2-10の2(賃借人の会計リース期間をリース期間とする場合の取り扱い)
新リース会計基準では、リース期間について、解約不能期間に加えて、延長オプションの期間と解約オプションの期間を加えて決定することとされています。法人税法ではリース期間とは、リース会社との契約に定められたリース契約の期間とされていましたので、従前の定義では会計と税務のリース期間が異なることになります。
そこで、新リース会計基準の導入に合わせて、会計のリース期間を法人税法上も認めることとなりました。すなわち、ファイナンス・リース取引についてリース期間定額法(法令48の2①六)で償却する場合の計算要素となるリース期間について、本通達で会計リース期間をリース期間定額法のリース期間とすることを明らかにしています。本通達においてリース期間を以下の通り定義しています。
賃借人が原資産を使用する権利を有する解約不能期間に次の①及び②の期間を加えた期間をリース期間としている場合の当該リース期間をいいます。
- ① 賃借人が行使することが合理的に確実であるリースの延長オプションの対象期間
- ② 賃借人が行使しないことが合理的に確実であるリースの解約オプションの対象期間
(3) (法人税)基通12の5-1-1(資産の賃貸借の範囲)
法人税法第64条の2第3項の「資産の賃貸借」には、民法第601条の規定により効力を生ずることとなる契約に基づく行為のほか、資産を使用する権利を一定期間にわたり対価と交換に移転する行為も含まれることを留意的に明らかにしています。
(4) (法人税)基通12の5-3-1(資産の賃貸借の範囲)
法人税法第53条第1項の「資産の賃貸借」の範囲については、法人税基本通達12の5-1-1(資産の賃貸借の範囲)の取り扱いを準用することを明らかにしています。
基通12の5-1-1(資産の賃貸借の範囲)は税法上のリース取引を指し、基通12の5-3-1(資産の賃貸借の範囲)は税法上のリース取引以外の賃貸借取引を指します。新リース会計基準におけるリースが契約形態を問わないことなどを踏まえて明確化された規定です。
(5) (消費税)基通5-1-9(消費税法上のリース期間)
消費税法上、法人税法におけるファイナンス・リース取引が行われた場合、当該リース取引の目的となる資産の引渡しの時に、資産の譲渡があったこととされ、資産の譲渡等の対価の額は、リース期間中に収受すべきリース料の額の合計額となります。ここで、本通達における「リース期間」とは、当該リース取引に係る契約において定められたリース資産の賃貸借期間とされており、新リース会計基準及び上記(2)の法人税基本通達におけるリース期間とは定義が異なりますのでご留意ください(その他消基通9-1-31、11-3-2の2において同様)。
この連載の記事
プロフィール
免責事項
- 当コラムは、コラム執筆時点で公となっている情報に基づいて作成しています。
- 当コラムには執筆者の私見も含まれており、完全性・正確性・相当性等について、執筆者、株式会社TKC、TKC全国会は一切の責任を負いません。また、利用者が被ったいかなる損害についても一切の責任を負いません。
- 当コラムに掲載されている内容や画像などの無断転載を禁止します。